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勝負

「違う違う。いいか一也、as long as と as far as は訳が同じ『〜する限りでは』だが、意味は違うんだ」


「はあ?そんなら、どないして見分けろと?」


「as long as は if または while に置き換えられるんだ。だからこの場合は………」


「なるほどなぁ」


「流石は裕樹さんですね」



──放課後。


打倒紫苑のために俺は裕樹に文系教科を、千堂に理系教科を教わっていた。

この2人はそれぞれ文系、理系に特化している。

個々では紫苑に太刀打ちできないが、2人の力を合わせれば勝てるかもしれない。


そう踏んだ俺は協力を求めてコーチしてもらっている。

まあ、2人合わせて紫苑に勝てるかもと言えど、実際勝負するのは俺。


俺の点数は紫苑より数段落ちるバランス型だ。

だから、この埋めれないところを上手くカバーできれば勝機はある。


で、今は裕樹に英語を教えてもらっているのだが。

何故か千堂も一緒にしているという状況。



「ちゅうかね?千堂、お前は頭ええやないか!なんで一緒に……」


「英語の点は微妙なんですよ。私、理系ですから」


「まあ、いいじゃないか一也。里佳さんがいれば俺も頑張って教えられるしな」


「はいはい、そうでっか」


「おおぅ。頑張ってるねぇカズっち」


「む……」


「そんなにあたしと付き合いたいのかなー?」



背後からいきなり現れた宿敵。

うっすら笑って挑発的な言葉を投げかけてくる。

まあ、単に俺のことをからかっているだけで悪意は無いみたいだが。



「んなわけあるかいっ!お前に負けたくないで頑張ってんねん」


「あっそ。ま、無理しない程度にねー」



そう言って自分の席に向かっていった。



「……………」


「里佳さん、どうかした?」


「……え?あ、いえ!なんでもないです」


「そう?なんか紫苑さんのほうをボーっと見てたけど」


「何と言いますか、きっと私の思い過ごしですよ。そんなことより次はあたしが一也さんに教える番ですね」


「え?休憩せんの?」


「何言ってるんですか?そんなんじゃ紫苑さんに勝てませんよ?」



おい、裕樹よ。

なんだかお前の将来が心配になってきたぞ。

鬼嫁って感じにはならないと思うが、なかなか厳しい奥さんになるんじゃないのか?

ま、せいぜい頑張ってくれ。



「じゃあ、微分からいきましょうか」


「へいへい……」


「あ、言っておきますけど生物は教えれませんからね」



ああ、そっか。


千堂が履修しているのは物理と化学だけ。

ってことはどうすれば!?



「裕樹も確か生物やったよな?」


「残念ながら、生物は苦手ではないが今回の範囲のDNAに関しては苦手だ」


「自力でやれってことかいな……」



前途多難である。











──中間テスト当日。


この1週間でかなりの勉強をしてきたつもりだ。

勝てるかどうかは別として、今までよりも最高の結果をだせる自信はある。



「待ってろよ、紫苑。絶対に勝ったるでな!」



朝から気合は十分だ。

いつもの俺とはまるで別人のようだった。

なんだかいけそうな気がするって感じ。



ヒソヒソヒソ……



急に小声が耳に入ってきた。


周囲を見渡すと通行人たちが俺を奇異の目で見ていた。

どうやらさっきの独り言の音量が大きすぎたらしい。

もう少しテンションを下げるべきだった。


朝から変態扱いされて士気が著しく低下した。

なるべく視線を下に落として早足で学校に向かうことにする。






「はあ?紫苑が休みぃ!?」


「はい。今朝にメールがきて今日は学校休むって」


「あいつ風邪でも引いたんか?」


「頭痛がするらしいですよ」



なんだか肩透かしを食らった気分だった。



「まったく……。勝負をふっかけた本人が休みってどういうことやねん」


「……………」


「ん?どうした千堂」


「いえ………」


「おはよう一也、里佳さん。2人ともテストどうだ?」



急に裕樹が現れた。



「おはようさん。それがやな……」


「紫苑さんが頭痛で休みなんですよ」


「は?それじゃあ勝負はどうするんだ?」


「まだ、追試があるやろ」


「追試の難易度は高いぞ。まさか紫苑さん、ハンデくれたんじゃないのか?」


「それはそれでムカつくんやけどな」



結局、紫苑がいないままテストを受けた。

今までで一番手ごたえを感じたはずなのに、気分はずっと微妙なままだった。


しかしその後日、紫苑はきちんと追試を受けた。

あいつが言うには



『うたた寝しててそのまま一晩過ぎちゃったんだよねぇ』



ということらしい。

勉強してそのまま布団も被らずに眠って体調を崩したらしい。

最近は気温がよく変わるからな。


そして今、テストがほとんど返ってきたワケなのだが。

現在の得点は紫苑が5点だけ勝っている。


残りは国語だけだ。

あれはその場で答えを探さないといけないので点を取るのが難しい。

逆に言えば、勝てる可能性も無きにしもあらず。



「一之瀬」


「はい」



紫苑が呼ばれてテストを受け取りにいく。

彼女は先生に用紙をもらって点を見ても顔色1つ変えない。

その表情からは点の良し悪しを判断できなかった。



「で、何点やったんや?」


「それは同時に見せ合おうよ」


「中学生か、お前は」



とは言うものの、内心では少しホッとしている。

これで100点なんて見せつけられたらどうしようかと思った。



「大原」


「はい」



先生からテストを受け取る。

さて、いったい何点取れたのだろうか?

そーっと点数をみてみた。



『91点』



微妙な点数だった。

いつもの俺なら泣いて喜ぶ点数だが、今回は事情が違う。

この点で紫苑に勝てるのか?


単純に紫苑が86点未満じゃないと勝てない計算だ。



「よぅし。じゃあ行くぞカズっち」


「お、おう」


「せーの、ほい!」



そこに書かれていた点数は………





82点だった。



「ありゃ?負けちゃった」


「俺が……勝ったんか?」


「凄いじゃないか一也!おめでとう!」


「……………」


「一也?」


「ふ……ふふっ」


「お、おい?どうした?」


「なっははははは!」



腹の底から何かがこみ上げてきて、声になる。

もう、止まらなかった。



「あー。壊れちゃったねぇ」


「よっぽど嬉しかったんですね」


「にしてもすごい高笑いだな」


「紫苑さんは悔しくないんですか?」


「ま、ちょっとね」



そんな会話も俺の耳には入ってこない。

周りの目を気にせず俺は笑っていた。



バシンッ!!



「あだっ!何なんや人が喜びに浸ってるっちゅうのに」


「あんたは笑いすぎなのよ!ちょっとムカついてきた」


「ふっふっふ。まあ、勝利に免じて許したるわ」


「あっそ。ところで約束覚えてる?」


「約束?なんやっけ?」


「あんたが勝ったらあたしが彼女になるって話」


「はあ?あれ本気やったんか?」


「本気じゃないんだけど、自分で言ったからには果たさないと気が済まないのよねぇ」


「いや、しかしやな……」


「別に深く考えなくてもいいよ?ほんの3日ぐらいだけで終わるつもりだからねー」



紫苑と付き合う……か。

別に紫苑は嫌いじゃないが、そういう関係になるのは躊躇(ためら)いがある………。


しかし、彼女が欲しいと思ってないワケでもない。

カップルを傍から見ていて羨ましいと思うときもある。


紫苑も深く考えなくてもいいと言っている。




俺はその甘い誘惑に乗ることにした。



「わかった」


「ふぅん。結局誘いに応じるんだ?」



お得意のSっ気あふれる物言いだった。



「男なら約束は守らんとな」


「ふふ。じゃあ、よろしくね」



こうして微妙な関係が成立した。


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