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15話:乱入ってあり?

「責任とって僕と結婚しよう! アマラちゃーん!」

「頭沸きすぎだろ!? 帰れ!」


 俺は反射的に手に持っていた粘土板を窓に投げた。

 俺の反撃が予想外だったのか、窓から入り込もうとしてた池谷は顔面に粘土板を受けて外に落ちる。


「きゃーーーー! メイトさま!?」

「あれ、今の声って…………」


 窓の外を覗くと、お付きを大量に引き連れたハイファ姫が尻もちをついた池谷を心配してる。

 なんでいるの? あ、いつもの王宮の使者の横にいるのソムランとザナンじゃん。


「悪い、粘土板割れてない?」

「何故そちらを心配するのですか!」


 褐色美少女なハイファ姫は、窓から身を乗り出す俺を叱りつける。

 宴の時もそうだったけど、どうやらこのお姫さまは、本気で池谷を好きなようだ。何処がいいんだかわからないけど?

 まぁ、そのお蔭で王宮での俺の無礼は許されている。

 まず池谷がケロッとしてたこと、俺を処罰すべきと怒り狂うハイファ姫に呑まれて、王さまが及び腰になってたこともある。けど一番の要因は、ハイファ姫を池谷がこまして黙らせたことだ。

 壁どんからのアゴクイ、微笑みに耳元での囁きのコンボを決めた池谷にノックアウトされてた。

 正直、チョロすぎてハイファ姫の将来が心配になるレベルだ。

 「顔がイイ…………」とかメロメロ状態で呟いてた気もする。


「えーと、お姫さまはなんでいらっしゃるんでしょ?」


 質問してみると、何故かその場の顔見知り全員が信じられないように息を呑んだ。王宮の使者までもが…………。

 いや、ザナン! お前は俺が敬語くらい使えること知ってんだろうが! 何空気読んでびっくりしたみたいな反応してんだよ!?


「ふん! 過日のあなたの無礼をこの主人のほうが償う機会を求めたのです。ですから…………不本意ながらあなたを賭けてメイトさまがこの奴隷商と戦うことになりましたの」

「なるほど、わからん!」


 おい、説明しろ!

 説明もなしに覚悟決めた顔で頷くな、ソムラン!

 お前は笑い堪えてんのわかってんだよ、ザナン!


「アマラちゃーん。僕が必ず、このイノブタの魔の手から救ってあげるからねー」

「帰れよ! あと何度も言ってるけど、そいつにもソムランって名前あんの! いい加減覚えてやれ!」


 イノブタでも、悪徳奴隷商でもないから! 誰かその辺りの勘違いは正せる奴いないのかよ!

 って…………なんか、ハイファ姫が俺を睨んでる? いや、観察してるっぽい?

 そんな美少女の見つめられると、恥ずかしいな。


「大人の話し合いで解決しようとしたら、勇者が乱入して、追っかけて来たお姫さまも加わって王さまが投げた」


 粘土板を持ってきてくれたザナンは、そんな投げやりな説明しかしてくれない。


「ま、ともかく賞品さんは一緒に戦奴の修練場行こうぜ」

「賞品とか呼ぶな。そして俺を巻き込むな。なんで王宮でしなかったんだよ?」

「えーと、王宮って公の場だから、あそこで決闘なんてしたら、国の強制力が働く? なんて言うか、結局アマラはソムランさま個人の奴隷で、現状何してもいちゃもんつけて個人の財産を強奪していることにしかならないとかなんとか?」

「遅いと思ったらなんの話してるの? ほら、主役が来ないんじゃ始まらないわよ」

「始めたくなんてないんだよ、リュナシェーラ」


 俺の抗議も聞かずリュナシェーラは引き摺り始める。

 ついでに、ことの成り行きを聞いてみたら、こっちはちゃんと説明してくれた。


「まずね、国王陛下からすれば邪竜を倒せるほどの勇者を手放すのは惜しいのよ。いつ休戦協定が破棄されるかわからないし。けど、勇者さまは娘に見向きもしない。代わりになりそうなアマラは奴隷だから、娘を差しおいて妾にさせるのも娘を思えばしたくない。だからアマラには王宮の外にいてほしいのよ」


 宴で先にやらかしたのは池谷だし、池谷のこれまでの言動から、俺がハイファ姫を庇ったのは王さまにはわかっていたらしい。

 だから俺を処罰するつもりはないけど、大勢の目があるからこのまま黙ってると王さまの権威や勇者の力を甘く見る奴が出てくるかもしれないんだって。


「だから大人の話で落としどころ探りに旦那さまは王宮に呼ばれてたんだけど…………」

「本当に乱入だったぜ。腕力で勇者止められる奴いないし、お姫さまの玉体に触れる奴もいないしな。そのまま池谷が勢いで、決闘してアマラ寄越せと言いやがって、それをお姫さまが承認しちまって」

「なんでお姫さまがそこで勇者援護すんの?」

「聞いた話だと、一般人相手だからと、相当勇者さまに不利な条件を課したそうよ」


 つまり、最初からソムラン勝たせるための決闘てか?

 で、王宮でやらない非公式な決闘だから、勝っても負けてもノーサイド?


「あほか…………。本当に俺を巻き込むなよぉ」

「あら、そこは男に奪い合われる自分の美貌を誇りなさい。そしてそれを腐らせずに磨くことに目覚めてくれれば手伝うわよ?」

「あれだ。お前は野郎を手玉に取る方法でもリュナシェーラに学ぶべきかもな」


 ザナンは他人ごとだな本当に!

 獲物を狙う目をしてるリュナシェーラとは視線を合わせちゃいけないって、俺のこれまでの経験が叫んでる!


 そうして渋々連れて来られた戦奴の修練場は、俺がサッカーもどきの練習したり、ソムランが体鍛える運動したりしてる場所。

 周りを塀に囲まれた、土がむき出しの広場だ。いつもなら雑多に練習用の道具が置いてあるけど、決闘ってことで片づけたんだろう。


「役者は揃いましたね。それでは、これより決闘を行います。武器は同じ重さ、同じ長さの剣を一本ずつ。そしてメイトさまは勇者であるため、制約を課します。これを破れば敗北です」


 池谷に課された制約は、まず善の精霊ジンの力を使わないこと。これで、池谷は魔法を使えなくなるし、身体強化もできなくなった。

 次に、選ばれた勇者が内包すると言う光の剣も使用禁止。なんかいつも何処からか出すなと思ってたら、あの光の剣は池谷の魂に入ってるそうだ。

 さらには空中へ逃れることを禁止。空飛ぶのはマジックアイテムの効果らしいけど、池谷の機動力を殺すためだと思う。


「そして、対戦者である奴隷商ソムランは、己の持ちうる限りの力を使って戦うことを許します」


 うん、それってつまり…………。

 俺と同じように、ハイファ姫の思惑に気づいてソムランが顔を顰めた。


「ハイファ姫、それはさすがに…………」

「お黙りなさい。この決闘はこの私が判定を行う神聖なもの。私に任せると陛下も仰っておいでです。あなたは女奴隷の所有者として、この決闘を受けたのですから、私の決定に異議を唱えるなら、不戦敗となってもおかしくないのですよ」


 なんでソムランまで脅しかけてんだよ。

 そしてお前はなんでこれだけ制約かけられて勝てる気でいるんだよ、池谷?


「アマラちゃん! 僕はこの戦いに勝って、君を妻にするよ!」


 突然の宣言に、ソムランもハイファ姫も絶句する。

 そりゃ、現代だと身分制度なんてないけど、ここバリバリあるからな? 奴隷を正妻にするなんて、正気の沙汰じゃないし後ろ指差される行為だからな?

 嫌だよ、俺。っていうか、お前に散々言って来たよな? なんでまだ理解してないんだよ? しかも勝手に俺を賭けの景品にしやがって。

 あ、すっごい腹立ってきたぞ?


「メ、メイトさま! それは勝ってから改めてお考え直しください! 奴隷を妻にするには少々問題がございますし! この国の流儀というものがございますので!」

「は、そうか! プロポーズはやっぱりムードが必要だよ、ね!」


 俺に向かってウィンクすんじゃねぇよ! そんなこと口に出して言ってる時点で、俺が女でもムードぶち壊しだわ!


「ごほん、ともかく! 両者、条件はわかりましたね? 意義はありますか?」


 さっきソムラン脅して黙らせといて何言ってんだ?

 どうやら了承を取るのが決闘の流儀らしく、さらにハイファ姫は観衆の俺たちにも了承を求めた。


「この決闘に意義のある者は名乗り出なさい! 同じ戦いの場に立って己の主張を打ち立てる勇気があるのなら!」


 結局力尽くで言い聞かせろってか!?

 あれ…………そうか、言い聞かせりゃいいのか。


「おい、アマラ。まさか…………?」


 俺が一人で笑うと、ザナンが声をかけて来た。

 ので、止められる前に俺は塀を越える。


「異議あり!」

「へぇ!? え、なな、なんであなたが!?」


 大して面識のないハイファ姫は、俺の乱入に取り乱して慌てふためく。


「だから、この決闘に異議があるって言ってんだよ。なんで俺が勝手に賞品にされてんだ。だいたいは俺が宴でそこの勇者に無礼を働いたからなんだろ? だったら俺は賞品じゃなくて落とし前つける側だろうが」

「アマラ、だから君の代わりに私が」

「ソムランは黙ってろ。そこまで尻拭いしてもらわなきゃいけないほど、俺だって子供じゃねぇんだよ」


 言い切るとソムランは何故か片手で頬を押さえて恥じらうようなポーズを取る。

 こいつもこいつでツボがわかんねぇな。

 池谷は池谷でやっぱり俺の胸見て鼻の下伸ばしてた。

 こいつは今のところ口を挟まないなら無視だ。


「対戦者は己の持ちうる限りの力で戦っていいんだろ? どうなんだ、お姫さま?」

「そ、そうですけれど」

「じゃ、決まりだ! 俺は俺のためにお前らと戦って、自分の落とし前をつけてやる。おい、勇者。今日こそてめぇの心得違いを正してやる!」

「そんなアマラちゃん! 僕たちが戦う必要なんてないんだよ?」


 胸からようやく目を放して言うのがそれかよ。

 お前は絶対負かす! そしてついでに俺のちょっとした企みをここで果たさせてもらうぜ!


「だいたいお前は最初からおかしいんだよ! 何が妻だ!? まずは俺を惚れさせてから言いやがれ! 俺の気持ち無視してる時点で、俺からすればお前も奴隷を売り買いする奴らも何も違わねぇんだよ!」


 指を突きつけて宣言すると、池谷はようやく考え込む姿勢をみせる。っていうか、目をパチクリさせるな! お前自分の行動一回反省しろ!


「で、ソムラン。お前も敵な」

「な、何故だアマラ!?」

「お前に勝ったら一個俺の願いを叶えてくれ。俺が負けたらソムランのお願い聞くから」

「え…………い、いいのか?」

「なんか不穏な間があったけど、ま、俺ができることならね。そうそう、ついでに勇者も俺に負けたら一個言うこと聞けよ」


 よーし、ソムランもやる気になったところで、決闘と行きましょうか?

 俺は戦奴が急いで用意した剣を握って、ソムランと池谷に不敵に笑って見せた。


隔日更新、全十七話予定

次回:勝ちは勝ちだろ?

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