42 2月のイベント
豆を袋で投げる場合もあるらしいですね。
「もうすぐ恵方巻だね」
「海苔巻きが食べられる日が近づいてきますね」
春奈も雪奈も、正しいイベントの名称を口にしていない。興味の無い部分なんだろうな。
「そして月末には、お兄ちゃんの誕生日でケーキが食べられる日もあります」
何か微妙な表現で僕の誕生日を覚えられている気がする。
「にゃー」
「ニャーニャー」
すかさず連続技的に、春奈と雪奈がネコの鳴きマネをする。
「それ、いい加減に聞き飽きたよ……」
「ごめーん。つい」
「覚えやすくて、とてもいい誕生日です。ぜったい忘れません」
僕の『やれやれだ』という声に、妹二人が悪びれもせず、笑いながらのリアクションを返してくる。確かに忘れられる事が少ない、分かりやすいい誕生日だとは思うけどさぁ。
……僕の誕生日は、2月22日。ニャーニャーニャーの、猫の日(という記念日らしい)という事になっている。だからといって僕がネコ大好き人間という訳でもないし、僕はどちらかと言えば猫派というより犬派な気がするんだけど。豆柴とか好きだし。
「あと、ついでに2月14日のバレンタインデーも中間にありますね。お兄ちゃんに妹チョコをあげないといけません。今年は手作りチョコにでも挑戦しましょうか??きっと、お父さんにおねだりすればチョコの材料費くらい出してくれますよ。当然ながら、お父さんのチョコも作る事が義務付けられますが」
「それいいね!!お母さんといっしょに、まとめて作ろうか。買うよりいいし!!」
大量生産された手作りチョコが、僕と父さんにプレゼントされる事が確実になりそうな発言を聞いた気がする。あと、手間を除けば購入代金が父さん持ち、という事で個人的な費用がゼロ円。春奈と雪奈の立場からすれば、コスパ的に最高のプランに違いない。
しかし父さんの立場からすれば、少し微妙なんじゃないだろうか。それとも、娘の手作りというだけで価値が高いんだろうか。少し考えてしまう。
「お兄ちゃん、甘いのがいいですか??苦いのがいいですか??」
「甘い方で」
もしも苦いの、とか言ったら何が出てくるんだろう。少しだけ気になったので、ちょっと聞いてみると。
「一般的なミルクチョコではなく、カカオ95パーセントとか糖分が限界控えめの、原初のチョコみたいなヤツを原材料にチョイスします。個人的な感想ですけど、アレは薬であって、お菓子とは言い難い味わいのシロモノですよ」
という返事が返ってきた。やっぱり甘いヤツがいいなぁ。苦いチョコとか、食べたい気持ちにならないよ。
「ところで雪ちゃん、手作りチョコの作り方は知ってるの??」
「湯煎して溶かして固めるだけですよ。混ざりものを適度に入れると、生チョコとかいう状態になります。水あめとか生クリームですね。トリュフというヤツは、手早く泥団子を作る要領で出来上がるみたいですよ」
泥団子か!!面白そう!!
などと春奈が言っているけれど。幼稚園児のおままごとじゃあるまいし、そんなバカな話があるのだろうか。少なくともそういう話は、男子の聞いてないところで話して欲しいと思わなくもない。夢にヒビが入る気分がするというか。
「泥団子って、野球のボールくらい??」
「そのサイズだと、たぶん自重で変形しますね」
僕の知ってる生チョコって、縦横2センチ未満とか、そのくらいの小さな一口サイズのチョコのはずなんだけど。オニギリじゃないんだし、野球のボールみたいなチョコとか、何か間違ってる気がするんだけど。
まあともかく、今年のバレンタインデーは『妹の手作りチョコ』をもらえる事が決まったようだった。去年までは『お母さんといっしょに』というカタチでのチョコをもらっていただけだったし、基本的に店売りラッピングのチョコだった。だから手作り、というのに少しだけ期待感があったりする。
僕も4月からは6年生なわけだし、ちょっと女の子や、年上のお姉さんが気になっている年頃でもある。『女の子からのプレゼント』というのに夢を抱きつつある年頃でもあるのだ。妹からのチョコだとしても、お母さんのチョコよりもレベルが上に位置しているような気分になる。少なくとも、お母さんからのチョコしかもらえないクラスの友達よりも、少しだけいい気分になれる事だろう。あと単純に、チョコは好きだしね。
「ちなみに雪ちゃん、クラスの男子とかには配るの??」
「それはしません。相談次第で友チョコは検討しますが」
そうなんだ……気になる男子がいない、という事なんだろうか。ちょっと安心したような気もするけれど、雪奈だったらホワイトデーのお返しを期待して小さなチョコをクラス全員の男子に……という事も考えられたのだけれど。
「そうなんだ。義理も友チョコも無しって事??」
「立場上、ちょっとマズいと思うんですよね。ワタシが実行すると、変な方向で流行る可能性もありますし。高学年くらいならアリかもしれませんが、まだ低学年ですので」
どうやら、クラスでの立ち位置から自重する、という理由のようだった。
雪奈はクラスのまとめ役(学級委員ではない)というか相談役みたいな立場みたいだし、やるならやるで、クラス内女子の間での相談などが必要なのかも知れなかった。ちなみに僕らの学校では、基本的に『お菓子の持ち込みは禁止』なのだけれど、バレンタインのチョコは先生に見つからないようにすれば、見逃されるような雰囲気がある。
「でも高学年になったら、クラス全員の男子に手作りチョコをバラまいてみたいです。投資に対してリターンがどのくらい返ってくるのか、とても楽しみです」
「おおおー……あたしも、来年やってみようかな……」
将来的には、何やら悪だくみめいた計画を立てているようだった。
「ラッピング含めて1個50円くらいの手作りトリュフをクラスの男子20人くらいに配ったとします。1000円くらいなら出せますし、場合によっては、お父さんに出してもらえるかも知れません。チョコの原料もラッピング材も、ワタシとシェアすればムダも減るでしょうし」
「うまくすれば、元手がタダって事かな」
春奈。【 元手 】って言った??
「男子のお返しクッキーが店売りのチョコやクッキーで帰って来たとして、1人あたり300円から500円のクッキーが返ってくるんじゃないかと思います。値段で比較すれば6倍から10倍のリターンです。向こう1カ月の間は、オヤツに困る事はありませんよ……そのための練習として、見た目のいい手作りチョコを作る練習をいたしましょう」
「それいいね!!すばらしい計画だよ!!」
いいのかなぁ、それって。
でもまぁ、プレゼントって値段じゃないし。原価とか知らなきゃ関係ないのかも。
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「そういえばさ、雪ちゃん」
「なんですか、お姉ちゃん」
「『恵方巻』って、昔は関西のどこかの地方だけの風習だったんだって」
「らしいですね。クリスマスといっしょで、企業が流行らせたイベントのようですね」
「まあ、おいしい事はいい事だよね」
「大人が【 1月は正月で酒が飲めるぞ 】というのと同じ事ですかね。都合のいい理由で御馳走が食べられるのは良い事ですよ」
だよねー。お兄ちゃんの誕生日にもバンザイ!!
などと。楽しそうに、おいしい食べ物の話をする妹たちだった。
その後、雪奈が手拍子をしながら【 一年いつでも酒が飲める歌 】を歌っていたけれど。もう完全に2月イベントとは関係ない感じの歌だったと思う。節分って、大人がお酒を飲むような行事じゃなかったと思うんだけどなぁ……豆まいて豆を食べるだけだよね??
結局、お祭り騒ぎができれば老若男女みんな、なんでもいいのかも知れない。そういう感じな気がする。バレンタインデーとか誕生日も、似たようなものなのかなぁ、と。そんな気分になった僕なのだった。
福はーうち!!鬼はーそと!!(フライング)
心の鬼を追い出していきたいと思う筆者です。
とりあえず時事ネタを間に合わせるようにダッシュで投稿しておきます。
今後ともよろしく。ゆるーい感じで。




