6話 魔法練習会
あやうくまた二日に一回をすっ飛ばすところだったので震えてます。
出てくる人とか場所を少しづつ増やしていきたいですね。
「では、魔力制御のやり方から説明してきますね。魔力制御を始めるのに一番難しいと言われるのは、魔力を感知するという点です」
やはり魔力を感知するところから始まるのか。
これは前世で魔力を使っていたから感知できているのだが、前世でも魔力がどれなのかを感じるのが一番難しかった。一度魔力がどれかわかってさえいれば、動かすのはそんなに難しいことではない。
「魔力を感知するのは私も最初苦労しましてね、だってそんなの仕方ないじゃないですか、私に魔法を教えてくれる人はいなかったしそれなのに一週間も魔力感知できなかったらお前は才能が無いだのなんの私に嘘ばっかりつくくせにいつもいつも——」
……なぜかはわからないがアメリアにスイッチが入ってしまった。彼女も彼女なりに苦労していたんだろう。
手持ち無沙汰なので魔力を手の上に集めたり、いろいろなところに移動させたりして遊ぶ。
そういえば賢者は、って今の時代にも賢者はいるらしいから昔の賢者、という言い方をしなければいけないのか。
改めて、そういえば昔の賢者は魔法陣を用いた今風の魔法も使っていたが、魔力を可視化させた今で言うと魔術も使っていた記憶がある。
うーん、可視化か。私が今手に魔力を集めても全然可視化されない。ほんの少しだけもやもやがあるくらいだ。単に魔力量を多くすればいいのか?
うーん、もやもやが少し濃くなっただけか。
じゃあ魔力を練る?
お、ただのもやもやよりは白い球状のもやもやに変わってきた。
魔力を練ると言う方向性でいけそうだ。
練る、というよりは掌の上で魔力をこねるといった方が的確かもしれない。
こねてこねて少しずつ大きくしていく。大きくなったものをまたぎゅっと凝縮してまたこねていく。
掌の上の白いもやもやが少しずつはっきりと球状になっていく。
もう少しこねたところでかなりはっきりとした白い球体になった。
ただ魔力を可視化させて何ができるようになるのかがわからない。昔の賢者にこの魔力球を投げつけられたことはあるのだが、そのときは特に何にも感じなかった。
今も虚ろな瞳でぶつぶつと呟いているアメリアに向かって投げつけよう。実体験より死にはしないだろうし、現実に戻ってきてくれたら御の字だ。
えいっ、と物を投げる要領で魔力球をアメリアに投げつける。
魔力を感じて気づいてくれたらいいなくらいのつもりだったのだが、魔力球が当たった途端アメリアはガクッと体勢を崩して、倒れる直前で踏みとどまった。
昔の私には効かなかったがアメリアには少し効いたらしい。なんの違いがあるのだろう。
「……魔力酔い?今のはアレク様が?」
一応目的の一つだったアメリアの現実帰還は果たせたようだ。
「うん。ずっとひとりごといってたし』
「え?あ、ああ申し訳ありません!私昔のことを思い出すとよくあんな感じになってしまうんです。アレク様に魔力制御教えるはずだったのに私ったらまた……」
……やっぱりアメリアは昔から相当苦労していたみたいだ。昔を思い出すだけであんなに虚ろな目をできるとはどれだけ壮絶な人生を送ってきたのだろうか。
「というか、今のなんですか!魔力制御に自信がある私が魔力酔いを起こしかけるなんて何をしたんですかアレク様!」
「まりょくをあつめてなげた」
「魔力を集めてってそんな簡単に言いますけど……」
そう言いながら私の瞳を見つめてくる。
「……嘘はついていないんですね」
アメリアが小声で何かを言ったが、ちょうど風が吹いたのもあり聞こえなかった。
「じゃあアレク様は魔力制御ができているっていうことですか?」
アメリアの言葉に頷く。前世で私も努力に努力を重ねて魔力制御できるようにしたのだから、才能があったなんて簡単な言葉で形容してほしくはない。
「がんばってれんしゅうしたからね」
前世の私なら自分の努力を人に伝えるなんてしなかったのに、やはり精神がこの身体に引っ張られている気がする。
「練習って独学でですよね……。私も最初は独学でしたけど魔力感知の時点で一ヶ月近くかかったのにやっぱりアレク様は賢すぎますね。本当に一歳児なのかわからなくなりそうですもの。でもすごいですよ!この歳から魔法の練習ができたら世界一のエルフにも負けない魔法使いになれますよ!」
世界一の魔法使いか。魔法がこんなにも重視されている中で世界一までには行かずとも、有名になるくらいの魔法使いになれれば生きやすいだろう。
「では魔力制御はできているということで魔法の使い方を教えていきましょうか。魔法は先ほど話したように魔力を渦巻かせたり練ると、つまり魔力の密度を高くして集めると精霊さんたちが寄ってきます。私は練るより渦巻かせる方が得意なので、こうすると精霊さんたちが寄ってきます」
アメリアが以前見たように掌の上で魔力を渦巻かせていくのを感じる。
私も前に魔法を使おうとしたときは同じような動かし方ができたと思うのだが、何か違うのだろうか。
「あるラインまで渦巻かせていくと少しだけ集めた魔力が減ります。これが精霊さんが集まってきた合図です。精霊さんが集まってくれれば次は詠唱をします。火の精霊よ、ここに『ファイヤ』」
掌の上で渦巻いていた魔力が魔法陣に変わる。魔力量はそこまで多くなかったので魔法陣から小さい火が現れる。
「魔法にも大きく二種類あって、この『ファイヤ』のように持続する魔法と、炎の弾を飛ばすような『ファイヤバレット』のような魔法があるんですけど、この持続するタイプの魔法は魔力を供給し続ける限り火は消えないという特徴もあるんですよ。まあ火属性は『ファイヤ』を薪とかに移せばいいので、水、風属性が持続させるのにメリットがある感じですね」
なるほど。魔法にそんな区別があるとは本にも書いてなかったし考えたこともなかった。
では私も真似てやってみよう。
まずは魔力をアメリアと同じくらいの量だけ掌の上に集める。いきなり早く動かすと渦の形を崩しそうなのでゆっくりと動かしていき、渦に勢いがついてきたらさっきより早く動かす。
アメリアはあるラインまで渦巻けば魔力が少しだけ減ると言っていたが、なかなかその時が来ない。
「あれ?アレクは魔法の練習をしてるのか」
まだ減らないのかと渦巻かせていくと、長男であるフレッドが庭に来た。
「あ、フレッドにいさま」
「あらフレッド様、今はお勉強のご休憩中ですか?」
「ああ、僕も去年にやっと魔法を使えるようになったのにアレクはすごいな」
フレッドは魔法の才は薄いが、知力はかなり高いらしい。
教えたことはすぐに覚えるし、何週間か後に聞いても忘れていない、とはフレッドの家庭教師の言葉だ。
父も魔法はそこそこだが頭が良く、領主としての才能、実績は王国一だと聞く。
フレッドは髪や眼と同じく才能も父から引き継いだのだろう。
それに対してもう一人の兄であるゲイルは母の血を強く受け継いでおり、青髪蒼眼で魔力量がかなり多いらしく、私が生まれた、三歳の時には魔法を使えるようになっていたらしい。
そう、母に似て魔法も才があると言ったように、母も王国内で高名な魔法使いらしいのだ。
私の家族は実はとんでも無いかもしれない。
「ねえ、いくらうずまかせてもまりょくへらないよ?」
一応魔法が使える兄もいることだし、二人の魔法使いがいれば私が何か間違っていることに気付けるかもしれない。
「え?渦の巻き方が足りないとか魔力量が少ないとか……いや、ないですね。十分できてるはずなんですけど……。フレッド様、精霊はアレク様の近くに感じられますか?」
む?その言い方だとフレッドが精霊を感じ取れるような言い方だが。
私も精霊を感じ取れないし、アメリアもできない言い方をしていたからフレッドだけ少し特別なのだろうか。
「うーん、なんか不思議な感じだね。精霊たちが戸惑ってるというかアレクの魔力に近づこうとしないね」
「魔力属性が魔術特化なら精霊を集めるのに人より魔力が必要と聞いたことはありますが、近づこうとしないとなると話はまた別ですね……」
ふーむ、どうやら私のやり方が間違っていたというよりは私の何かが根本的に他とは違っていたと言ったところだろうか。
何か原因があるのかもしれないが、私には精霊が寄り付かない。つまり今のところは魔法が使えないらしい。
剣一本で生きていける自信は大いにあるし、実際生きていけるだろうが、やはり魔法というものに憧れがあった分少しだけ悲しいというか損した気分になる。
「私の知り合いに魔法学会に所属している人がいるので心当たりがあるか聞いてみます。今日はアレク様が魔力制御できることも知れましたし屋敷に戻りましょうか!」
普通の一歳なら気づかぬのだろうが、あいにく私はただの一歳では無い。
だからこそアメリアが驚きと焦りを隠すために気丈に振る舞っていることがわかってしまう。
別に魔法を使えないことは構わないのだが、そのせいでアメリアや家族たちに迷惑をかけてしまうは嫌だ。身体が成長して剣をまともに振れるようになったら、一年経ってなまった分を取り戻し、安心させてやりたい。
「あ、それじゃあアレク、これから僕と一緒に授業受けてみる?」
だがそれとこれとは別として授業にはとても興味がある。この身体は前世では考えられないほどに知識を求めたがるし、いろいろなことを考えてしまう。なのでフレッドの提案に私は目を輝かせ、勢いよく頷く他なかった。
ということでお兄様の登場です。彼はもうすぐで六歳になります。
アメリアは嘘がわかるようですしお兄様は精霊を感じ取れるようですしなんだか不思議な子がいっぱいですね。




