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少し曇った空の下。

ここ数日の暑さと打って変わって頬をかすめ吹く風は涼しい。

ようやく秋の訪れを感じながら、俺はあいつを待っていた。


時刻は10時29分。

そろそろやってくるだろう。



「やぁ、カズっち。待った?」


「……今来たとこ」


「おぅ。いいねぇそのセリフ。なんか恋人っぽいよ」



何が恋人っぽいだ。

自分からそうしろと言ってきたくせに。


そもそも俺たちが待ち合わせをしたのはこういうワケなのだ。



…………

………

……



『もしもし、カズっち。明日デートしようか?』


「変なもんでも食ったんか?」


『失礼ねー。せっかく少しの間だけ恋人になるんだから、物は試しってやつよ』


「そうでっか……。で、何するん?」


『何だかんだ言ってノリノリだねぇ♪』


「(-_-メ)」


『あれ?そんな怒った顔しないでよ』



何でわかったのだろうか?

もしや部屋に隠しカメラでも仕掛けられているのか!?

気になるから念のため後で探しとこう。



『じゃあ明日駅前に10時30分に集合』


「え?おい……」


『一応デートなんだから恋人っぽくねー』


「いや、だから……」


『じゃあねー』



プツン………ツーツーツー



あいつめ、一方的に切りやがった。



…………

………

……



というワケだった。

せっかく試験明けの休みだったのに何故こんな目に。



「今日は冬服を買うから、頑張ってね」


「はあ?まだ秋なんやけど?」


「甘いねぇカズっち。女の子の服はそのシーズンの前に店に並ぶの」


「女って面倒やな」


「そうなんだよねぇ。お洒落に気を使うワケよ。ところで、いつになったらこの格好を褒めてもらえるのかなぁ?」



モデルの人みたいにクルッと体を翻して見せつけてきた。

制服でも充分なのに、私服が更に紫苑の魅力を引き立てる。

なんだか恥ずかしくなって、そっぽ向いたまま答えた。



「ま、まあまあちゃうか?」


「ほほぅ、そっかそっか♪」



ご満悦の様子だった。

どうやら彼女には内心がバレバレらしい。











「う〜ん。これもいいなぁ。しかし、こっちも捨てがたい!」


「両方買えばええやん」


「そんなことしたらお金なくなっちゃうでしょ」


「じゃあ、はよ1つに絞れ」


「それができないから困ってるんだよねぇ。カズっちはどっちがいい?」


「俺に訊いても意味あらへんやろ」



その言葉に顔がニヤッとなった。

俺、何か変なこと言ったか?


すると紫苑は急接近してきた。

甘い匂いが鼻をくすぐったかと思うと、顔を耳に近付けて



「そんなことないよ?全てカズっちの為に選んでいるんだから」



そんなセリフを囁いた。

言葉と香りが頭を揺らしてくる。



「だぁ〜っ!!さっさと服選ばんかいっ!!」


「あっはははは!やっぱ面白いよ、カズっち。くっくっく………」


「ぐぬぬぬ……」



少しドキッとさせられたのが悔しい。



「ごめんごめん。後でカフェ行くから何か奢ってあげよう。だから落ち着きなさい」


「なんか偉そうな言い方やな」


「あれ?奢ってほしくないの?」


「しゃーないな。許したるわ」


「なんか偉そうだねぇ。まあ、とにかくどっちの服か決めよっか。どっちが良い?」


「結局俺に訊くんかい」


「いいじゃない別に。それにホラ、こうしたほうが恋人っぽいじゃない?」


「はあ……。またそれか」


「ふぅん。やっぱり奢るの止めにしよかな」


「そうやなぁ。俺的には右手に持ってるやつのがええかな」


「カズっちって結構現金だよねぇ」


「人の厚意には甘えやんとな」


「はいはい。とにかくこっちがいいんだね?じゃあこれを買おう」


「え?そんなに簡単に決めんの?」


「あたしが2つに絞って、しかもカズっちがとどめに決めた服だよ?OKに決まってるじゃん」



俺が選んだほうを買うのか。

なんというか、ホントはこういう何気ないところを恋人っぽいと思うんだよな。

それなのにあいつときたら……。


まあ、楽しそうだからいいんだけどさ。











「いやぁ、久々に良い買い物したねぇ」


「俺はクタクタ。どっからそんなエネルギーが出てくるんか分からんわ」


「買い物は女の子の活力なんだよ?もうちょっと勉強しなさい」


「中間テストで俺に負けたのは誰やったかいな」


「む……」


「あんな大口叩いとったのになぁ」



パコンッ!



「いった!パコンって鳴ったがな」


「このトンチンカンめ!」


「はあ?」


「もういいや、この話は終わり」



まったく変な奴だ。


それにしても少し寒いな。

この前までは暑かったのに、地球はどうなっているのだろうか。



「どうしたのカズっち?寒い?」


「ん?別に大したことあらへんよ」


「ふぅん………。えいっ!」


「な……」



こともあろうか急に腕に抱きついてきた紫苑。

そんな密着したら……。

こいつは自分のスタイルの良さを分かっているのか?



「へっくし!」


「あ、くしゃみした。やっぱ寒いんでしょ?」


「まあ、少し」


「こうしてると暖かいねぇ」



そう言って顔を腕にスリスリしてきた。

その仕草はまるで猫みたいだ。


なんだろう?すこしドキドキしてきたぞ。



「なあ、歩きにくいんやけど」


「こんな美少女に抱かれて何を贅沢なことおっしゃいますか」


「自分で美少女とおっしゃいますか」



まあ、美少女なんだけどな。



「別にいいじゃん。このほうが恋人っぽいでしょ?」



また………それか。


さっきまでドキドキしていた心が一気に冷めていくような気がする。



「なあ。もう止めにせえへんか?そういうの」


「うん?」


「事あるたびに『恋人っぽい』とか」


「あれぇ?そんなに恥ずかしかったのかなぁ?」



全然わかっていなかった。

ここまで言っても通じないなら仕方ないな。


ちょっと力をいれて紫苑の腕を振りほどいた。

彼女は、どうしたの?って目で俺を見る。



「そういう『恋人っぽい』って全然お前らしくねえな」


「え?」


「嫌なんだよ。こんな中身のない空っぽな感じが」


「カズっち?」


「今のお前と居ても全然楽しくない」


「……………」


「今日で別れよう。3日として続かねえよ。じゃあな」


「あ……」



踵を返して俺はさっさと紫苑から離れた。






どうやらあいつも追ってはこないようだ。

俺の後ろには人っ子一人いない。

まあ、駅から離れて住宅街だし、もう夜だしな。



「ふう。恋人っぽく……か。何だよそれ」



あいつが何を考えているのか分からない。

あいつの本心が分からない。



ふと足を止めて見上げた空は雲で覆われて星ひとつ見えなかった。



「教えてくれよ、紫苑。あの雲の向こうで星はどんな風に輝いている?」



テストが迫っているので更新が著しく遅れるかもしれない模様。



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