ささやかな想い
「ねえ、カズっち。ホントに良かったの?」
「何が?」
「修業の話」
「何回同じこと言わせるんだよ?お前と一緒にいたいんだ、俺は」
「もう1回言って?」
「もう言わない」
「何でよ?いいじゃない言ってくれたって」
「…………」
ホントは何回でも言ってやりたいが恥ずかしくなってきた。
俺は修業の話を断ってクルールのコックになった。
当然ながら断るとき高級レストランのオーナーはどうして?と訊いてきた。
俺は、恋人と過ごしている時が一番幸せだからと答えた。
この選択したことに後悔はしていない。
「ねえ。もう1回遊園地に行かない?」
「一昨日に行ったばかりだろ」
「今度は純粋に楽しみたいのよ」
「金が無いんですけど」
「愛があればなんとかなるわよ」
「愛があってもなんともならないだろ」
「仕方ないわね。じゃあ初任給がでたら連れてってね?」
「そんなにあの遊園地が好きなのか?」
「うん。だってあそこに行ってなかったら、もしかしたら……」
紫苑は急に切ない顔をした。
俺はそっと抱き寄せた。
「俺はずっとお前の傍にいるよ」
「うん。ちゃんとカズっちの温もりを感じてる」
「俺も紫苑の温もりを感じてる。あと柔らかさも」
「エッチ」
「お前だけにならそれもいいかもな」
「時々恥ずかしいこと言うよね、カズっちは」
「本音なんだから仕方ないだろ」
「……バカ」
この声、この温もりがあるだけで幸せだ。
これが後悔していない理由。
夢を追うのも、富を得るのも、勝負に勝つのも良いかもしれない。
でも、それが幸せでないならきっと虚しいだけだろう。
だからきっと間違っていない。
俺は今、こんなにも満たされている。
「……お前を選んで良かった」
「ん?何か言った?」
「いや、別に」
「絶対に何か言った!」
「何も言ってねえってば!」
紫苑、俺はお前をずっと愛していくよ。
それが俺の幸せだから。
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