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詩❲恋愛❳

あの日あの時

作者: 日浦海里

機織り機に白く細い糸だけを

ぱっと広げて置いたような

筋状に伸びた雲の端が赤みを帯びていく


これから小さな白い芸術を

編んで織ろうとしているかのような

その白い筋状の糸のキャンパスに

横糸巻棒を潜らせたように見える

一本の太く長く白い筋


飛行機雲が残したそれが

空に浮かぶ筋雲を

ますます1つの織物のように見せていた

夕日が遥か遠くに見える

水門の脇で真っ赤に燃えて

水面も河にかかる橋も

真っ赤に染まるそんな時間

橋から河川敷を見下ろすと

脳裏を過ぎることがある


君と二人で日が暮れるまで

色んな事を話し合った

遠い遠いあの日の記憶


あの頃の僕は臆病で

随分遠回しだけれど

君に想いを伝えようと

言葉を選んで話してた


本当は想い合っていたのに

お互いそれに気づくまで

時間がかかってしまったね

だけどきっとそれさえも

必要なことだったんだろうと

今ならそう思えるよ


それでもきっと

あの日あの時

僕がどこかに行くかもしれない

そう勘違いしなければ

互いの気持ちに気づけずに

今もいたかもしれないけれど


君は覚えているだろうか

そんな昔の淡い想いを

気付けば空の筋雲は

すっかり赤く染まり

一本通った飛行機雲も

赤く染まった布の中に

織り込まれてしまっている


数多の記憶が織りなす景色の中に

たった1つ、

一本の異なる色の横色が加えられたかのように

鮮明に残るこの記憶も

いつかは撚り合わされ、綯い交ぜになって

記憶の布の中に織り込まれるのだろうか


それでもきっと

そうして出来上がった記憶の織物は

夕陽に照らされたこの筋雲のように

輝いて見えるのだろう

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前書き後書きを物語の前後を彩る詩の場に利用したのですね。 夕陽色に染まる筋雲を見る度に呼び起こされる鮮明で淡い想い出を 色褪せるのではなく、記憶の織物として輝き見るとする事に前向きさが感じ…
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