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43 プログラミング授業と雪奈 その1

プログラミング授業って……

「ねえねえ、お兄ちゃん。お姉ちゃん」

「なになに?」「どうしたの?」


 ある日の夕食後。どうしても観たい番組も無かったけど、何か適当なバラエティ番組でも流し見ようかなー、とか検討していた春奈と僕に、雪奈が話しかけてきた。二人一緒に、という事は男子女子の関係の無い話題、という事なんだろうけど。何だろう。


「上の学年だと、もう『プログラミング』の授業ってありますよね?以前、何かの会話でちょっとだけ、お姉ちゃんが『BASIC』の事をよく知らない、という事は聞いたような気がしますけど」

「うん、べーしっくん、だよね」


 だからそれ違いますよお姉ちゃん。と言う雪奈。何が違うのかはよく分からない僕。つまり僕も『べーしっくん』とやらの事は分からないという事なんだ。何なんだろう??


「僕も知らないんだけど。べーしっくん」

「ですから『BASIC』ですよ、お兄ちゃん。B・A・S・I・C、です!!プログラミングを学習する事を目的とした、初心者用の、コンピューター言語の入門用言語です。そして、これを知らないという事は……ウチの学校のプログラミング教育では、別の何かを使ってプログラミングの授業をやっている、という事ですね。どんな授業なんですか??」


 そうだなー、と。春奈と僕が、どうやって説明するのかを考えていると。父さんと母さんが飲み物を持って来て、コタツの向かいに座った。


「そう言えば、もう小学校でも必修なんだったかな??」

「ウチではあまり、気にしてなかったわねぇ??」


 父さん達が会話しつつ、チラリと雪奈を見る。その意味は何となく分かる。


「雪奈の言う『プログラミング』って、雪奈がユアチューブのコンテンツ動画を編集してる時にやってた、CGで作った人形を動かす命令の、何だかよく分かんないヤツだよね??黒地のウインドウに、記号がズラーっと並んでるヤツ」

「基本動作のソースコード画面の事でしたら、まさしくその通りです」


 やっぱりそうだった。そして。


「あんなの5年生じゃやってないよ。春奈だってそうだろ??」

「やってるワケないじゃん。あたし達がやったの、音楽の授業だったし」

「そうなんですか……」


 雪奈がやってるようなヤツ、どう考えても中学校からのレベルだよ!!

 そして父さん達が『ウチでは特に気にしてない』というのは、高レベルのプログラミングを実践してる子供がウチに存在していて、日常的に『プログラミングがどんなモノか』という事に接しているから、仕組みや考え方なんかを覚える事に関して苦手意識は持たないだろう、という事なんじゃないかと思う。正直、授業の内容はすごく簡単というか、初心者向けだなー、という感じがしたし。加えて、授業で分からない事があったら雪奈が家庭教師してくれるから気にする必要ないんじゃないか、とか。そういう考えなんじゃないか。僕もそう考えてるし、春奈は言うまでもない。


「4年生のヤツは、『音楽を組み立てよう』みたいな感じ。タブレットを使ったグループ授業で、指定された音楽を、勉強用のゲーム画面??みたいなので作る。みたいな。音楽の授業をやってるというか、パズルで遊んでるというか。なんかそんな感じ」

「シンセサイザーの打ち込みみたいなモノでしょうか……。ちなみに、どんな曲を打ち込んだんですか??『JMOの【 ライデン 】』とかでしょうか??」

「なにそれ」

「ちょっと待ってくださいよ……これです、これ」


 雪奈が家族共用タブレットを操作して、動画を検索完了して再生する。何か知らないバンドの人が演奏する、ちょっと古い動画だった。


 ポーピーピー♪ ピッピッポ♪ ピッピポ♪ ピッピッピー♪

 と、何かちょっとカワイイ音と曲調の曲が流れていた。しばらく聞いていたけど、歌声が聞こえてこない……前奏が長い曲だなぁ。


「なんかカワイイ曲だねー」

「ここはカッコいい、と言って欲しいところなんですけどねぇ……」

「ところで雪ちゃん、これって前奏どのくらいあるの??まだ歌が聞こえてこないけど」

「この曲、歌詞はありませんよ」


 え――

 バンドなのに、そんな事あるの?!昔ってそうなの??


「歌詞ないの?!」

「確か、たまーに歌う曲も作ってたと思いますけど……基本的に、『楽曲』を演奏するバンドなんですよ」

「そうなんだ……そう言えば、ドラムもギターも居ないね」

「テクノとはそういうモノですよ」


 そうなんだ……と、春奈と雪奈の会話を聞きながら、そんな感想しか持てない僕だった。音楽関係には詳しくないから『テクノ』とか全然分からないし、そもそもこの動画がどのくらいの時代の曲なのかもよく分からないし。動画のタイトルにも年代とかは書いて無いしなぁ。


「テクノって、クラブミュージックじゃなかったかな??」

「ハウスって言うんじゃなかったかしら??」


 父さんや母さんは、こっちはこっちでよく分からない会話してるし。理解するには専門知識が必要なジャンルなんじゃないかなぁ。ラップやヒップホップとどう違うの、とか聞いてみたい。関係ないのかな??


「最初に作ったのは……『 かえるの歌 』だったかなぁ」

「なんですかそれ。宇宙生物とでも戦うんですか??」


 春奈の言葉に、雪奈が変なリアクションを返していた。


「かえるの歌って、宇宙生物と戦う武器になるの??」

「昔のPCゲームで、そういうのがあったのです。襲った生物の遺伝子情報を取り込んで進化するという、外国の有名SFホラー映画のクリーチャーみたいな宇宙生物が出てくる、パニックホラー的なアドベンチャーゲームで。確か舞台は、衛星軌道上の国際宇宙ステーション……でしたか。ストーリー的に色々と何やかやあるのですが、最終決戦の武器となるのが『 かえるの歌 』です」

「えぇ――」

「宇宙生物が『特定の音の組み合わせ』……すなわち【 とある曲 】が弱点である、という事が分かり、追い詰められた主人公とヒロインが、電子楽器で『 かえるの歌 』を奏でて撃退し、エアロックから宇宙空間へ宇宙生物を放逐して勝利となります」

「もっと他の曲は無かったの?!」


 春奈がそんなリアクションを返すけど、僕もホントにそう思う。なんで『 かえるの歌 』なのさ。もっとカッコいい曲とかあったんじゃないの??


「いや実際は、かえるの歌じゃないんですよ……物語の中では特に曲名の無い、ちょっとした旋律だったような……ただ、音階が【 かえるの歌の冒頭そのもの 】だったので、プレイヤーからは『 通称・かえるの歌 』と呼ばれていただけで」

「「「「ひどいねそれ」」」」


 ちゃんとした曲名とかあったなら、その曲名で呼んであげたらどうなの。


「かえるの歌って、こんな感じですよね??」


 どー♪ れー♪ みー♪ ふぁー♪ みー♪ れー♪ どー♪

 みー♪ ふぁー♪ そー♪ らー♪ そー♪ ふぁー♪ みー♪

 と、雪奈が口で言ってみせる。リコーダーで吹くと、こんな感じだ。


「そして例の曲は、こんな感じです」


 ドレミ―♪ ファミレドミー♪ ドレミ―♪ ファミレドミー♪


「えぇ――」「ぜんぜん違うよ……」

「出だしの音階はいっしょかな……」「曲調は違うわよね」


 ここまで曲のテンポが違えば、全然違う曲だと思うんだけど。それでも父さんは優しくフォローを入れてくれた。やっぱり雪奈には甘い。


「実際にゲームの進行上で、プレイヤーが音階を直接入力する場面があるのです。そこで『あれ……??どんな曲だったっけ……??』と、問題の曲を忘れてしまっているプレイヤーが続出。思い出しても音階を正確に入力できないプレイヤーはもっと続出!!間違い入力を何回かすればデッドエンドの場面です。そこで登場したキーワードが、日本の子供なら誰でも知っている『 かえるの歌 』です!!もちろんゲームのこの曲、続きがあって、続きは『 かえるの歌 』とは似ても似つかない曲なのですが……とにかく、かえるの歌のおかげで、ゲームクリアを助けられたプレイヤーは大勢いました……という逸話を、ネットの隅っこで読んだ事があります」

「「「「そうなんだ……」」」」


 リアルタイムの話題か実体験じゃないのかなー、と思いつつ。あとでどんなゲームの話なのか、ちょっと調べてみようと思う僕だった。それにしても、シリアスなパニックホラーだかSFサバイバル物だかの物語のはずなのに、最終決戦で『 かえるの歌 』は無いなー、と思わなくもない。


「いちおう『 蒼穹の無限 』とかいうタイトルがついてて、このゲームのメインテーマだと思いましたが……」

「「「「そっちで呼んであげようよ」」」」


 ちゃんとカッコいい曲名がついてるじゃん!!部分的に同じ音階を使ってるからというだけの理由で、かえるの歌呼ばわりするのは可哀想だよ!!かえるの歌が悪いとは言わないけど、シリアスな話には合ってないでしょう?!

 雪奈がまた、動画を検索して『 蒼穹の無限 』の音楽動画を見つけて再生する。ちゃんとした……というと変な言い方になるけれど、優しい感じのする、いい曲だと思った。


「やっぱり、『 蒼穹の無限 』で」

「ぇぇー」


 雪奈が何やら鳴き声を上げて『かえるの歌でいいじゃないですかぁー』とか言っていたけれど、やっぱり作曲者のつけた正式名称で呼んであげるのが正しいと思う。というか、ちゃんと曲を聞いてみると、もう全然別物というか、かえるの歌のイメージのカケラも無いし。誰だよ、最初に言い出したヤツは。


「ところで、お兄ちゃんの学年の方は、どんな感じですか??」

「うーん……たとえば、算数の授業で『正多角形を描く』っていうのとか……どういう命令を与えれば、思い通りの動作ができるのか……っていうのを勉強する授業だったと思うよ。計算問題とかもあったけど、何か他にも色々。確か『スクラップ』とかいうプログラムの教材??ツール??で、簡単なゲームを作ってみよう、みたいなのもあったかなぁ。グループ授業だったから、みんなでワイワイやってたよ」

「ちょっと調べてみましょうか。カタカナでいいんですか??」

「名前は英語だったから、外国のヤツかも」


 雪奈が黙々とネット検索をする。

 雪奈がプログラミングの授業を受けるようになったら、先生はどうするんだろうか。タブレットが一人に一つずつあればいいんだろうけど、今みたいにグループ授業だと、雪奈の入っているグループは他の子が勉強にならなかったりするんじゃないだろうか。そうなったら雪奈が一人だけ別にされてしまうとか……いや、ちびっ子先生として指導側に回ってもらうのが一番なのかも知れない。今でも友達相手に、家庭教師まがいの事をしている事もあるし。


「――なんですかこれ!!BASICを視覚化したようなモノじゃないですか!!しかも命令文がすでに出来上がってるのを組み合わせるパズルみたいになってるとか!!ハァ?!条件を追加すると勝手に命令文の連結を自動判断する?!スクリプトを指定してゲームを作れるですって?!こんな……こんな楽なツールっ……!!プログラムっていったら、プログラムっていったら……まずはキーボードの配置を覚えつつ、人差し指でポチポチとキーを探しながら押すところから始めるのに……苦労!!苦労というモノを経験させずに、何が学習なのかと!!命令文は自分で考えるものでしょうが!!キィ――――!!」


 検索結果を確認した雪奈がカンシャクを起こしていた。何がどう気に入らなかったのだろうか。自分はもっとレベルが上なんだし、気にする事は何もないと思うんだけど。


「これこれ!!こっちを使いましょうよ!!これこそがプログラムの教材というモノです!!」

「僕らは生徒だから、そういうのは先生に言わないと」

「雪ちゃんはアナログなのが好きなんだねー」


 雪奈は検索結果の中から、自分好みのプログラミング教材……『こどもパソコン・いちごペースト』とかいうのを推しまくっていたけど。学校の教育方針というのは、たぶん県の教育委員会とか、そういうエライ人が決めてると思うから生徒の希望ではどうにもならないんじゃないかなぁ。それに雪奈の推してるヤツは、どう見ても物凄く地味だし、全校生徒投票とかを実施しても、圧倒的多数で負ける気がする。なお、雪奈の最推しのそれは、例のBASICというプログラム言語を、そのまま使う教材だった。

 あと春奈。雪奈の推してるのも子供用『パソコン』だから、アナログじゃなくてデジタルだと思うよ。イメージ的には合ってるのかも知れないけれど。たぶんレトロなもの、とかいう表現の方が合ってるんじゃないかなぁ。それともアナクロと言い間違えたとか??


 そんな訳で、夕食後の雑談をきっかけに始まった雪奈の愚痴みたいなモノは、もう少しだけ続くのだった。

最近の(最新の??)小学校の授業について。その1でした。

近日中に、その2を投稿する予定です。

公立でも小中学校の授業が加速度的に近代化(未来化と言いたくなる)している昨今。妹ちゃんはどう感じているのでしょうか……という話です。

それはともあれ、ゆっくりヒマつぶし程度に読んで行ってくださいませ。寛大なお気持ちで。

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― 新着の感想 ―
[一言] 色々書いては消してを繰り返し、最後に残った思いだけ もう最愛のウインドウズ98さえ化石・古典になってしまったのですね オーエスくんも色々あったなぁ
[一言] 簡単にでもユーザーが仕組みを理解していると各所が諸々助かるの事実はありそうです ラーメン屋はスープがきれたらラーメンつくれないくらいの理解が社会にあると嬉しいですね
[一言] B・A・S・I・C……ここ数年、文字の間に・が入ると全部顔に見えてしまいます。……三人いますよね?
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