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緊急措置

「ふぅん。それで家を飛びだしてきたってワケね」


「ああ」



当てもない俺は紫苑のところにやってきた。

一人暮らしをしているのでなんとか泊めてもらえるよう説得中。



「まあ、部屋は余っているけどさ。近々お姉ちゃんが遊びにくるのよねぇ」


「ってことは無理?」


「いや、問題はそこじゃなくって……。ほら、言ってみればこれって同棲になるじゃない?」


「なっ」



そうか。何も考えずに来てしまったが、これってまんま同棲じゃないか。

それはちょっと、いやかなりヤバい気がする。



「こんなとこ見られたら何て言えばいいのかってことになるのよ」


「そ、そうやな」


「ところで、あんた学校はどうすんの?今年分ならまだしも来年は払ってもらえないじゃない」


「……出る際に親父に『お前は退学だ!』と言われたわ」


「はあ?」


「ははは……」


「はははじゃないわよ!……はあ、仕方ないわね。とりあえず今晩は泊りなさい」


「すまんな」


「今後のことはこれから相談ね」











「この部屋は誰も使ってないから」


「おう」


「じゃあ、荷物は置いてリビングに行くわよ」


「え?何かするんか?」


「あんたのこれからについて会議すんのよ!」


「は、はいぃ」



何もそんなに怒らなくたっていいのに……。

やっぱこいつの家に来たのはまずかったなぁ。

まず裕樹に尋ねるべきだったかも。



「ジュースでも入れてくるから適当に座ってなさい」


「へーい」



言われたとおりに適当なソファに座って紫苑を待つ。

それにしてもなんだか落ち着かないなぁ。

どうしてどことなく良い匂いがしてくるんだろうか。

何というかこう、甘い香りというか。



「アップルジュースで良かった?」


「おわぁ!?」


「そんなに驚かなくてもいいじゃないの」


「お、おう。アップルジュースでええけど。しかし、普通こうゆうのって淹れる前に言うもんちゃうか?」


「客の分際でごちゃごちゃ言わない!」


「し、失礼しました」



さっそく一口。

ゴクッと喉を通るアップルジュースはなんとも爽やかだった。



「ふう、なかなか美味いな」


「でしょ?このメーカーのがお気に入りなのよ」


「メーカーで変わるもんなんか?」


「そんなこと言ってちゃ料理人になれないぞー」


「てか、俺が料理人目指すんは決定事項?」


「うん。そして一生あたしにご飯を作る」



それが目的かい。


でも、よくよく考えたら今の言葉ってなんだかプロポーズみたいだな。

そんな気は無いのだろうが、なんとなく嬉しい気持ちになる。

だから俺は紫苑に聞こえないぐらいの小さな声でささやいた。



「ええよ」


「ん?何か言った?」


「いや、何も言うてへんけど?」


「そう?ならいいけど」



いつか堂々と返事できる日が来たら、もう一度言ってやるよ。

今度はちゃんと聞こえるように……。



「では今から、大原一也これからどうすんのよ会議を始めます」


「…………」


「何よそのシラけた目は?」


「いえ、どうぞどうぞ続けてください」



実にセンスのない会議名だった。



「で、ぶっちゃけこれからどうすんの?」


「わからん」


「さっそく行き詰まったわね」


「そやな」


「…………」


「…………」



しばしの沈黙。



「「はあ……」」



ため息もつきたくなるわな。


しかし、ホントにこれからどうすればいいのか。

まさかこのままニート?

社会の底辺に行かなあかんのか……。



「あ、そうだ。とりあえずバイトでも探したらどう?上手くいけば住み込みで働けるし」


「おお、なるほど」


「まあ、住み込みが見つからない時はバイト代のいくらかを納めてもらって家に居させてあげる」


「お姉さんはええんか?」


「仕方ないでしょ。それともあたしを置いて出て行くの?」


「いや、意味わからんから」


「ただし、これから食事を作ってもらうのでよろしくね」


「まあ、それぐらいなら」


「うーん!これからご飯が楽しみ♪」


「そう言えばお前、今まで飯どうしとった?」


「まあ、料理部で焼きそばの練習とかしてたから」


「焼きそばだけ!?」



なんて寂しい食事だ、それは。



「焼きうどんってのもあるわよ。野菜炒めもできるし。あとサラダは売ってるし」


「さようか……」


「まあ、いいじゃん。これからは専属コックが作ってくれるからねぇ」


「そういや、もう飯は食ったんか?」



部屋にある時計は6時を指していた。

もう、夕飯を食べていても別におかしくはない時間である。



「あたしはいつも7時過ぎに食べるから、まだ」


「よっしゃ、じゃあ俺が作ったろ」


「頑張ってねー」


「まかしとき」



こういうのも悪くないかもしれない。


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