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68 夏の風物詩なコワイ話

あっ。…… という間に更新期間が。ひとまずこっちを投稿いたします。

「がおー 」


 雪奈が、白い段ボールで作った『丸くて飾りっけの無い、何かのお面』をつけて、同じく段ボールで作った何かの武器?? のようなものを振り上げ、全く迫力の無い吠え声?? のようなものを言って…… 叫んで?? いた。正直、ビックリもしないし怖くもない、どちらかというとカワイイ感じで、リアクションに困る感じのアクションだった。


「…… がおー!! 」

「えーと…… 」「…… 」


 なんだか、『そのリアクションちがう』と言われた気がする。困ったな。どうリアクションすればいいんだろう。思い切り怖がればいいのかな……?? でも、いまさらな気がするし。僕の後ろにいる春奈も、リアクションに困っているみたいだし。


「…… がおー…… 」

「…… 」「…… 」


 雪奈扮する恐怖の怪人?? が、なんだか悲しそうな鳴き声を上げている…… どうしよう。何が正解なんだろうか。後ろの春奈が「なんとかしてよ」と言わんばかりに、僕の背中をつついている。僕が選択に悩んでいると、廊下の引き戸を開けて父さんが部屋に入ってきた。すると父さんの方に向き直って、あらためて元気な鳴き声を上げる雪奈。


「がおー!! 」

「?! ……その仮面、そうか、今日は『13日の土曜日』か!! くっ、誰かきてくれーッ、ジェイサンだ―― !! 」


 ぎゅいーん。ばりばりばりー。ぎゃーっ。

 などという効果音と叫び声の声マネをしつつ、雪奈と父さんは何やらゴッコ遊びをしている。どうやら、これが正解だったらしい。


 なんなの、その『Jさん』って。知らないんですけど。


※※※※※※※※※※※※


「聞いてくださいよ、お父さん。お兄ちゃんったらノリが悪いのです」

「だって知らなかったんだよ。なんなのその殺人鬼」

「あたしも」


 当然の反論をする僕に、『まあ、次からはちゃんとノッてくれるよ』などとフォローする父さんだった。次回までちゃんと覚えてられるかなぁ…… 。なんか年に1回か2回くらいしか無いみたいなんだけど。


「『13日の土曜日』は、一世を風靡ふうびしたホラー映画ですよ!! ワタシ個人としては一般教養の知識に含めてもいいと思います!! まあ、シリーズ化した『パート2』からが有名どころなんですけどね。ジェイサンが主人公になるので」


 などと、まだお面をつけたまま話す雪奈だった。ちなみに手にしていたのはチェーンソー、お面はアイスホッケーのマスクだったらしい。雪奈がチェーンソーとか好きなの、この映画の影響なのかな??


「その『Jさん』って、主人公なの?? 敵役じゃないの?? 」

「敵役ですよ。でも、ホラー映画の主人公って、罪もない一般人を殺しまくる殺人鬼やモンスターの方じゃないですか?? あと、お兄ちゃん。『Jさん』ではなく、『ジェイサン(J―SON)』です。『Jの息子』という意味です。まあ、日本で有名になった頃も、適当な呼ばれ方をしていましたが」


 そうか。ホラー映画の主役って、観客を怖がらせるホラー的な存在の方だったんだ。そういえば、そっち系の映画とかマンガで皆が覚えてるキャラクターの名前って、敵側の強キャラの名前ばっかりな気がする。『井戸の定子さん』もそうだし、ホラーな対象から逃げ回る側の人の名前って、誰も覚えてない気が…… 少なくとも僕は覚えてないな。まあ、シリーズ化するって事は退治されずに生き残ってるって事だろうし、いつもジェイサンの勝利で終わるんだとしたら、やっぱり主人公って事でもいいのかも知れない。


「観客が飽きるまでシリーズ化された有名作品なのに…… 知名度が落ちたのは、ちょっと寂しいですね」

「「飽きるまでって」」

「まあ10作以上とか、ちょっとやりすぎ感はあったな」


 飽きちゃったから終わったんじゃないのかな。あんまり繰り返したから『またかー』みたいな感じになっちゃったとか。父さんも「やりすぎ」って言ってるし。


「大型ディスカウントショップの面白グッズ売り場に、今でもそれっぽいお面が売ってたりするじゃないですか」

「あ、アレってそのホラー映画がネタだったんだ」「はじめて知った」


 一般常識が変化している。これも時代ですかねぇ、とか言っている雪奈。


「学校の怪談とかは伝統芸能みたいに語り継がれてるんですけどね…… まあ最近は、怪談のオバケよりもリアル変質者とか不審者とかの方が身近で物騒なので、『どこそこで不審者を見た―!! 』とかいうウワサの方が怖かったりするんでしょうけど」

「「「あぁ―― 」」」


 確かに。不審者の声かけ事件?? みたいなのの方が、ずっと身近で怖い感じがする。正体不明のオバケよりも、そこら辺の曲がり道の向こうから現れる不審者の方がリアルで怖いもんね……



※※※※※※※※※※※※


「こんにちはー!! ユキちゃんいますかー?? 」


 そんな声が玄関から聞こえた。レナちゃんが遊びに来たみたいだ。


「がおー!! 」

「あれっ?! ハロウィンには早くない?? 」


 雪奈が例の『手製のJ-SONマスク』をつけてレナちゃんを出迎えたけど、そんなリアクションを返されてしまっていた。でも。


「お兄ちゃんのリアクションに比べれば、レナちゃんのリアクションは数段良かったです」


 などと言う雪奈だった。もっとも、その後に。


「映画の冒頭で殺人鬼に惨殺されるキャラが言いそうなセリフでした」


 などと言っていたけれど。


「ところでレナちゃん、レナちゃんの小学校で、何か面白い怪談とか無いですか?? 」

「校庭の隅っこにある二宮金次郎が、ときどき山へ出掛けてるんだって聞いた」


 へー。僕らの学校だと、夜中に校庭を走ってるらしい、みたいな話だったけど。散歩する二宮金次郎さんか。土地によってバリエーションは多いのかも。


「レナちゃんの学校の金次郎さんは、山で何をしているんです?? 」

「背中に背負う薪を取りに行ってるらしいよ。でも、運悪く動いてるところを見ちゃうと…… 手に持ってる斧を振り上げて、追いかけてくるんだって!! 捕まると殺されちゃうんだよ!! 」


 意外に物凄く怖い話みたいだった。しかもなぜか斧を持ってるし。


「どうすれば助かるんですか?? 」

「学校の敷地の外に出れば助かるらしいよ。学校の外までは追ってこないんだって」


 足が遅いと助からない気がする。二宮金次郎さんはどのくらいの足の早さかな。50メートル何秒で走れるんだろうか。


「レナちゃんの学校の金次郎さんは、何で出来ているんですか?? 」

「ウチのはブロンズ像だよ。100メートル10秒で走れるらしいよ」


 それ助からないヤツじゃないの?? オリンピックに出られそうな足の速さなんだけど!! あと、僕らの学校の金次郎さんは石像?? なんだけど。ブロンズ像のもあるんだ……


「追いかけられたら逃げられないですね」

「でも、勉強をマジメにやってる子は見逃してもらえるんだって」


 なるほど。よくできた話です。

 などと締めくくっている雪奈だったけど。勉強をマジメにやってない子は二宮金次郎さんに近づかない方がいいんだな…… とりあえず僕は大丈夫。だと、思う。

 でも校庭に入ったら、二宮金次郎が定位置に居るかどうかを確認しよう。もしも台座の上に立ってなかったら、もう全速力で校門まで走ろう。そう思った。


※※※※※※※※※※※※


 翌日の事。そろそろ夕方になろうかという時刻。


「ほおー。コレが例の『裏山に薪を取りに行く金次郎さん』ですね」

「斧は持ってないね」「銅像のヤツ、はじめて見た」


 僕らはレナちゃんの案内で、レナちゃんが通う小学校を見に来ていた。雪奈が『どんなとこか見てみたい』と言うので、せっかくだからと僕と春奈も一緒に来ている。もちろん夏休みだから校門は閉まっているけれど、勝手口みたいなところは開いているので普通に中に入れる。

 というか、お昼過ぎはまだ暑いからと夕方近くの時間を選んでやって来たのだけれど、この学校の生徒らしき子供達が、僕らと同じように校庭に入り込んで、ドッジボールをやっていたりする。この小学校、あんまり校庭の管理は厳しくないみたいだった。そして、雪奈が二宮金次郎の銅像をペタペタ触りながら見て回っていると、比較的近くで遊んでいた子供達の声が聞こえてくる。


「キンパツだ!! 」「外国の子かな」「フリョーだよ!! 」


 そんな声を聞いた雪奈は。二宮金次郎の後ろから出てくると、髪の毛を顔の前に垂らして目がチラ見えする『オバケっぽい恰好』で、両手を振り上げていた。そしてそのまま……


『オバケだぁ!! がお――!! 』

「「キャー!! 」」


 校庭で遊んでいた子を追い掛け回し始めた。『がおー!! 』『『キャー!! 』』と、しばらくの間、雪奈と地元の子供達の追いかけっこは続いた。雪奈は『うはははは』とか『たーべちゃーうぞー♪♪ 』みたいな事を言いながら、あっちにフラフラ、こっちにフラフラしながら、主に足の速い子を狙って追い掛け回していたのだった。校庭で遊んでいた子はたぶん3年生か4年生くらいだったと思うけど、雪奈の足の方が少しだけ速かった気がする。


「なかなか楽しめましたね」

「なんなのこの子」「日本語うまいね」「カワイイな!! 」


 その後、軽く自己紹介して。僕と春奈とレナちゃんも混ぜてもらって、ちょっとドッジボールをやったりして。本格的に暗くなる前に帰って行く僕たちだった。


※※※※※※※※※※※※


 そして僕らが地元に帰って、しばらくして。

 レナちゃんの小学校では『夕方おそくまで遊んでいると、黄色い髪の毛のオバケが出て追い掛け回して来る』というウワサが流れたらしい。


 もちろんそのウワサの真相は、ほんのちょっとの人しか、知らない。

最近は恐怖モノのネタ、海外はともかく日本ではあんまり流行ってないような気が…… 輸入モノは特に。アニメだとデスゲーム関係とか、ときどき出てくるんですけどね。

今はジェイ〇ンとフ〇ディ、国内でどのくらい通用するのか…… パーティグッズのお面だと、ジェ〇ソンとスク〇ームのマスクは定番なのですけどね。


本作はゆるく、のんびり更新していきます。今後ともよろしくお願いいたします。誤字脱字など見かけましたら、どんどん指摘してくださいませ。ユーザーデバッガーは神様でございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] エッチなヤツは許さない「風紀委員」ことJ、マスクは3からですね 2は袋を被っている「農夫J」で、10になると宇宙船で暴れるギャグみたいなJに 私にとっての「13日の金曜日」は多人数対戦アク…
[一言] 今回も良かった。 最近は昔の作品キャンディマンやハロウィンだど続編が作られたりもしてますし、雪ちゃんが話題にしても言い訳しやすいですね。 それと雪ちゃんなら、お母さんのお化粧品を勝手に使って…
[一言]  狼男とかフランケンシュタインの怪物、半魚人みたいなムービーズモンスターが古典化するキラーズの先例そのものな気もします。 いや、彼らは鬼〇郎やら怪物〇んやらに取り上げられた結果で変な方向に行…
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