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魔法世界の最強剣士  作者: 夜本なつ
2/13

1話 状況整理


「■■■■ー■■!」


「■■、■■■!■■■■■」


 そんな誰かの声とともに目を開くと、やけにでかい美形の男女がこちらを見て何かを言っている。


「ああう、あえあう?」


 ん?思ったように言葉が話せない。それに手足も動かせない。


 あの自称神が言ったように私は転生したのだろう。

 ……しっかりと赤ん坊から。


「■■■?■■■■」


「■■?■■■■■■」


 大人の男女——おそらく両親だろう——が心配そうにこちらを見て、近くにいる使用人に声をかける。


 生まれたての私が産声を上げていないことを不安に思ったのなら申し訳ないな。

 大声でも上げたら少しは安心するだろうかと思い、口開けようとすると、急に眠気が襲ってきて、それに抗えず目を閉じた……。




 何日か経って、少しずつ思考の整理ができるようになってきた。

 体はまだ全然動かせないし、母の乳を与えられるのも慣れないが、これだけ考えるためだけの時間があるというのも悪くはない。


 前世はこんなにゆっくりいろんなことを考えることなんてなかったし、体は不自由とはいえ、たまにはいいものだ。



 自称神が言っていた3000年後への転生という話だが、断片情報からだけでも信憑生はある。

 本当に一瞬だったし、実感はないが、まず第一に言語が変わっている。

 前世では大陸共通言語が使われていて、それが変わることはそうそうないだろう。違う大陸、という可能性だが、これもおそらく違う。

 この世界には五つ大陸があり、それぞれの大陸に人、エルフ、ドワーフ、獣人、妖精が基本的には住んでおり、それぞれ言語があった。完璧にではないがどの言語も齧ったことがあるがここで使われている言語はどれも違う。


 次に、魔法がかなり発展している。

 前世は魔法と言ったら魔力が特に多い者でないと使えないようなとても希少なものだった。だが、私を世話する使用人は何人かいて、その全員が何かを呟いた後に火と水の魔法を使ったのを見た。

 おそらく魔法体系の変化が起きたのだろうが、これも相当な時間がかかるだろう。


 そしてこれが一番単純かつ信憑性が高いのが、あの場面で自称神が嘘をつく必要がないということ。あと自称神は「僕が楽しいから」と言った。本当に転生させるだけの力はあるらしいし、3000年の時を超えるのもきっと可能なのだ。人業を超えるあいつのことは考察のしようがないし諦めよう。



 続いてこの状況で考え得ることといえばこの家のことだ。


 この家はおそらく貴族の家なのではと思う。あくまで前世に貴族制度があったから便宜上貴族と呼んでいるが、この時代で貴族と呼ばれているかは言語を習得してからじゃないとわからない。つまり簡単に言えば金持ちの家ということだ。

 私は生まれてからずっと同じ部屋にいるわけではない。運ばれて家のいくつかの部屋を訪れたのだが、見れる範囲だけでもかなりの部屋数があり、どの部屋も大きい上にかなり綺麗に掃除されている。私を世話する使用人は計三人いて、一日に一人づつ私に付く。二人ではこんなに綺麗にはできないだろうし、使用人の数もそれなりに多いこともわかる。


 まだ本当にわからないことだらけで、前世と比較して考えなきゃいけないことがもどかしい。

 だからもし文明が私の想像を遥かに超えて成長しているならもはやお手上げ状態なのだが、私を世話する様子を見る限り、魔法や魔道具の普及以外ではあまり私の時代と変わっていないように思える。


 そして次に家族構成。

 両親は生まれた時の見たあの男女で間違いないと思う。母は合っているのを前提として母とキスしているところを見たから、相当複雑な家庭環境及び複雑な文明になっていない限りあの男は父と見ていいだろう。

 次におそらくだが兄が二人いる。何度か私に会いにきたことがあり、使用人と比べて上質な服を着ている上に、客人にしてはやけに親しげに私に話しかけてきたり触ってくる。


 赤ん坊の宿命と言われればそれまでなのだが、やはりトイレを泣いて知らせたり、撫でてくれたら笑うなどは恥ずかしいが、かなり恥ずかしいが、泣かなければ処理してくれないし、笑わなければ悲しい顔をされてこちらも少し悲しくなるので役目と諦めよう。

 だが精神が体に引っ張られる部分があるのか、トイレの時は泣くのを抑えられないし、撫でられると嬉しい気持ちになるし、愛されていることを実感できるから悪いことだらけではないのかもしれない。



 まだ頭が据わりきっていなく、頭を回せないから視界から入る情報が少ないし、毎日話しかけられるが言語習得がまだなので人から得られる情報もまだ少ない。

 断片情報だけで整理できるのはここらだろうか。

 言葉がわかるようになるのが先か、はいはいができるようになるのが先かはわからないが、第二回情報整理会はまだ先になるだろう。


 そして私は今差し迫った問題に一つ直面している。


 ……暇だ。

 とにかく暇だ。


 前世では暇さえあれば、というより時間のほとんどを剣に使っていたから、こんなときにすればいいことが思いつかない。


 剣の修行の前には毎回瞑想をしていたが、せっかくの赤ん坊からの生まれ変わりなんだから今しかできないことをしたい。


 今しかできないこと、今するべきこと、うーんなんだろう。

 前世の記憶と今世の断片情報をつなぎ合わせて考えてみる。


 剣、貴族、剣、魔法、剣、語学…うーん。


 あ、前世で賢者が魔力は若いうちに決まるなんて言っていた気がする。

 若いうちに決まるってどういうことだ?素質とか生まれつきってことか?いやでもそれなら若いうちになんて言い方するだろうか。

 若いと変化するが大人になると変化しない?あ、若いうちは魔力を増やせるけど大人になるともう増やせないってことか。


 じゃあ今やるべき、今しかできないことは魔力を増やすことか。


 と、言っても魔力ってどうやって増やすんだ?

 前世から魔力の存在は知ってたし、身体強化魔法くらいなら使っていたから自分の中にあるこの微弱な魔力を感じ取ることもできる。

 ただこれをどうしたら魔力は増えるのか。


 魔力も体の一つの力に過ぎない。私が一番親しみ深いのは筋力だが、筋力に置き換えて考えてみるとどうだろう。筋力をつけるためにはもちろん筋トレで、筋トレをもう少し深く考えてみようか。筋トレは筋肉を動かして、痛めつける?破壊する、という見方もあるのか。

 そういえば前世の知人の格闘王は弟子に対して「筋肉は壊して壊しまくれ!筋肉が回復するのを感じろ!それがお前らの力になるからな!がはははは」的なことを言ってたな。

 回復する時に力がつくなら魔力も回復する時に増える?

 まあ時間はまだあるし試す価値はあるかな。


 体内にある魔力を意識して右手に集める。右手ですくった水を指の間からこぼすのと同じ容量で魔力を垂れ流していく。

 魔力は感知するのが一番難しいらしいので、これで魔力を増やせれば大きなアドバンテージになるな、なんて思いつつただでさえ少ない魔力がなくなっていくのを感じる。

 これで魔力が増えなかったらどう——


 そして魔力がなくなると同時にまたもや意識が暗転した。


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