【ハロウィン2021】魔王様のホストクラブ作り!……に振り回されて大変です!
これは本編の未来のお話。一話完結。
オルガ国にあるホストクラブ、恋物語の酒場ディメンション二号店では何やらイベントが行われていた模様。
今日は月末。
ディメンション二号店の一周年祭があったため、私達人界征服メンバーは二号店に出勤していた。
もちろん決戦日に合わせて周年祭イベントを打ったのだ! なのでお店は史上最高の盛り上がりに!
ソファや床には解毒剤のビンを片手に持つイケメンの死体がゴロゴロ転がってるけど……みんな頑張った証拠だ。仕方ないのだ、うん。
オープンから一年も経ったんだなぁ……でも今もこうして二号店のみんなに会えるのが嬉しい。
営業後ミーティングの最後に魔王様がこう仰った。
「なぁ! 来月の決戦日もイベントやろうぜ!」
「またイベントニャ⁉ 楽しみニャー!」
真っ白なフリフリの王子様みたいな騎士服を着たミアさんの目は輝き、灰青色の猫耳もパタパタとせわしない。
「わぁ! 次はどんなイベントですか?」
今日一人真っ赤な騎士服で周年祭に挑んだのはアメジスト色の髪の王子様、アレンさんだ。
アレンさんも声を弾ませ魔王様にキラキラの眼差しを送る。
……くっ! 今日も私の貞操が危機だ!
そして何を隠そう……今ナイトで生き残っているのは亜空間魔法が使えるミアさんとアレンさんだけなのだ。
「俺ら魔族は街の収穫祭に参加しづらいからさ、店で祭りをやろうぜ!」
「お祭りニャー! ニャにするニャ⁉」
ミアさんはホントお祭りが好きだね!
「えっとな~、とある国では『ハロウィン』って祭りがある。それをやろう!」
はろうぃん? 多分「とある国」ってのは魔王様が転生する前の世界の事だろうな……どんなお祭りだろう。
「あらそんなお祭りあったかしら? 興味があるわ」
昔人界中を飛び回っていた博識なルルさんも興味が沸いたみたいだ。
「ん~諸説あるけど、お前らに分かりやすく言うと……つまり! 秋の収穫のお祝いと、それを狙って来る悪霊を追い払う祭りだ!」
「悪魔祓い⁉ 絶対やるよ魔王様!」
「悪魔祓いは実在したんですか⁉ やりましょう!」
「お願いします魔王様! 悪魔祓いを……っ!」
悪魔を祓いたいアーニャ、お兄ちゃん、コーディさんが飛びついた!
ズザザッ! と魔王様にすがりついてる! 必死だ!
「ははは! じゃあ決まりな! 来月の決戦日は『ハロウィンイベント』だ!」
「やったね! それでどうやって悪魔を祓うの⁉ 教えて魔王様!」
アーニャの喰いつきが凄まじい……イケメンエルフ以上の喰いつきかもしれない……。
「フッフッフ……ズバリ! 仮装だ! 悪霊を驚かせて追い払うために俺らもおばけみたいな仮装をするんだ! 別にコスプレでもいいぞ? 大人が好きな格好をして許される日、それがハロウィンだ!」
ま……魔王様のバカァアアアーーーーーッ!!!!! なんという……なんという罠っ!!!!!
「アラッ⁉ じゃあアタシの変装が火を噴くわネッ☆!」
ほらぁ! ラウンツさんがすでに封印解放の準備をっ!
「嘘でしょ……嘘でしょ魔王様……悪魔祓いなのに悪魔を召喚するのっ⁉ どうして死の永久機関を開発しちゃったの⁉ ……イヤァアアアーーーーー!!!!!」
アーニャはそう叫ぶとソファの上に丸くなってガタガタ震えだした……。
もちろん四天王戦で被害を受けた全員が地震を起こしている!
……震度2くらいかな。でもちょっと想像しただけで震度2……これは尋常じゃない被害想定をしなければっ!!!!!
「ぶはははは! 別名、『ラウンツ祭り』だな! 面白ぇー!」
「アタシが主役よぉっ☆!」
「ラウンツ祭りニャ? よくわかんニャいけど強そうでカッコイイニャ!」
「ウフッ♡ ミアちゃん楽しみにしててネッ!」
ミアさん……違う……違うよ……。「強い」のは物理力じゃないんだよぉおおおおおおおお!!!!!
「楽しみニャ! 変装ならまたアンナ達に衣装の相談をしに行くニャ!」
「う~ん……僕もお客様に相談しようかな……。でも驚かせるのもアリかな……」
「ああ、ミアとアレンはもう帰っていいぞ。残りの俺らで引き続きミーティングするわ」
魔王様のお声でナイトさん達は帰って行った。
そして引き続きミーティングで魔王様がイベントの飾り付けなどの説明をして下さったけど……。
来月末に死が確定した私達『破壊の乙女被害者の会会員』は、生存のカギを握るアイテム「魔除けのかぼちゃ」という単語しか覚えていなかった。
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そしてイベント当日。
アーニャがこれでもかと言うくらい魔除けのかぼちゃを店内に飾っていた……。わざわざドワーフさんに頼んで顔を彫ってもらったらしい。生死がかかっているので気合いが入っている……。
そして飾り付けが終わり、裏方の私たち魔族と内勤は、ナイトさんが出勤してくる前に男女分かれて着替える事に。
二階はもうナイトさん達の寮になっちゃってるから、男子はお店のフロアを、女子はバックヤードにある更衣室を使う事にした。
……だよね。
アーニャが亜空間からバサバサッ! と四天王戦で着た黒のゴスロリ服を取り出した。
「この格好は四天王戦以来だね! 去年戦った時ちょうどいい感じにボロボロになったから、今日にバッチリ! ゴーストっぽく見える⁉」
「あー……うんソウダネ」
お兄ちゃんも四天王装備なんだろうな……。全身髑髏コーデで、絶ッ対、黒い包帯を腕に巻いてる! ……もちろん眼帯も。
「ニーナちゃんの衣装もボロボロよね⁉ 早く着替えてちょうだい! また見たいわ!」
私はルルさんに急かされ、仕方なくあのピンクのゴスロリを取り出す……。
ルルさんはヴァンパイアの変装らしい。いつもの黒いマーメイドドレスに付け歯と血糊だけの控えめな格好にするって。
メイリアさんはどんなかな? と後ろにいる彼女へ振り返る。
……じゅ、獣人さんの変装だ! かっ……可愛い! うさ耳がモフモフ! ローブもモフモフ毛皮素材! なんて贅沢な! 両方とも髪色に近い薄いエメラルドグリーンで合わせてきてる!
つまり……めちゃくちゃ気合いが入っている!
意外とこういうの好きなんだな、メイリアさん。
そして女子はみんな着替え終わり、私とアーニャは血糊も付けた。これで準備は万端!
……準備が……万端……。準備が……終わってしまった……。
そう……つまり……今から地獄に行かなくてはならない……ッ!!!!!
「男子も着替え終わったってレイスターから念話が来たわ。みんな……行くわよ……」
ルルさんがドアノブに手をかけそう言った。
……全員ゴクリと唾を飲み込む。
バンッ!
「おまたせ──」
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああっ!!!!!」
「ぎゃぴぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!! なんでラウンツさんまだ裸なんですかっ⁉」
「……なんという罠……ッ! ……」
そこにはオレンジのかぼちゃパンツ一丁のラウンツさんがぁっっっ!!!!!
「キャッ! 見ちゃイヤァ~ン♡ ……なんてネッ☆ いたずら成功よぉっ!」
「ぶははははははは!!!!! ニーナ達また死んだな!」
魔除けの……かぼちゃが……裸のラウンツさん付き……。
生存フラグの魔除けアイテムまでもが汚染されたという絶望を最後に……私の意識は……途絶えた。
ぐふっ。
ラウンツ「ハッピーハロウィンよぉっ☆」
出オチなので続きは無いです。
一応接客業の内勤なので、さすがに魔王様も女装は止めました。「ラウンツ祭り」と言ったのはニーナ達を怯えさせるためです。この後ラウンツさんは普通にくまさんのコスプレをしました。
本編は四章まで完結済み!
https://ncode.syosetu.com/n4239gt/
(`・ω・´)興味を持ってくださった初見の方は、ぜひラウンツさんの魅力を堪能してください!