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魔法世界の最強剣士  作者: 夜本なつ
10/13

閑話 アメリアの独り言

 山よりも高く海よりも深い事情により投稿頻度が週1か2くらいになります……

 …………いや違うんです。前まではただの怠慢だったんですけど本当に書く時間が少なくなるので許していただきたく、


 アメリアはケルヴィン家で働く下っ端使用人だった。

 だった、というのは最近一歳になったアレクがアメリアと接する機会が多く、アメリアに懐いたためアレク付きの使用人という立場を若くして手に入れたのだ。


 アレクがアメリアを初めて認識した時、アメリアはうたた寝をして寝言を言っていた、というのは言わぬが華だろう。




 アメリアは生まれは没落した帝国貴族で、少々、いや、かなり複雑な事情があって家を飛び出してきたのだ。

 子供のうちに家出をしたため、金を稼ぐ術はなく、スラム街で細々と生きていたところをサンドリアに拾われた。

 なので自ら応募した使用人がほとんどのケルヴィン家の使用人の中では一番サンドリアへの忠誠は厚い。


 なんやかんやで——なんやかんやで収めていいほど簡単な人生は送っていないのだが——アレクの専属使用人になったアメリアは不思議な光景をもう何度も見ているのだ。


 一つは、アメリアの目を盗んで書庫に行っていたこと。

 一つは、書庫の本を何か呟きながら読んでいたこと。

 一つは、アメリアがきたことに驚き、声を発したこと。


 これを一歳に満たない赤子が一日の間にしたことというのがまた驚きだ。


 アメリアは「人の嘘を見抜ける」という天恵を持っている。


 天恵——この世界に生まれる者は稀に天恵という特殊体質を持つ。アメリアの「嘘を見抜ける」天恵や、フレッドが持つ「精霊を感じ取れる」天恵。他には「見たものの性質がわかる」天恵や「相手の善悪が分かる」天恵なども聞いたことがある。

 どの天恵も人智を越えているため、天恵持ちはただそれだけで将来を約束されると言われている。

 この天恵の特性故に、アメリアははいかいいえの二択の質問で問えば真偽を問わず答えを得れるのだ。


 少し集中しなければ嘘は判別できないのだが、アメリアはもう何度かアレクが嘘をつくのを見てきた。




 最初にアレク様の嘘に気づいたのは、剣が好きな理由を聞いた時。その質問には特に意味はなく、ただの興味で聞いただけだったが、アレク様が嘘をつくだけの知性があることが分かった。

 その前から十分私が計り知れないだけの賢さは見せていたのだが、嘘には敏感な私は「嘘をついた」ということが気になったのだ。


 「人が嘘をつく時は、何かを隠したい時」というのは私の持論だ。

 生まれが生まれなので人が嘘をつくのは見慣れているし、私も嘘をついて家を逃げ出した身ではある。だが私を含め、嘘をつく時はいつも何か隠したいことがある時か人を騙す時であった。


 この天恵を少し詳しくいうのなら、相手が嘘をついている、ということがわかる。逆に言えば相手が曲解して(結果として嘘にはなるが、細部では)嘘をついていないのであれば見抜けないし、何も考えず適当言っているのも見抜けない。


 だからアレク様が適当言っているだけなら良かったのだ。

 ただ、嘘をついた、という点だけが気になって。


「アメリア、アレクの調子はどうだ?」


「あ、サンドリア様。今は御職務の休憩中でございますか?」


「ああ、仕事がひと段落ついてな。アレクを一目見ようと来たところだ。それにしても、アレクがお前に懐くとはな」


「あはは、一番若くて一番おっちょこちょいでしたしね」


 サンドリア様は王国一の領主と呼ばれていて、領民を第一に考えた善政を敷く領主で、領民達にとても愛されている。この方が領民達から愛され慕われているのは善政を敷いているだけだからではないと思う。

 貴族というのはどの国でも自らの権力や財力に溺れ、いつの間にか周りのことが見えなくなっていくものだが、この方は違う。

 善政を敷いて領地を存続させ続けるその知恵、自らに溺れない理性、そして領民や使用人達にさえも笑顔を振りまき、できるだけ距離を縮めていることがこの方の魅力だと私は考える。


 嘘が見抜けるせいで人間不信に陥った私が愛用人が務まるまで回復できたのは、ひとえにこの方のおかげなのだ。


「アレク様はあの日以来私にいろいろなことを聞いてきますし、世間話をする時すら何か考え込むそぶりを見せますし、赤髪だからとは言え贔屓目を抜いても賢すぎる気がするんですよね……」


「贔屓目を入れたら?」


「世界で一番頭がいいです」


「はは、正直な奴め。フレッドと比べても知力の成長が早すぎる気がするが……フレッドに続く天恵か何かなのか」


 天恵は人知を超えているものばかりなので、アレク様のこの賢さが天恵によるもの、と言われれば少しは納得できる。


「ですが、そう天恵持ちが続くなんてあるのでしょうか」


「しかもそうだとしたら『頭が良くなる』とか『知力の成長が早い』天恵なのだろうが、そんな天恵聞いたことがないし、今世界にある天恵とは少し違う気がするな」


「ええ、私のも身体機能が一つ増える、みたいな感じですし他の方もそうだと聞きます。成長が早い、というのは天恵とは違った気がしますね」


 天恵が身体機能の一つ、というのは昔から天恵持ちがよく説明する言葉で、「なんで喋れるの?」なんて聞かれたら「普通に喋れるからだけど」と多くの人が答えるように、「なんで嘘が見抜けるの?」と聞かれたら「生まれた時から見抜けるから」としか答えようがない。

 天恵を持っていない人が嘘を見抜ける感覚がわからないように、私も嘘を見抜けない感覚がわからないのだ。だから最初は天恵を持っているなんて気づかなかったし、人と一緒に過ごしていくうちに天恵を持っていることの気づくことができた。


 子が実は天恵を持っていたなんて聞いたら母はきっと血眼になって私を取り戻そうとするだろう。嘘を確実に見抜けたら貴族社会を勝ち抜いていくのは随分と楽になるだろうから。

 だがあの母の元に帰る気はないし、天恵を持っていても私を特別扱いしないサンドリア様の元を離れる気はさらさらないのだ。


「地が賢い、と見るべきか。……だがそれにしても一歳で、とは。誰が悪いわけではないがアレクの扱いは難しいことになりそうだな」


「はい、国への報告書に嘘を書くわけにはいけませんし、アレク様のことはすでに王族貴族の耳には入っているはずですしね。ですが五歳のパーティーまではどこも手を出しにくいとは思います。ケルヴィン領に何か不都合があって困るのは国ですしね」


「ああ。帝国と隣り合っていることがまさか利になるとはな。攻め込まれる直前だったところをなんとか立て直した甲斐があったというものだ」


「サンドリア様をここに派遣した宰相へのいい皮肉ですね」


「そうだな」


 宰相というのはもちろん頭が良くなければなれない。そして貴族は皆プライドが高い。

 ここから導かれる結論は、宰相がサンドリア様の知力に嫉妬して帝国と隣り合うこの現ケルヴィン領にサンドリア様を派遣したというわけだ。

 帝国にケルヴィン領を突破されても王国には「王国の盾」と呼ばれる城塞都市アルビアがある。

 ケルヴィン領が突破されても王国は落ちない。つまりサンドリア様は捨て駒、宰相は自分より知力が高いサンドリア様を排除しようとしたのだ。


 だが結果は宰相が望んだものとは正反対。

 ケルヴィン家は功績を残せず続きで男爵家まで落ちたのが、帝国からの小侵攻をゼロまで減らしたことで子爵家に昇爵。

 このまま帝国と同盟までこじつけることができたら伯爵になることも視野に入っていると王は言った。


 この事実を見れば宰相が焦っていることは明白。

 それを想像すれば自ずと笑いも溢れてくるものだ。


「アレクがどれだけ賢かろうがこうして寝ていると年相応の寝顔をしているな」


 そう言ってサンドリア様と同じ色をした髪を撫でた。撫でると顔が少し穏やかになった。

 撫でているサンドリア様も仕事をしている時では想像もできないような穏やかな顔をしているなと思って、少し笑いがこぼれてしまった。


「ふふ、そうですね。部屋を抜けだしたりした悪い子の顔とは思えません」


「お前も昔と比べると丸くなったものだよな。領主になったばかりの頃、領地視察に行った時——」


「わあーー!!これ以上話すと私の叫び声でアレク様が起きることになりますよ!?」


「ははは、ならばここらでやめておこう」


 笑った顔がアレク様と似ていて、やはり血は繋がるものだな、なんて思った。


「サンドリア様、ご歓談中失礼します。新しい報告と書類が溜まってきましたので、御子息と戯れたいならぜひ働いてからでお願いいたします」


「ああ、ファナティアか。では仕事に戻るとするか。アレクの世話は任せたぞ」


「はい、任されました。サンドリア様も無理はなさらぬように」


「私は一度も無理をしたことなんてないからな。心配するな」


「……サンドリア様、今のは天恵とか関係なしに嘘ってわかりますよ」


 そういうと笑いながらファナティアさんと共に部屋を出て行った。


 私は部屋でアレク様と二人きりになり、独り言を呟いた。


「アレク様は貴族のしがらみから逃れて嘘とは無縁の世界で生きていってほしいですね」


 もちろん世間がアレク様を見逃すわけがないというのは十分に理解している。が、あの日、家を出ると決めた時、口にした願いが今叶っている。

 サンドリア様に使用人として拾ってもらった日、長いは叶うものだと知った。

 だから私はどんな些細な願いでも、どんなに壮大な願いでも口に出して呟く。


「どうか、ケルヴィン家のみんなが平穏な日常を送れますように」


 そう、今日も誰にも聞かれない、どこにも届かない独り言を呟いた。


 使用人長の方の名前がなぜか「サンドリア」で領主様と同じになっていたので変更しました、それに伴って前の閑話から名前を直してます。

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