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魔法世界の最強剣士  作者: 夜本なつ
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プロローグ


 ——剣を振った。

 時間の許される限り、剣を振り続けた。


 人生というものは幸福を追い求めるためにある、とどこかの賢者が言っていた気がするが、私の幸福が剣を極めるというだけだった。


 剣の極地——零を目指す。

 それが世の剣士の目標であり、普通は何代もかけてそれぞれの流派から零を目指すのが普通だが、運悪く私の家系はただの商人のだった。


 ある日魔物に襲われていたところを剣士に救われて剣士に憧れ、その日から剣を振り続けた。



 そしてたった今、私は零の境地に辿り着いた。

 零の基準というものはない。それは零に辿り着いた者が今までいない上に、もはや噂なのではという声も上がるくらいだ。


 だが私は辿り着いた。辿り着いたという確信があった。


「世界」を斬った。

 それはもちろん地面に剣を向けてぶった斬るなんてことではなく、もう少し概念的な世界を斬ったのだ。空間を斬った、といったほうがわかりやすいか。


 零に至ったことを誰かに伝えたりもしてみたいが、それは体力が許さない。


 寿命が、きてしまったのだ。


 普段から修行をしている家の近くの山の山頂。世話をしてくれているまだ若い使用人くらいには伝えたかったが、もう山を降る体力も残っていない。


 地べたに座りあぐらをかき、剣を地面に刺してそれにもたれる。


「いやはや、歳には勝てぬか」


 一人で呟いて懐から短剣を取り出し、地面に文字を書く。


 『私はお前たちに支えられながら剣を極められて幸せだった。本当にありがとう』


 帰ってこないことを心配した使用人たちが読んでくれるといいのだが、と思い最後の遺文を残す。


 ああ、だがやっぱり少しだけ誰かに自慢したかったな、なんて子供みたいなことを思いながら、目を閉じた。




 目を覚ますと、そこは青い空が広がる平原でした。


 いや、おかしい。目を覚ました、という事実がそもそもおかしい。

 寿命が来てなかったとしても山の上か家の中のはずだ。


「あ、起きたね。良いお目覚めかな?」


 声が後ろから聞こえて後ろを振り向く。


 剣を極めた副産物として気配察知の能力も極めたはず。それを掻い潜って背後をとられるとは。


「何者だ?」


 そこには銀髪碧眼で美形の男が立っていた。


「あー警戒しないでいいよ。僕は、うーん君たちが言うところの神様?みたいな存在」


「そうか、じゃあ私はなぜここにいるのだ?」


 この男は自称神様らしい。信頼に値するかは微妙なところだが、この状況はわからないことだらけだし、ひとまずは話を聞いてみるしかない。


「まず、君は死んだよ。寿命を全うして。今は、君の使用人かな?が葬式の準備を進めているところだ」


「そうか、ちゃんと私を探しにきてくれたのか」


 主人と使用人という立場ではあったが、探しにきてくれて、葬式を開こうとしていることに少し喜びを感じている。


 いや、そうじゃない。


「死んだのならなぜ私は今ここにいる?」


 同じ質問にはなったがやはり気になるところはそこだ。


「君は剣術を極めた。人は強欲な生き物で、自分の欲望のために色々なものを手に入れようとするんだ。普通はね」


「何が言いたい?話が見えてこないのだが」


「その性質故に一つのことを極め抜く、というのはとても珍しいんだ。そして僕は君に興味を持った」


「……違うな」


 自称神はそれなりに私のことを買ってくれているらしいのだが、一つだけ訂正しなければいけない点がある。


「私は自分のために剣を振り続けたのだ。お前がいうところの欲望を目指すために剣を振り続け、そして極地に至った。だから私は珍しくも何もない、欲望に塗れたただの人だよ」


 自称神は一瞬ポカンとした表情を浮かべた後、笑った。


「ははははは、そうだね、そうだ、間違いない。さて、ここからが本題なんだけど」


 一通り笑ったあと、そう切り出した。


「君を3000年後の世界に転生させる。なぜと問われれば僕が楽しいから。拒否権はなし」


「おいおい、一気に話を進めすぎだ。転生?なぜ3000年後でその3000年はどうするのだ」


「おや、少し予想と違うなぜがきたね。3000年後なのは同じような世界にもう一度生を受けてもつまらないだろう?3000年の期間は気にしなくていい。君の魂を寝かせておく。君からしたら一瞬のはずだよ。あ、君が至ったとかいう零?は魂に刻み込まれてるから転生した後でもやろうと思えば剣を使えるし、使えなくなるなんてことは心配しなくていい」


「とりあえずは分かった、と言っておこう。拒否権はないのだろう?」


 否定的な雰囲気は出しているものの、少しだけ年甲斐もなくワクワクしている自分がいる。

 今まで——もう前世と言ってもいいのだろうか——は剣にだけ打ち込んで他のものは切り捨ててきた。

 後悔はしてない。剣が好きで極めたわけだしもちろん後悔しているわけではない。


 ただ、もう一度人生を送れる可能性があるなら是非とも送りたい。前世でやれなかったことを探して、それを極めるのもまた一興だ。


「うん。でも君も少し楽しみにしてるんじゃない?顔に出てるよ」


 自称神がにやけ面を浮かべてそう言ってくる。


「うむ、この老木に時間を与えるなど酔狂なのもいいところだが、感謝はしよう」


「いい心がけだ。転生したらぜひ神殿によって供物でも捧げておくれ。……じゃあ、そろそろいいかな」


「ああ、よろしく頼む」


 そういうと自称神は私に手を向け、何かを呟くと——視界が暗転した。


 ご閲覧いただきありがとうございます!

 のんびり投稿していく予定ですのでぜひ次も見ていただけたらと思います!


 感想や評価も気軽によろしくお願いしますー

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