私の経緯〜クレアの場合〜
やっと始まり。
私が私たち3人が転生したのはテイルトートって世界らしい。それを知ったのは成長してからなんだけど。
ごく一般的なファンタジー世界で、世界には魔族と人間族がいて、2つの種族は世界の中央にある「灰色の大地」ってのを境にお互い干渉できないようになってる、なんて世界。
詳しい世界説明は後ほど。ともあれ、私の生まれは人間族。砂漠地帯である『アルデラ地方』って所。各所にあるオアシスを中心に人の営みが紡がれたこの砂漠地帯の、そこそこ大きな村の宿屋の娘として転生したの。
前世で調理職やってたのもあって、料理がそこそこできる私は両親に愛されて普通に生活してた。
だけどある日、旅商人がウチの宿に泊まった時に、お喋り好きな商人の大陸の中央にある王国、リンデンベルツの話を聞いたの。
冒険者とか、ギルドとかの話も。
前世で夢女子だったっていうのを知ってれば何となく察するところはあるだろうけど、ほら、ね?
ファンタジーktkr!!!!って思うじゃん?
ごく普通のオタクだった私はこの話が楽しくて仕方がなくて、もっともっとと強請って話を聞いて、その度に憧れを膨らませた。
そして思った。今のスペックなら冒険者行けるのでは…?
思い立ったが吉日っていうし、とりあえず冒険者になるために学院に行こうって決めて、渋る両親を説得しながら、体を鍛え始めたの。
ぶっちゃけ運動とか嫌いだし、上手くいく確率は半々かなーって思ってた…んだけど、これが思いのほか上手くいっちゃって。
村の力自慢達を足技だけで薙ぎ払えちゃったし、これはもう普通に行けるって確信しました。
異世界転生様々!!!!ありがとう!!!!って思いました。
あ、そうそう。私の見た目ね。白髪紫目。左側の横髪だけちょっとだけ長くて、三つ編みにしてるの。右目の下には泣きぼくろ。胸はグレープフルーツサイズって感じ。身長170あるからまぁ美女だよね!理想の私がこうだ!って言うのがモロバレだから恥ずかしい気もするけど。
出発の日の夜中。アルデラの日中は歩き回る気温じゃないから、日が沈んでから行動するのが基本だ。太陽が登って気温が上がる前に、ある程度のところまで進まなきゃ。防寒着も忘れない。日中と真逆で、夜は寒いのがこの地域。転生して18年、ここで暮らしていたから多少は慣れてるけれど、堪えるものは堪えるものだから。
「さてと、荷物はこんなもんでいいかな。」
「クレア、本当に行くのかい?」
「寂しくなるねぇ…」
見送りに来てくれた村の人達と両親が名残惜しそうに私を見る。
「冒険者になるって、夢だからさ。ま、応援してよ。もう帰ってこないわけじゃないし。」
クールに格好つけて言う。心は荒ぶるけどポーカーフェイスを貫いてキャラを守ってるんだよ私これでも。だって自分の理想の姿が理想の性格じゃなかったら解釈違いだし。
「じゃ、もう行く。みんな、元気でね。」
くるりと振り返って、軽く手を振って、村の外に歩き出す。ちょっとだけ寂しい気もする。初めて一人暮らし始めた時の感じに似てるかもしれない。けど、憧れの冒険者になるため、私は行く。
「うわしまった忘れもんした。」
…こういうのがあるから私ってば…。
割とよくやります。地味な忘れ物。