ちょっと寄ってこうか
「それにしてもさ、カズっちの家って豪邸だよね」
「ただゴツイだけやわ、こんなもん」
「それを豪邸って言うの。いいなぁ豊かな生活」
「金持っているだけが豊かなワケちゃうぞ」
「あたしもこんな家に住みたいよ」
「ちゃんと話聞いてたんか?」
「うん、お金持ちなんだよねー」
「はあ……」
現在コンビニからの帰り。
俺の家はちょうど紫苑の家とコンビニの中間地点なのだ。
で、紫苑がついでに俺の家に寄りたいと言いだした……。
「しかしなぁ……。兄貴がおるし、やっぱ止めにせえへん?」
「えー!?何でなのよ?晴れて恋人同士になったから問題ないじゃない」
「それはその……。ああもう、分かった勝手にせえ!」
「照れ屋さんなんだから」
すっと伸ばしてきた人さし指で鼻をツンとされた。
瞬間、腰から背中にかけて少し震えあがった。
何だこのゾクッとする妙な感覚は?
「いいねぇ、その反応」
「やっぱお前はSやな」
「じゃあ、カズっちはM?」
「俺は普通や。お前が異常なだけ」
「なんかカズっちを見てると嗜虐心が湧いてくる時があるのよねぇ」
「なんやそれ?俺そんな体質なんか?」
「きっと好きな人は苛めたくなるものなのだよ」
嬉しいような悲しいような。
「ただいま」
「ああ、おかえ……り?」
兄貴の視線が俺の後ろの紫苑に定まった。
まあ、そりゃそうだよな。
「夜分遅くにお邪魔します」
紫苑のスキル、礼儀正しい優等生マスク発動。
「一也、その子は?」
「お、おおぅ。こいつはやな……。そう!俺のクラスメ……」
「一也君の恋人の一之瀬紫苑です。どうぞお見知りおきを」
はあ……。もうどうにでもなってくれ……。
「こちらこそよろしくね。ところで一也」
「ん?」
「その顔の傷はどうしたの?」
「ちょっと騒動に巻き込まれてな」
「騒動……ね」
兄貴は俺と紫苑を交互に見る。
まあ、なんとなく感づいているだろうな。
「あの……。お兄さんのお名前は?」
「そういえば名乗ってなかったね。秀一です」
「なあ、早く傷の手当てしたいんやけど」
「ああ、ごめんごめん。じゃあ、部屋に戻るから」
そう言って2階の自室へと向かっていく。
が、途中で振り向いた。
「きちんと高校生らしい付き合いにしときなよ?」
「じゃかましいわドアホ!」
「はっはっは」
今度こそ2階へと登っていった。
「さて、カズっちの部屋はどこなの?」
「救急箱は居間ん中やわ」
「なんだつまんないなぁ。まあさっさと手当てしよっか」
「じゃあね。カズっち」
「ホントに送ってかんでええんか?」
「いいよ。その代わり……」
ニヤリと笑って紫苑は顔を近づけてきた。
ちゅっ
「バイバイのキスって一度やってみたかったのよねぇ」
「〜〜〜〜」
「ふふ。またね、カズっち」
俺は口に手を当ててそっぽ向くしかできなかった。
次第に紫苑の姿が見えなくなっていく。
一応、後でメールしとくかな。
家の中に戻ると兄貴が立っていた。
「なんか用?」
「一也、わかっているのかい?」
「何が?」
「……いや、何でもない」
「そうか。なら俺は部屋に戻るわ」
「ああ」
2階にある自分の部屋を開けると少し暑かった。
クーラーをつけると俺はベッドに寝っ転がる。
「あ、そういやポテチどっかに置き忘れたな」
まあ、あんなことあったしな。
ポテチ片手に抱きしめあうとかムードも台無しだな。
『一也、わかっているのかい?』
ふと、兄貴の言葉が脳裏をよぎった。
「そんなこと、いちいち言わなくても分かっているさ」
久々の更新。最近忙しくて忙しくて。
暇を見つけては更新します。




