閑話 第三子出産後、とある貴族の話
主人公視点だけじゃ書けないような話も時折混ぜていくつもりです。
今回はアレクが生まれてからの父のお話。
「あなた!生まれましたよ!」
「フレン、よく頑張った!お疲れ様」
子供が生まれて、私は一番最初に髪の色を見た。
私がもつ赤い髪は知力が高いと言われている。商人や軍師、生まれが良ければ貴族として領地経営などが向いていると言われる髪の色だ。
しかしこの世に溢れる魔法使いは誰もプライドが高く、軍師などを必要としない。その上知力は他の髪色でも努力をすれば高めることができる。あくまでその傾向があるだけだが、その性質故に赤髪はあまり好かれてはいない。
反対に私の妻であるフレンの髪色は青。青髪は魔力が多く、回復速度も他と比べると早いという魔法使い向けの髪色だ。その代わりに筋力が全くと言っていいほど成長しない。だがそれも持ち前の魔力量で身体強化の魔術をかけれるのでデメリットになっていない、この世界を生きるのに最も適した髪色だと言っていいだろう。
私は子供が元気に生まれたか、よりも先にか髪の色を気にしてしまった。
「フレッドに続き赤か。フレッドは継がせるとしてどうしたものか」
いけない。貴族社会と政治に揉まれすぎて生まれたての子供にすら政治利用を考えてしまった。
小声で呟いただけなので誰にも聞かれてはいないだろうが、自分の子供なのだ。子供は愛情を持って育むものだということくらい平民でも知っている。
……む、だがおかしいな。
生まれたばかりだというのに泣いていない。それどころかどこか知性を感じさせる、フレンと同じ蒼色の瞳でこちらをじっと見つめてくる。
「おかしいな?フレッドとゲイルのときは泣いたよな」
「ファナティア?この子の容態は大丈夫なのかしら」
最年長の使用人で一番頼りになるファナティアに声をかけると、何か考えるそぶりを見せた。
私とフランがこの生まれたての赤ん坊の顔を覗き込むとおもむろに口を開いた。
お、やっと泣くかと思ったが、口を開けた後何も行動を起こすことなく眠ってしまった。
「私も泣かない子、このようなことは初めてなので困惑しているのですが、呼吸はしっかりしてますし、魔力の流れも安定しているのでひとまずは大丈夫だと思います」
「そうか、サンドリアがいうなら安心だな。フレンも体調は良好のようだな。何よりだ」
「ええ、心配ありがとう、あなた」
フレンと一度口付けをしたのち、まだ残っている報告書をまとめるべく執務室に向かった。
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「報告します。カステルの街周辺の魔物が活性化を始めました」
「分かった。……フィオネより腕利きの冒険者を派遣せよ。フィオネは先日の魔法小大会でそこそこ優秀な冒険者が多くいる。ギルドと冒険者への報酬はカステルの長より税金から出させろ」
「承知しました!」
「下がれ。……次」
「失礼します!スネリアの街よりカルステア帝国が鉄の貿易と不戦の条約を持ちかけてきたとの知らせがりました!」
「帝国が鉄、か。帝国側は貿易で何を出すと?」
「は!香辛料と塩を出すとの報告です!」
「まあ、そうだろうな。鉄ということはフーリア神聖王国への本格的な侵攻の開始か。表面上は肯定の意を示せ。だが鉄の輸出量は制限させてもらう。こちらもフーリアとの縁を切るわけにはいかないのでな。こちらからも使者を送るのでそれまでしばし待ってもらえ。帝国側も承知しているはずだから急な侵攻は心配しなくていいとも伝えておけ」
「は!失礼します!」
……ふう、これでひと段落ついたか。
「ご主人様、夕食のご用意ができています」
「了解した。アレクを一目見てから向かう」
「かしこまりました」
横で深くお辞儀をする使用人を尻目に、アレクが眠っている部屋に向かう。
私とフレンはあの子にアレクと名付けた。赤髪ではあるが深い知性を感じさせる青い瞳から、昔に存在したと言われる青髪蒼眼の大賢者「アレキサンダー」にあやかって、私よりも賢く、聡明になってほしいという願いを込めて。
「フレンもここにいたのか。夕食ができているぞ」
「あら、わざわざ伝えにきてくれたの?」
「アレクに会いに、な。フレンから見てこの子はどうだ?」
どうだ、なんてまだ生後数ヶ月の子供に対して思うことなど普通はないのだが、やはり生まれてすぐ感じたようにこの子は時折知性を感じさせるそぶりを見せる。
「そうね、私が絵本を読んであげるといつも難しそうな表情をして、どうも何か考えてるような気がするのよねぇ。魔力もどんどん増えているし、フレッドとゲイルの時とは違うことが多いわねぇ」
「赤髪だから、なのだろうか」
「それもあるかもしれないわね。髪と目の色が違う子は何かに優れていることがあるって聞くしね。赤髪だけどこれだけ魔力があれば魔法も使えるかもしれないわ」
「三男で赤髪だと少し世間的にも扱いは難しくなるかもしれないな」
「まあ、今考えても答えは出ないわ。お腹が空いていたらろくに考え事もできないわよ」
「そう、だな。アレクだけじゃなくフレッドもゲイルもまだ子供だ。あいつらも将来有望だし全員平等に、だったな」
これは第一子を作る前に決めた約束だ。
たとえどれだけ才覚に恵まれた子が生まれても、恵まれなかった子が生まれても生を与えた責任は取る。誰も贔屓せず、平等な環境を作り、兄弟姉妹同士で才能を伸ばし合える環境を作ろうと、そう約束をした。
私が他と同じような自分のことしか考えない貴族と同じにならないでいられるのは確実にフレンのおかげだ。
生まれこそ平民ではあるが、魔法の才能を見込まれ魔法学院で私の同級生になる。何も考えてなさそうで誰よりも物事を考えている、そんな彼女に惹かれた。
「ほら、行くぞフレン」
そう言って手を差し出す。
「あらあら、あなたが手を繋ぎたいだなんて。ふふふ」
「言うな。……たまにはいいだろう」
彼女の前でだけは子爵家当主サンドリア・フォン・ケルヴィンではなく、ただのサンドリアとしていることができる。そしてこんなにできた嫁をもらえたなんてと、時々幸せを噛みしめるのだ。
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