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魔法世界の最強剣士  作者: 夜本なつ
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3話 魔法と魔術

 2日に1回くらいのペースで投稿しようと思っていたのですがなかなか書く時間がとれず…

 失踪はしないつもりなので長い目で見ていただけると嬉しいです、


 私が思わず喋ってしまったのはしっかりとアメリアに聞かれてしまい、その話が父と母の耳に入るのにそう時間はかからなかった。

 ご飯はとっくに離乳食になっているが、私の生活リズムは家族と違いすぎるのでまだ一度も食堂で食事を共にしていない。

 私がこの時間に起きていることと、両親の仕事がひと段落ついたところであることと、今喋ってしまったという三つの偶然が重なり、意図しない初の家族との食事を迎えることになった。


「アメリア、本当にアレクが言葉を発したというのか?」


「え、ええ。私の聞き間違えではないはず、ですが……」


 どうしよう、言葉がわかるということを正直にいうべきなのだろうか。前世で一歳にも満たないこどもが話すなど見たことも聞いたこともないが、それが今の時代で変わっているということはないだろう。

 ……せめて単語だけを言ったとかなら良かったのだろうが、なにせ放った言葉が「あ、やべっ」だ。ただそれをアメリアが報告して、信じるだろうか。

 私が知る貴族というものは、権力と財力を笠に横暴を繰り返すという、もちろん全員が全員悪人というわけではなかったが、あまり好ましいものではなかった。貴族に虚偽を報告するものなら良くて追放、悪くて処刑だった。

 父はそんな悪人には見えないのだが、使用人に対しては厳しいという人格の可能性は捨てきれない。

 私のせいでアメリアが職を失うなど気分が悪いにも程がある。だが貴族として生まれたのなら自由な時間がまだ今のうちに欲しいところではある。

 できるだけごまかす流れで、無理だったらゲロってしまおう。


「アレクよ、私が誰かわかるか?」


 喋らず、首を傾げてみる。


「じゃあ僕はどうかな?わかる?」


 長男が話しかけてくるがこれにも首を傾げる。


 ……いけない、少し楽しくなってきたぞ。


「赤ちゃんもうしゃべるのー?」


 と次男。

 こやつは私の顔を引っ張るから無視しておこう。


「あら、じゃあ私のことは?アレクなら分かるわよねぇ?」


 うっ、母よ、魔力が漏れてるし顔が怖いぞ。

 母の恐怖には負け、首を頷かせてみる。


「あら、私がいつもアレクの世話をしてるからかしらねぇ」


 今まで冷静な表情しか見せてこなかった父が少しだけ悔しそうな顔をしているのが面白い。

 これで悪戯心が芽生えてしまうのは仕方ないと思う。父よ許せ。


「アレク様、私のことはどうでしょう?」


 そうアメリアが語りかけてくる。


 ここで私の悪戯心が親を喜ばせたいという気持ちに勝ってしまった。


「あめりあ?」


 もう少しはっきりと発音したかったがこれは赤ん坊なので仕方がない。

 目の前でアメリアが喜びか驚きか分からないような表情をしているのも見ものだが、それよりも父の表情が面白い。位置的に私以外に顔を見られていないからなのか、とても貴族と言えないような、無気力に口を開けて目も半開きという素っ頓狂な顔を晒している。


「ほ、ほう?アメリアよ。私とフレンを差し置いてアレクに名前を呼んでもらうとは……」


「ご、ご主人様……?」


「日頃の世話のおかげ、か。給料を上げる故後ほど申請書を出せ」


「は、はい!アレク様ありがとうございますね」


 アメリアはそういって私の頬にキスをした。

 この時代の貴族は私が思っているよりも優しく、良いものなのかもしれない。

 ともあれこの場はやり過ごせたようで一安心だ。




 その後も私は部屋を抜け出して書庫に通い続けた。監視の目も前よりは厳しくなったが、剣術を極めた副産物の一つ、魔力をすべて体の中に収めることで気配を遮断するという技術を駆使し、抜け出し続けた。


 結果、部屋から出さないことに重点を置くのではなく、書庫にしか興味がないらしいので書庫には行かせて、安全に本を読ませるという形に移行した。私にとっては好ましい変化だ。

 私の監視役はアメリアに一任ということになり、「あめりあ、ここ」と甘えた雰囲気を出して言えばアメリアは読んでくれるので、文字の習得はかなり進んできた。

 その甲斐もあり、ドラゴンの絵本の隣にあった魔法陣が表紙の本を一通り読み終えることができた。

 タイトルは「魔術と魔法の違い」で、そのタイトル通りこの時代における魔術と魔法の違いがながながとやけに難しく書かれている。


 前世では魔術なんてものはなく、身体能力ではなし得ない奇跡はすべて魔法と呼ばれていた。前世の魔法はあくまで知識としてでしか知らなかったが、それでもこの本に書いてあることはどれも新鮮で興味深かった。

 簡単に言えば魔力を使い魔法陣を介して奇跡を起こすというのが魔法、魔力のみを使って奇跡を起こすのが魔術らしい。と言っても前世で魔法と呼ばれていた、火を起こすことや風を吹かせる、水を生成することに地面の土を操作するのは今でも魔法と呼ばれている。

 それに対して魔術は奇跡なんて書かれていたが、要するに「魔法以外の魔力を使ったもの」である。私が先日使った魔力での身体強化は前世だと魔法だったが、今世では魔術と分類されるようになった。先に言及した奇跡というのはどれも魔法陣を伴うため、魔法陣の有無で魔術か魔法かを区別したという形だろう。

 そしてもう一つ違うのが、魔術は魔力がそこそこあれば誰でも使えるのに対して、魔法は「適性」というものがなければ使えないらしい。

 主に火、風、水、土属性があり、普通ならどれか一つ適性を持つ。稀に二属性使いや三属性使いもいて、伝承だけだが四属性使いも昔いたらしい。

 賢者の知り合いはこの四属性らしきものを使っていた気がするが、あいつは伝承に残るようなやつじゃなかったし、記憶もかなり昔のものなのできっと思い違いだ。


 次に適性を確認する方法だが、この本には書かれていなかった。

 当たり前のことすぎて書く必要もない、ということなのだろうが、赤ん坊が読むことを想定していないとは著者も大したやつではないだろう。

 適性がある属性なら魔法を使えるとのことなので、片っ端から魔法を使おうとして使えたものが適性!なんて考え方もできるが生憎私は魔法の使い方を知らない。剣を使った風魔法の真似事ならできるがな。あ、剣振りたくなってきた。


 アメリアに聞いたら教えてくれるだろうか。さすがに怪しまれるか?と思ったが、魔法を使ってみたいという好奇心が心配に勝ったため、素直に聞いてみることにした。


「あめりあ、まほうてきせいって?」


 私も前まではできるだけ単語だけを喋ることを意識していたが、どうせ書庫は私とアメリア以外誰もいないし、知りたいことを手っ取り早く聞くためにアメリアの前でだけは演技することをやめた。最初は驚いていたが、何回も聞くうちに慣れてしまったのか、齢にしておよそ一歳児が喋ることを気にしなくなっている。それでいいのかケルヴィン家使用人。


「あらアレク様そんな難しい言葉がもうお分かりになるなんて、これはご主人様にご報告しなくては——」


「あめりあ、まほうてきせいって?」


「ああ、魔法適性でございますか」


 ……毎回こんな感じなのだ。私としても父に報告されて自我が確立してるなんて思われたら、この本を読む時間が少なくなる可能性があるため、避けたいところだ。


「魔法適性はその人がこの魔法を使えますよっていう素質のことです」


「どうやってしらべるの?」


「そうですね、魔法を使わせて適性判断するという方法もあるらしいのですが、普通は五歳になると教会に行って適性を調べますね」


 正攻法でいくと五歳になるまで待たないといけないのか。まだ一歳にもなっていないし、五歳まで待つならなんとか魔法の使い方を教えてもらったほうがいいのか?


「まほうはどうやってつかうの?」


「魔法は魔力を制御できるようにしてから簡単な詠唱魔法を覚えさせるのが一般的、ってアレク様にはさすがにまだ魔力制御は早いですかね」


「つかってみて?」


 これも剣を極めた副産物なのだが、私には空気の動きや魔力の動きが分かる。空気の流れがわかれば空気を切りやすくなる故、本当に副産物でしかないのだが習得した。これのおかげで人の気配もわかるようになったし、今は魔法を使う時の魔力の流れが掴めるかもしれない。


「少しだけですけどね。私は火属性に適性があるので今から火を出しますよ。火の精霊よ、ここに『ファイヤ』」


 そうアメリアが唱えると、アメリアの掌の上に小さな魔法陣が現れ、これまた小さな火が現れた。

 魔法は詠唱でその属性の精霊に語りかけ、魔力を与える代わりに力を貸してもらう行為だ、と本に書かれていた。

 問題の魔力の流れだが掌の上に渦巻くような形で集まっていき、それが魔法陣に変わる、という流れだった。

 私も同じように魔力を動かして詠唱をすれば魔法が使えるか、なんて思ったが、


「あ、もうこんな時間ですね。アレク様、ご飯にいたしましょう」


 というアメリアの言葉に頷き、また明日魔法を使えるか試みてみよう、と心に決めたのであった。


 最初の方は世界観説明ばっかりになってしまいますね、

 そろそろアレク君を成長させたいなーとは思ってますので!

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