8話 魔術の練習
なかなかに書く時間が取れず作者ももどかしい感じがしています……
週一以上は投稿する予定でいるのでどうぞよろしくお願いします。
毎日起きては家を歩き回って体力をつけ、剣を振って筋肉をつける。疲れたら書庫に行き本を読む。
こんな生活を毎日続けていると、以前より身体を自由に動かしやすくなった気がするし、本を読むスピードも上がった気もする。
今日もまた同じ生活を送るものだと思ったが、今日はもうすぐで四歳になる兄、ゲイルが魔法の授業をするらしいというのをアメリアから聞いたので、今日は私も見学してみようと思う。
ゲイルは母と似て魔法の才がかなりあるらしい、というのはすでに何度か聞いた話だ。
母は平民ながら魔法の才で魔法学園を主席で卒業し、男爵家の子息であった父と結婚した。
この話から、母は相当な魔法の才があるということはもちろんわかるが、魔法の才で貴族の妻に娶ってもらえるほど、やはりこの世界で魔法というのは重要視されているということだ。
フレッドは主に父の血を引き継ぎ、知力が優れ、ゲイルは母の血を濃く継ぎ、魔法の才がある。
その次に生まれた前世の記憶を持つ謎の剣士——まだ剣士と名乗れるほどのことはしてないが——である私。
……私の変な奴感すさまじいな。
フレッドの魔法の授業は以前の私と同じで屋敷の庭でやったらしいが、ゲイルが庭で魔法を暴発させると屋敷までも被害が及ぶ可能性があるということで、少し離れた魔法修練場で母が教えるということになっているらしい。
前世でも青髪は魔力が多い者の特徴として有名だったが、それが時代が変わるにつれて、魔法の才があると少しづつ認識にズレが出てきているようである。
前世では青髪でも魔法なんて使える者はほとんどおらず、今でいう魔術が他よりも優れているくらいの認識だった。とはいっても魔術なんて誰でも少し練習したらできるようになるので、魔術に使用できる魔力が多いだけでしかなかった。
それが今の時代では、誰でも魔法を使えるようなので、魔力が多いことと魔法の才能があることがそのまま結びついているのだろう。
私は魔力の量と才能が結びつくなんて微塵も思っていない。なにせ地道に魔力を増やしてきた私が魔法をそもそも使えないときたからな。
アメリアが魔法学会の知り合いに「魔法適性がない」なんてあるのかと聞いてくれて、それに帰ってきた答えが、
「魔法適性がない人は例がないが、魔力属性が魔法に向かなすぎて威力が弱い魔法しか使えない人なら見たことがある」
だそうだ。
現時点での私が魔法を支えない理由が、魔力属性というものに起因するらしい。
魔法適性、言い換えるところの精霊適性とは別に、その魔法が何に向いているのか、という指向性を表すのが魔力適性というものだ。
例えば、広範囲への魔法が得意な魔力、範囲は狭いが威力が高い魔力、威力も範囲もそこそこだが、持続だけは一流な魔力など、細かく見ていけばかなりあるらしい。
そこであくまで仮定の話だが、私の魔力適性は魔術特化である可能性が高いらしい。
魔術特化と聞けば聞こえはいいものの、言い方を変えれば精霊に好かれない魔力を持っているということになる。
これが真実なのかはまだ微妙なところだが、今のところは魔法は使えない、ということだけわかってれば大丈夫だろう。
……いや大丈夫ではないのだが。魔法使ってみたいという気持ちは大いにあるのだが。
▼
「あら、今日はアレクも見学するのね」
修練場に入ると近くにいた母が声をかけてきた。
「こんにちは、フレン様。今日はアレク様が……」
母とアメリアが何やら話し始めたのを尻目に魔力循環の練習をしているゲイルに近づく。
私が近づいてきたのに気づくとゲイルはこちらを向き、笑顔で話しかけた。
「おう、アレク。そういえば今日はお前も練習していくんだったな」
「うん。ゲイルにいさんはさいのうあるってきいたしおもしろそうだったから」
相変わらず滑舌がはっきりしないのはなんだかもどかしいが、なんとか伝えたいことを紡いでいく。
「はは、そうかそうか。俺はまだ母さんの足元にも及ばないけど、アレクの役に立つなら何か見つけていくといい」
ゲイルはフレッドと違い少し強気な性格をしている。
フレッドが知的冷静タイプだとするなら、ゲイルは強気感情タイプといったところか。
だがゲイルは自分の才能に誇りを持ち、驕っていない。
才能があるにも関わらず、他人を見下さずに自分を制御できている人間。
これを本当の意味での天才というのであろう。
ゲイルが自分に才能があると知り、それでも今のような性格になったのは確実に環境のおかげであろう。
その点、やはり父は環境づくりから使用人選びまで考え尽くしているのだ。
聞いていた通り、父は賢さで成り上がってきたということを実感できる。
「げいるにいさんはなんのてきせいあるの?」
「俺は母さんと同じで火と水属性だな。魔力適性は魔法全般特化だな。とは言ってもまだどっちも初級の詠唱魔法しか使えないんだけどな」
母とゲイルは二属性持ちだったのか。
二属性や三属性持ちが稀にいるのは知っていたが、こんなにも近くに、それも二人もいるなんて驚きだ。
魔法適性は両親のものを受け継ぐわけではないと書物に書かれていたので、ゲイルと母の適性が同じなのはたまたまだろうが、二属性持ちかつ属性が二つともかぶるのは奇跡のレベルなのではないのだろうか。
二属性持ちの何が偉いって、単に二属性を使えるだけでも他の魔法使いと比べ物にならないくらい希少価値が高いのだが、二つの属性を同時に扱えるようになったら、複合魔法と呼ばれる二つの属性の特性を掛け合わせた新しい魔法を使えるという点が他の魔法使いとは圧倒的に違う。
だから二属性持ちや三属性持ちはとても優遇されるのだ。
「ゲイルー、練習始めるわよー」
私が考え事に頭を回していると母がゲイルを呼んだ。
▼
魔法の練習とは実際何をするのだろうと興味を持ってきてみたが、最初はとにかく地味なものだった。
魔法はとにかく基礎が大事だということで、魔力制御の練習をとにかくさせられていた。
魔力が多いとそれだけ魔法を暴走させたときの自分や周りへの被害が大きくなる。
つまり魔力が多ければ多いだけ基礎を固めなければ、魔力制御を完璧にしなければいけない。
そのための基礎を今ゲイルはとにかくやらされている。
私も流石に同じ光景だけを見ても、「ゲイルより私の方が魔力循環は上手いな」とかしか思いつかないので、魔術の練習を少ししてみることにする。
魔術は魔力だけを使って自分の力で起こす奇跡。精霊の手を借りずに魔法を使う、ようなもの。
私が今知っている魔術は、身体強化だけ。魔力球を魔術と呼べるのかは微妙なところだ。
あ、そういえば木剣持ってきたことだし、前世でできた魔力を剣に込めて飛ばす、というのは魔術の中に入るのだろうか。
試してみるか。
やること自体は簡単。集中して、以前よりもまた増えている魔力を剣に纏わせていく。
この時代には前世と比べ物にならないほど魔力が満ちているので、木にも魔力を通しやすい性質があるのかもしれない。
心なしか魔力の通りやすい木剣に魔力を纏わせて、剣を振ると同時に自分の制御下から手放す。
まだそれほど速く剣を振れないので威力はお察しだが、一応それっぽいものは出た。
風魔法の紛い物でしかないが、剣以外でも似た動きさえ再現できれば同じことはできそうだ。
これまた試しに手に同じように魔力を纏わせて、手刀を振り下ろす。
これも少しだけだったが魔力を飛ばせることができた。
身体強化をかけた上で木刀で魔力を飛ばせたら威力は上がるんじゃないか?
身体強化は手の表面に魔力を循環させ、魔力を飛ばすやつ——魔力斬とでも名付けておこう——は少しだけ手から浮かせるイメージで。
お、思ったよりもしっかりとしたものになったぞ。
前世でも活躍していたこの魔力斬は魔力の増えた今、より実用的になるかもしれない。
「じゃあ、せっかく修練場を借りたのだし魔法、使ってみましょうか」
その母の声をきっかけにゲイルは母の指導のもと魔法の練習を始めた。
気づいてしまったんですけど、この話、まったく時間進んでなくて我ながらビビりましたね。




