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75 不良少女と呼ばれ? て

前編みたいな感じです。

「ええっ?! 」「大村先生が倒れた?! 」


 ある日の夕方のこと。父さんが帰ってきて、山村家の家族が全員集合して少しした後に。雪奈が『 そういえば、今日こんな事が 』と切り出した話の内容は、かなりショッキングなニュースだった。雪奈のクラスである、3年2組の担任(前年度までと同じだ)の大村先生が、今日から当分の間、お休みになるという事だった。もしかしたら次の学校集会の時に、そういう話が出るのかも知れない。


「いえ、倒れたのではありません。入院のため、お休みするという事です」

「ああ……。でも、体調不良なんでしょ?? 病気なの?? 」

「いえ、『 交通事故による、ムチ打ちと打撲 』です。もらい事故だそうで」

「「そっちかあ」」


 入院した、って聞いたから、何となく病気か何かで倒れた、みたいなイメージを持っちゃったけど。ケガのため入院、という事だった。しかも『もらい事故』だという。……もらい事故、という事は、『ぶつけられた』という事だろうなあ。


「右折のため停車していたところ、右から走ってきた車が当たってきたそうですよ。ハンドル操作のミスかどうかは知りませんが、危ないところでしたね」

「運転席に当たらなくて良かったな…… 」「ギリギリだったのね…… 」


 とりあえず大事をとって、精密検査も含めた入院、という事になったそうだ。予定としては1週間くらいの入院らしい。その後はムチ打ち用の、小さめのギプスだかコルセットだかを着けて、学校に復帰するそうだ。


「ニュースはそれだけじゃ、ないんですよ」

「他に何かあるの?? 」

「大村先生が入院している間、教頭先生とかが授業を受け持ってくれれば良かったんでしょうけど、あいにくと出張とかで人手不足らしいんですよね。時間割りを変更すれば、体育は合同授業でどうにかなるとしても。他の授業の遅れが問題になるようでして」

「なるほど」


 そこで雪奈の出番という事なのだろうか。とりあえずの代役は務まりそうな気がする。ちびっ子先生ユキナ、みたいなキャラの誕生かな。


「サポートというか、ヘルプに入る臨時の先生の都合を、どうにかつけてきたみたいで。その先生が来たんですよ」

「「ああ」」「雪ちゃんじゃないんだ」


 違ったみたいだ。そして春奈も、僕と同じような想像をしていたらしい。でも実際には臨時で受け持ってくれる先生が来てくれるようだった。当たり前の事だけど現実的な話だった。いや普通にウチの学校の先生達とか、たぶん教育委員会の人?? とかが当たり前の判断をした結果なんだろうけど、何か肩透かしを食らったような気がするのは何故なんだろう。校長先生も雪奈に任せちゃえばいいのに、みたいな事を考えてしまう僕の方が、ちょっと変なのだろうか。


「雪ちゃんでいいのにね」

「子供を無償で働かせていた、などというウワサが立ってしまったら大変でしょう」


 なるほど。先生も仕事をしている代わりに、お給料をもらっているわけだし。子供がタダ働きをさせられたー!! みたいな話が持ち上がって騒ぎになると大変だ、という事かな。いや、バイト代をもらったとしたら、それはそれで問題な気がするけど。


「代わりの先生って、どんな人だったの?? 」

「…………うーん。それが、ちょっと……」


 今日の事を思い出しているのか、雪奈が腕を組んで、ちょっとうなって。首をかしげて口を開く。


「……ちょっと、危ない感じでしたね」

「「ええっ?! 」」

「……なんというか、少し、病んでいるというか。けっこう年配の、女性教諭だったのですが。短いボサボサ髪に、あまり外見を気にしていな様子の服装、というか。服はリクルートスーツ?? の上下みたいなんですけど、シワとかが目立ちました。いちおう体型や名前、声から女性だと判断できるのですが、ズボンを履いていた事もあって、パッと見た瞬間には、女性だか男性だか分からない印象を受ける人でしたね。話に聞く、『 ちょっとうつ症が進行している人 』みたいな雰囲気の漂う先生でした」

「「 ……えぇー 」」「えぇー」「えー」


 僕らは全員、『えー』としか言えなかった。なんでなの。なんでそんな先生が来ちゃうの。僕はまだ見てないから良く分からないけど、なんか怖そうな感じを想像しちゃったよ。


「授業に関しても、教科書を読ませてスケジュールをこなしたり、算数の問題を適当に解かせたり。応用が必要な授業とか体育なんかは、ほぼ自習同然でした。まあ、体育で『とりあえずドッジボールでもしていなさい』というのは、願ったりかなったりでしたが」

「「ああー」」「あぁー」「あー」


 今度は『 あー 』としか言えない僕らだった。どうやら、子供を監督する大人、としてクラスを見ているだけで、積極的に関わろうとはしないスタイルのようだ、という事が雰囲気として感じられるような。そんな感じ。うまくすると1週間で大村先生が復帰する訳だし、変に授業進行のジャマもしたくない、という考えなのだろうか。


「まあ何事もなく過ぎてくれれば、それはそれで。大幅に授業が遅れさえしなければ、1週間程度の授業の遅れなど、どうにでもなります。とりあえずクラスの子からは色々と勉強の理解度の聞き取り調査も続けていますし、足りない部分があれば、ワタシがフォローしますよ。とりあえず、トラブルなく過ごす事を第一としましょう」


 結局のところ、雪奈が先生みたいな仕事をしている気がする。少しくらい授業が遅れても、雪奈が居れば何とかなるかな。


※※※※※※※※※※※※


 翌日の事だ。


「お父さん、お母さん。ちょっと相談が」

「なんだい?? 何かあったのか、雪奈」

「どうかしたの?? 」


 雪奈が父さん母さんと何やら話をしていて、『お父さんの小物を確認させてください』とか言って、一緒に父さん達の部屋に行っていた。後で思えば、この時すでに状況は動いていたのだと思う。



※※※※※※※※※※※※


 そのまた翌日。

 休み時間にクラスで友達と、最近のゲームとかの話をしていると。教室の後ろの戸を乱暴に開けて、クラスの中でもお調子者で通っている中島が、『 おいおい、聞いたか!! 』とか言いながら入ってきた。


「なんか、下級生の教室で何かあったらしいぜ!! 」

「何かって何だよ」

「そこまでは知らねーよ。誰かがケガしたらしい」

「えー?? もしかして、なんか3時間目あたりに『 キャー 』とか騒いでたヤツかな。窓の方からちょっと聞こえた」


 数人のクラスメートが、中島の仕入れてきたウワサ話に花を咲かせて?? いる。僕も窓際の席だったから、確かにそういう叫び声のようなもの?? は聞いたと思う。でもときどき不意に騒ぐクラスはあるし、そういうのは僕らにだって覚えがある。だから特に気にしなかったんだけど。……それにしても、下級生か。……下級生。まさか、雪奈じゃないよね。まさかね。

 何でもかんでも、身近な事件に雪奈が関わってくるという事はない、はず。だからたぶん関係は無い、とは思う、のだけれど。少し気になる。でも6年生になって下級生の階をうろつくのはちょっとアレだし、家に帰ったら聞いてみよう。もっとも、春奈がこの話を聞いたら、3年生の教室まで行って確認しそうだけど。


 ――とか、思っていたのも、少しの間だけ。

 昼休みの時間になって、ボーっと外を見ていると、見覚えのある大人の姿を発見した。よそ行きの恰好をしている、母さんの姿。いつもだったら、ふわっとした雰囲気で優しい感じなのに、何やら怖い顔をして、速足で校庭の隣の駐車場から歩いてくる。

 そして駆け寄ってきた先生と、お互いに頭を下げながら何かを話してから、職員室の方へと歩いて行った。……え?? 何で母さんが学校に来てるの?? 今日、PTAの会合とかそういうの、あったっけ?? それともアレなの?! まさか本当に雪奈がケガでもしたの?!


 急に不安な気持ちになってきた。何があったんだろう。雪奈は教室で迷惑をかけるような遊びをする子供じゃないし、むしろそういう子を注意する立場で……いや、巻き添えをくらってケガをした可能性はある?? いやいや待てよ、学校に母さんが来ているという事は、たとえ雪奈がケガをしていたとしても、たいしたケガじゃないはずだ。ケガの程度次第では先生が病院へ連れて行くはずだし、場合によっては救急車だって来る可能性があるはず。母さんが学校に来ているという事は、それ程の事ではないはず。心配のしすぎは良くない。心配してもしょうが無い事を心配するのは現実的ではないって、雪奈も言っていた。人生あきらめが肝心だと。いやこれは違うか?? いや違わないのか。どっちだっけ。


 僕が少々混乱しつつ頭を悩ませる間にも、午後の授業が始まる。

 授業内容は、よく頭に入って来なかった。



※※※※※※※※※※※※



 そして、午後の授業が始まって。5時限目がもうじき終わろうか、という時。


 ピーポー ピーポー ピーポー ピーポー


 救急車のサイレンの音が聞こえてきた。

 その音はだんだんと近づいてきて、大きな音が学校の近くで止まると、校庭の隣の駐車場から赤いライトを点滅させながら、救急車が近づいてくる。目的地はウチの学校だ!!


「学校に入ってきた!! 」「誰かケガでもした?? 」

「校庭で何かあった?? それとも体育館?? 」「校舎の方に来るぞ」


 授業が終了間際だった事もあってか、窓際のクラスメートが窓から身を乗り出すようにして救急車の様子を目で追っている。っていうか、先生も顔を出して見ているし。その様子を見て、クラスメートほぼ全員が窓際に集まってきた。窓から下の方とか遠くの窓を見ると、僕らと同様の光景が見て取れる。


 ――誰が救急車で、運ばれて行くんだろう。


 ハラハラしながら、ただ、その事だけを気にして、救急隊員の人が校舎から出てくるのを注意して見ている。救急車は後ろの扉を開けて停まっていて、僕らの教室の窓からはギリギリ救急車の様子が見えている。救急隊員の人がケガ人とかを運び込む直前の様子は見えるはずだ。子供か、大人か。髪の色だけでもいい。いったい、誰が――


「出てきた!!」「誰だあれ」

「先生かな」「大人って事しかわかんねー」


 雪奈でなはない。その事だけは分かって、少し安心する。誰かは知らないけれど救急隊員の人が付き添っているストレッチャーに乗せられた人は救急隊員の人といっしょに救急車に乗って、駐車場の出口ぐらいから再びサイレンを鳴らし始めた救急車が敷地内から出ていく。


「すげーな、あのベッド。一瞬で変形したぜ」「ストレッチャーっていうんだぜ」

「あーいう道具でスゲーよな」「誰が考えるのかな」


 あ、それは少し僕も思った。ほとんど高さを変えないで、そのままスライドして引き込まれていくんだよね。どうやって変形してるのかな、あのストレッチャー。変形する機械とか道具ってカッコいいよね。

 とか何とか意識が逸れていた、その時。走り出ていく救急車を見送るようにして、小さい人影が校舎から出てきた。少しだけ校舎から離れた場所に立ち、サイレンを鳴らしながら去っていく救急車を見送っていた、その小さな人影。揺れる金髪と、見覚えのある服装。雪奈だ。


 雪奈は校舎の方向に体を向けて顔を上げると、手を高く上げて振った。


 わぁぁ――――――――っっ!!!!


 一瞬だけ僕を発見して手を振ったかと思ったけど、どうやら自分のクラスに向けて手を振ったようだった。下の方の教室、おそらくは3年2組(もしかしたら3年のクラス全部かもしれない)から、大歓声が上がっている。ユッキー!! ユッキー!! みたいな声も聞こえてくる。


『 勝利のポーズ!! 』


 何やら雪奈が、何か変なポーズを取りながら決め台詞みたいな事を言うと、再び3年生の教室から歓声が上がっていた。


『 このワタシがいる限り、青山第二小に悪は栄えない!! 』

『いい加減にしなさい。ほら、戻るわよ』


 なおも何かのセリフを口にする雪奈を、母さんが連行していった。やーん、とかいう感じの鳴き声が聞こえたような気がした。……とりあえず、雪奈は無事で元気。それだけ確認して安心した。


「なーなー山村!! アレお前の妹だろ!! 」

「今度は何やったんだよ!! 」「教えろよ!! 明日な!! 」

「山村くんの下の妹ちゃんか……」「何したんだろ……」


 何やら決めつけのような言葉も聞こえる。雪奈が何かをやらかした結果があの救急車とか、現時点では言いがかりだ。ちゃんと事実を確かめないうちは、いい加減な事を言わないでもらいたいよ。まだ事実は未確認なんだからね。


 ……でもまあ、何かしらの関わりは、あるんだろうな。安心して心配のタネが無くなったと同時に、新しく疑問のタネが生まれた。いったい何があったのやら……

以前、筆者の精神が少しダークサイド堕ちしていた時に(しょっちゅうだという話もございますが)書いて塩漬けしていたヤツです。そのため続きもすでに書いてあるのですが、次回は何日後くらいがいいでしょうか。ボケとオチみたいなギャグネタ前後編という感じでもないし、3日後くらいでいいでしょうかね??


好き勝手に毒をまき散らすような作風な気がしなくもない当作品ですが、あんまり深刻な話が無くてもいい感じなんですよねー。今回だけにした方がいいですかね。キリンがハトを食べてた方が平和だし。


ともかく当作品は基本的に主人公を含めて登場人物がハードな目に遭ったりしない方向で(ぇ)お話が続いていく、のんびりとした、睡眠導入剤のような日常系です。今後もゆるーくお付き合いくださいませ。

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― 新着の感想 ―
[一言] やったのか!雪菜ちゃん!!
[良い点] 今日も更新お疲れ様でございます。 ってまさかの三部作???? 日常ゆったり派の本作に大波乱の予感!悪の組織から派遣された教師と金髪魔法少女との激しいバトルが! ウクライナに希望はあるのか!…
[気になる点] 続きがすごく気になる!
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