8話 ゲイルの魔法
時間が……足り…ない……。
毎日血反吐を吐きながらも少しづつ更新は続けていくので、ぜひ生暖かい目で見続けてもらえると嬉しいです。
まず最初に驚いたのは、母がファイヤとウォーターの魔法を無詠唱で使ったこと。
次に驚いたのはその二つを同時に発動したこと。
最後に驚いたのは、いわゆる複合魔法と呼ばれる氷の魔法を使ったこと。
母はこの複合魔法である氷属性を好んで使うため、「氷結の魔導士」なんて二つ名もあるらしいのだ。
ゲイルは流石にまだ無詠唱とはいかず、魔法を発動するたびに詠唱を行なっている。
だが母がおかしいだけであって普通は複合魔法も使えなければ無詠唱での発動はできない。
ゲイルと母を比べてしまえばマイナスな部分だけ出てきてしまうが、ゲイルと同年代の子供を比べたのならゲイルは圧倒的に魔法の扱いが上手い。
まだ簡単な魔法しか使ってないが、魔法の制御が完璧に限りなく近い。
持続型魔法を発動しつつ大きさの調整をしたり、自分と離れた場所でも制御できている。
私も魔法が使えたらおそらくこのレベルまではできるだろうが、それはゲイルの十倍以上も生きて魔力操作を続けてきたというアドバンテージがあるからだ。
ゲイルはまだ四歳なのにすでに私が積み重ねてきた魔力制御と同等の制御を行えると考えるとゲイルの才能の凄さが窺えるだろう。
だがそれを「才能」なんて簡単な言葉で形容するのはあまりにも失礼だ。私が同じような扱いを受けたことがあるのでよくわかる。
才能はもちろん少なからずあるのだろうが、それを十分に生かすための努力をゲイルはしているはずだ。
才能があるだなんて言葉だけで人を判断するような人は人の努力を見透かせないという点でそれだけで浅さがわかるものだ。
わざわざ母を呼んでの魔法練習なのだからなにか特別なことがあるのだろうかと思っていると、氷魔法の練習を始めたみたいだ。
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「ゲイルは火と水の魔法はどれくらい使えるようになっているの?」
「火は中級なら確実に、水は上級の練習の途中」
「あら、結構進んでるのね。そこまで安定してるなら氷の魔法を使えるようになるのも結構早いかもしれないわね」
中級やら上級やら言葉が聞こえてきたが、それらは言葉の通り魔法の階級を表したものだ。
魔法は初級、中級、上級、超級、魔導級の五種類に分けることができる。
言葉だけでは実感が湧きづらいということで簡単に基準を作ると、一般的な魔法使いは中級魔法をメインに、必殺技的に上級魔法を使う。上級をメイン、超級を扱えるようになると有名な魔法使いと呼ばれるようになる。
私の母は例外中の例外で、魔導級の魔法を振り回すような化け物魔法使いらしい。
というのを本とアメリアから知った。
アメリアは何を聞いても答えてくるので、さすがに使用人にしては頭良すぎないか?と思って聞いたことがあるのだが、アメリアは少し生まれが特殊で魔法についてたくさん調べごとをしているらしいのだ。
あとアメリアは使用人なんてやっているが、超級魔法なら使えるらしいので、魔法使いとして生きていく道を選んでも生きていけると聞いた時は驚いた。
ケルヴィン家は私が思っているよりもかなり凄いことになっているのかもしれない。
ゲイルはすでに一般的な魔法使いと同ほぼじ領域まで達しているというのだ。
もちろんただ使える魔法の階級が高いことと強いことはイコールにはならないが、使えないよりは使える方がいいに決まっている。
ゲイルはまだ魔力量も伸びる歳だし、これから成長していくのだから母と同等かそれ以上の魔法使いになれるだろう。
「火属性は熱を与えるだけのように思われがちだけど、実は逆もできるの。けどそれが知られていないのは使用者も精霊も熱を奪うことをイメージできないから。あと普通に火をぶつけたほうが単純で簡単だしね」
「じゃあ母さんは氷をよく使うけど、熱い水属性みたいなこともできるの?」
「そうね。というか火と水の複合と考えるとそっちを想像する人が多いわね。でも私は水の熱を奪って氷にしたほうがイメージしやすかったし、魔力属性が氷のほうがあってるからね」
「へえ、確かに熱湯を飛ばすよりは氷を飛ばしたほうがかっこいいしな」
「ふふ、そうね、その理由がなかったとも言い切れないわ」
ゲイルの魔法の才能の部分だけ聞くと子供味が薄いように感じるが、この会話を聞けば少しはゲイルもまだ子供なのだと感じることができるかもしれない。
「じゃあ、早速氷魔法の使い方を教えていくわね。複合魔法の名の通り、火と水を同時に使うのだけれど、最初は同時に発動できるようにしないとね」
そういうと母は両掌を前に出した。
「二つを同時に使うコツは、うーん、意識を別々にすること、二つを同時に使うのではなくて別々に制御するイメージをするといいかもね」
母の掌に忽然と火と水が現れた。もはや詠唱をしないのが当たり前かのように見えるが、この時点でおそらく普通の魔法使いではなし得ないことなのだろう。
「慣れればこうやって、大きさ調節とか、位置を入れ替えたりとかできるようになるわよ。ここまでくるには練習あるのみね」
「別々に制御……」
ゲイルはそう呟くとまず左手で火魔法を発動させた。
魔法陣の上でゆらゆらと燃えている火はやはり安定していて、一定の大きさでブレずにただひたすらにゆらゆらと燃えている。
次に右手を出して水魔法の詠唱を始めた。
詠唱をしている途中は火はまだ安定していたが、詠唱を終えて右手に水が現れると左手にあった火はブレて、三秒ほど経つと消えてしまった。
「くそっ、思ったよりも難しいな」
「いや、最初でそれは凄いと思うわよ。私なんか最初は詠唱したら片方消えてたからね」
「でも何回か練習したら何か掴めそうな気がする」
そういうと再びゲイルは氷魔法の練習を始めた。
何度も火魔法、水魔法と続けて発動していくが、なかなかうまくできていないようだ。
というかこんなに何度も連続して魔法を発動させて息切れ一つ起こしていないあたり、ゲイルもかなり魔力が多いことがわかる。
まだこの場には変化は起きないぽいので、アメリアに母のことを聞いてみた。
「フレン様、ですか。フレン様は王国だけでなくこの大陸の中でも有名な魔導士なんですよ?」
この国の地理はほとんど理解したつもりだがさすがに他の国の詳しい地理まではわからない。
なので大陸の大きさは把握できていないが、王国だけでもかなりの大きさがある。
だから大陸で有名な魔導士、魔導士?魔導士とよく聞く魔法使いは何が違うのだろう。
……また思考がずれた。この身体になってからやけにいろいろなことに気付くようになったしいろいろなことが気になるようになった。
これはおそらくいいことなのだろうし、これからも同じことが何度も起きるのだろうがまだ慣れない。
「まどうしって?」
「あら、魔導士についてはご存知ではありませんでしたか。魔導というのは一言で言えば詠唱をしない魔法のことで、魔道を実用的な範囲で使える人のことを魔導士と呼ぶんです。私も魔導士を目指してた時期があったのですが、ここの使用人になってからは魔法使いの域で満足してますよ」
魔導士について話すアメリアは少し複雑そうな表情をしたがそれがなぜなのかを知る術がなく、追及する暇もなくアメリアは次の話題に移った。
「フレン様は元は平民の生まれだったのですが、魔法の才を国に認められて学園に特別入学したんです。そしてフレン様は学問にも力を入れて座学と実技の両方において学園一位を勝ち取り、貴族たちも文句のつけようもなく大成した魔導士なのです!」
なんだかかなり熱くなっているが、母は子供の頃からとにかくすごかったということは伝わった。
「フレン様の名は王国では知らない人はいませんし、王都の一部ではフレン様を主人公とした物語もあるらしいですよ!死地に送ったはずの目の上のたんこぶが帝国との仲を持ち、大陸最強と名高い魔道士と結婚したときたらあの宰相めの悔しそうな顔が想像できて楽しいですわ本当に」
ふふふ、と今までに見たことのないような顔を浮かべてアメリアは笑っていた。
言ったこと全てを理解できたわけではないが、昔も今も女は怖いものだなと物思いに耽っていたら、
「よっしゃ!できた!」
とゲイルが大きい声を上げ、その手元には安定こそしきっていないものの、魔法陣とともに火と水が掌の上に浮かんでいた。
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