01 僕の妹は転生者かもしれない
つい出来心で書いてみました。気が向いたときに追加していくスタイルでやっていこうかと思います。
僕には2人の妹がいる。
上の妹は『春奈』といい、一つ下の小学4年生。昔からそうだったけど、今では年相応に生意気になってきて、事ある毎に「お兄ちゃんはまだまだ子供っぽいなあ」などと言ったりする。とはいっても兄妹仲が悪いという訳でもない。自慢の可愛い妹だ。
もう一人の妹は『雪奈』。小学2年生だ。この子は春奈と別の意味で生意気……というか、変に大人びている。何年か前、雪奈が父さんにこう言った事があった。
『わたしはしょうらい、おにいちゃんのおよめさんになりますか?』
『ははは。お兄ちゃんの事が好きかい?お嫁さんになりたいのかな?』
『ああいえ、そういういみではなく。そのためにいるのかと、おもいまして』
『……どういう事かな?』
『およめさんにするために、もらってきた、といういみです。そんざいりゆうです』
『――大樹!!ちょっと来なさい!!雪奈に何を言ったんだ!!』
もちろん僕は雪奈に、そういった事など言っていない。完全に冤罪だ。それを理解してもらうのに随分と時間がかかった。雪奈がときどき『お兄ちゃんは悪くないです』と言っては僕の方をチラリと見たりするので、僕が雪奈に暴力をふるっている可能性まで疑われたくらいだ。
その後は春奈が乱入してきて大騒ぎになり、最終的には雪奈の体にアザなどができていないか調べたりして、どうにかこうにか信用してもらえた。
雪奈関係では、ときどきこうした『風評被害』なるものを受ける事がある。ちなみに『風評被害』とは、事実無根のウワサ等によって受ける冤罪被害のようなもの。実際に自分が受ける事となると、その大変さが良く分かる。
――家族の中で、雪奈だけは血のつながりが無い。雪奈は養女だ。
『ようじょで、ようじょ。ぷふっ』
などと雪奈が一人でクスクス笑っていたのは、いつの事だったか。
『おとうさん。わたしはようじょでしょうか。いえ、ちいさなおんなのこ、といういみではなく、かぞくせきにはいっているかどうか、といういみです。それともいちじあずかりですか?』
『……誰から言われたのか、あとで聞かせて欲しいな』
『ようじょですか?』
『……そうだよ。ちゃんと手続きは取ってある。雪奈は、うちの娘だよ』
『それをきいて、ひとあんしんです』
こんな会話があった後、だったと思う。本人はニコニコ笑っていたのだけれど、父さん母さん、春奈も雪奈を抱きしめて、いっしょになって泣いていた。僕だけ混ざりそこなった。
雪奈は頭がいい。そしてあまり怒らない。雪奈が小学1年生の時の事。
『雪奈ちゃん。今日の学校はどうだったかな?』
『たいへんおもしろかったです』
『そりゃ良かった。何があったかな?』
『おちつきのないこに、【ガイジン】といわれました』
『……ちょっと、詳しく教えて?』
『たしか、きむらくん、というこです。「ガイジン!えいごいえよ!!」といわれました』
『……学校の連絡先、確かアドレスに入れておいたな』
『だから「きたいさせてわるいけど、おねえさんは、にほんうまれのにほんそだちだから、えいごしゃべれないのよ。ごめんね、ボクちゃん」といっておきました』
『……同じクラスの子だよね?……嫌な気分にならなかったの?』
『まあしょせんはようじですから、なにをいってもかわいいものです』
『同じクラスの子だよね?本当に大丈夫だった?』
『ぼうりょくをふるわれたわけではありません。じつりょくこうしであれば、こちらにぶがあります。いざとなればちからにものをいわせるだけです。それで、すこしはひるんだきむらくんでしたが、しつこくくいさがってきたので……』
『どうしたの?』
『ふるいえいがのせりふを、まねてみました』
『どんなセリフ?』
『Fuck You』
『その言葉、もう言っちゃダメ。それと何かあったら、まず先生に相談しようね』
『わかりました』
『その指を立てるゼスチャーもダメだからね?』
『わかりました』
雪奈はくすんだ金髪と青い目をした、いわゆるハーフだ。肌も僕らより白い。見た目は完全に外国の女の子なんだけど、赤ちゃんの頃からずっと僕の妹をやっている。簡単な英語の勉強は始めているけれど、当然ながら英会話なんてできない。
きむらくん……木村くん?雪奈にちょっかいをかけるようなら、少し注意してやらないといけないな、と思っていたら、翌日には春奈が教室へ乱入していた。「きむらって奴はどこだー!!」と、教室に入るなり叫んだらしい。すぐに先生に捕まったみたいだけど。
その日の家での会話は、当然ながらその事件が話題になった。
『おねえちゃん、あまりむちゃしないでください』
『だって……雪ちゃんいじめる男子は許せないよ』
『いじめられてません。だいじょうぶです』
『いじめられたら、すぐに教えるのよ!!』
『わかりました。そういえば』
『どうしたの』
『きむらくんに、デブっていわれました』
『ぶん殴ってやる!!』
『まあまあ、こどものいうことですから。ぽっちゃりしてるのはじじつです』
『でも悪口だよ!!』
『わたしはきにしていません。キャラがたってていいじゃないですか』
『雪ちゃんは心が広いなあ……』
確かに雪奈は、ちょっとぽっちゃりしている。血筋のせいもあると思うけど、普段からたくさん食べているから、だと思う。お菓子はそれほど食べてないけれど、朝の食事も夜の食事もたくさん食べる。聞いたところでは、給食もおかわりできる分はしているらしい。
『おいしいものが、いっぱいたべられる。しあわせなことです』
『雪ちゃん、食べるの好きだもんね』
『いっぱいたべて、おおきくなります』
『これも食べる?』
『おねえちゃん、ピーマンはじぶんでたべてください』
雪奈は香りの強い一部の香辛料や野菜以外、ほぼ好き嫌いが無い。ピーマンもニンジンも、食べるのを嫌がったところは見た事が無い。好き嫌いが少ないからなんでもよく食べる。そのせいもあって、ぽっちゃり体形になっている。納得だ。
いつもニコニコして食べて、遊んで、ぼけーっとしていたりする。そんな雪奈が、少ししょんぼりしている日があった。
『きょうはすこし、しっぱいしました』
『何かあったの?雪奈ちゃん』
『きむらくんが、ほけんしつにはこばれました』
『何かあったの?』
『やすみじかんに、きむらくんがヒーローごっこをはじめたのです』
『うん。それで?』
『おまえ、かいじんやれよ!!って、いってきました』
『木村くんの御両親と話をする必要があるかな』
『かいじんにはロマンがあります。よろこんでひきうけたのですが』
『あ、そうなんだ』
『きむらくんが「おまえはメガトンかいじんデブゴロンだ!!」とせんげんしました』
『春奈、ちょっと木村くんの写真を撮ってきなさい』
『なかなかよいネーミングセンスだとおもいました』
『感心したの?!』
『メガトン、というたんごには、ゆめがあります。デブゴロンというのもなかなか』
『そこは許しちゃいけないと思うな、お父さんは』
『いろいろとばして、ヒーローとのたいけつシーンになったのですが』
『まあ、子供のごっこ遊びだしな』
『まずはヒーローがピンチになるのがシナリオのおうどうです』
『ふんふん』
『デブゴロンがひっさつわざをくりだします。「くらえ!!メガトンチャージ!!」』
『強そうな技名だな。お父さんは気に入ったぞ』
『デブゴロンのメガトンチャージがヒーローにクリーンヒット。ヒーローはたおれます』
『ふんふん』
『きむらくんは、のうしんとうをおこして、おきあがれませんでした』
『ヒーロー交代の流れかな?』
雪奈はクラスの中でも体が大きい方で、さらにぽっちゃり体型のせいもあるのか、肉弾戦では強いらしかった。雪奈はヒーローごっこにリアリティーを出そうとして適度に実戦的にロールプレイしたようだが、手加減を間違えたらしい。雪奈の体当たりで吹っ飛ばされた木村くんは、そのまま起き上がれなくなったという事だった。
その後、担任の先生を巻き込んでの騒ぎになったみたいだけど、クラスの女子が全員、雪奈の味方になって、口をそろえて「きむらがわるい!!」と言い、男子からも木村くんの悪ふざけで飛び蹴りとかされていた子が先生に言いつけた事で、雪奈は無罪、むしろ木村くんが先生にお説教される事になったのだという。
後日、先生から連絡がきたけれど、「お嬢さんは体格が良いので力加減には注意するように言っておいてください」という内容だった。
『きむらくんが、てんこうするようです。おとうさんのしごとのつごうで』
『あの木村くんか』
『はい。さいきんクラスないカーストのちいをおとしていた、きむらくんです』
『小学1年生でも、すでにあるのか……』
『わたしはじょういにつけています。もんだいありません』
『クラスの雰囲気はともかく、安心したよ』
『きむらくんがいなくなる、そうおもうと、すこしさみしいです』
『嫌いじゃなかったの?』
『きむらくんがてをだす、わたしがかるくひねる。にっかのようになっていました』
『木村くんの学習能力が心配になるな』
そして木村君は転校していった、らしい。お別れ会がクラスで行われたみたいだけど、雪奈いわく「かたちだけのものだった」との事。次の学校では健全な人間関係を築けるよう、少しだけ祈っておこうと思う。
そんな僕の妹、雪奈ももう、小学2年生になった。
今日もたくさんご飯を食べて、元気に学校へ通っている。相変わらずの大人びた喋りはそのままだ。健康そのものだし、勉強もできる。周りの大人は『賢い子供だ』と言うが、僕は一つの疑いを持って妹を見ている。
もちろん雪奈は可愛い妹で、大切に思っている。しかし、それでも――少しだけ、気になって、注意して見てしまう。
雪奈は――妹は、転生者かもしれない、と。
転生者もの、という括りでまた書いてみたくなった(ちょっとだけ)ので、時々たまに投稿していく感じで書いてみました。こっちはもう一つの方の息抜きでやってるみたいなものなので、更新頻度はおざなりです。気が向いた時でいいので読んでいただけると幸いです。
本当は恋愛ものを書いてみたい!!と思ったのですが(恋愛ジャンルに登録できる作品を書いてみたい!!という野望)、筆者の能力では無理だと判断したので(書ける作家さん本当にスゴイわぁ)、適当なホームドラマ調な日常ものっぽい何か、という事で。
ゆっる――――い感じでやっていきたいと思います。厳しい設定などは何かの間違いです。軽く流して頂けると幸いです。この作風が読者様の肌に合えば良いのですが。
とりあえず一区切り3話を書けたので、まとめ投稿です。以降は未定となっております。