異世界人に会うまでの道程
魔法陣を抜けるとそこは異世界だった。
「知らない天井だ……。」
ふっとつぶやいたがそこは天井はなく青い空が広がっていて、ラフな普段着のシャツと半パンで運動靴を履いて大の字で草原の絨毯に寝そべっていた。
起き上がって辺りの景色を見ると今いる場所は緑の草や木が生えている丘の上で、遠くまで緑色が地平線まで続き地平線を境に澄んだ青い空があった。
「こんな開拓されてなくただ草原が広がっている丘って日本にはないよな。この大陸か島か分からないけどこんな環境ができるっていうことは陸地は広そうだな。」
遠くをよく見渡していたら、道らしき開拓されて草がないところがあったのでとりあえずその道がある方角に向かって歩き出す。
目測は10キロ以上はあるかな?前世で山に登って隣の山を目測で測ったことはあったけどこれほど遠くのものを目測したことはなく、感覚がつかめないので目測にプラス5キロと考えて、あと15キロ先だという心持でただ歩く。
一時間ぐらい……50分ぐらいかな歩いて様子見で休憩をしているが、前世では趣味で山などに登っていたのでその時に体験していた疲労と比べると荷物を持たず平地を歩いていたとはいえ身体や足に疲労感はなかった。
もしかしたら神の力のおかげかもしれないと思い、休憩をやめ少し駆け足でこの体を試してみる。
サバイバルで必要なのは水・火・テントで野生の動物を見かけたら捕まえないとな……サバイバルでは貴重なたんぱく源ですって言われてるし。
道まで走っている間暇だったので、もしものことを考えてキャンプするとき何をしようか妄想しながら走っていたが今の体は疲労を感じないようで遂に当初の目的の道まで走り切ってしまった。
「すごいな息切れもしないし足の疲労も一切ない。」
さて道までついたはいいが、道は二方向にどちらも地平線まで伸びていて人工物らしきものは一切なかった。
こういう時はマップデザイナーの気持ちになって街を作るときにどっちの方が栄えそうか考えれば……って、一面クソ緑いっぱいで判断材料がない。
世界は広いな……新しい環境で孤独は辛い、とりあえずその辺にあった木の棒を地面に立てて倒れた方向に向かうことにした。
「……次はどれだけ全力で速く走れるか試すか。」
あまり繁栄していない世界みたいだし、外を出歩く人はあまりいないのかもな……第一村人発見が先か街につくのが先か。
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門番に立ち、出入門者の警戒をするがもう夕暮れ時、もう少しで日が沈むと思うと少し感傷的に黄昏てしまう。
16歳の時に徴兵されてから40年間、この身をニュアル国に捧げてきたがそれも今日までだ。
「ガインさん交代です。今日までお疲れさまでした!!夜間は僕に任せてください」
「フェン君か……。いや、少しここにいてもいいかな。夕日が沈むのを見ていたいんだ。」
「わかりました。」
門前の立哨位置をフェンに譲って、その隣で腰を落として街から伸びる道を眺める。
太陽が地平線の先に沈んでいき空が黄昏て、段々と世界の輪郭があやふやになっていく。
太陽がある地平線を注目しているが、段々と地平線がぶれていき……ぶれて?
そのぶれている影は段々と街に近づいてきていた。
「太陽がある地平線から何かがこっちに来ているぞ。」
フェンもその地平線に注意を向け、自分も立ち上がって前方の影周辺を警戒する。
単体。あの速度で走れるのはミノタウロスかコカトリスのはぐれものか‥‥‥。
「鐘を鳴らせ!!フェンは本部に連絡、西門に増員を要請しろ!!」
従軍最後の日にイベントか‥‥‥持ってるんだか無いんだか。
心の中で苦笑しながら、石突を地面に突き立て矛先を影に向けて覚悟を決める。
あの速度で突進されると自分の体は持たないだろう‥‥‥しかし、相手も同じだ。この命‥‥‥
「外すな‥‥この一撃で仕留める。」