異世界に転生する道程
「死後、人種宗教の垣根を越えて世界中に祈りを捧げられる奇跡を起こしたため上条 翔。あなたに聖人認定を与え、あなたは今日から神様として過ごしてもらいます。」
【祝・童貞聖人】と掲げられた垂れ幕が掲げられて、女神フレーメンから祝杯を受ける。
死後、魂の存在が少しずつあやふやになっていたが、フレーメンが奇跡を起こしそうということで、魂の受け皿を作ってもらい暫くこの世界に留まらせてもらって奇跡が起きる道程を眺めていた。
「うれしくない聖人認定の理由で歴代一位とれたんじゃないですかこれ。」
馬鹿げた理由で聖人を受けてしまった現状にただただ苦笑をしながら少し自逆風に言うことしかできなかった。
俺は何もしていないのに勝手にネットのおもちゃにされ、もうどうにでもなれっていう気持ちだ。
「私たちが聖人認定することは滅多にないことなので歴代一位はしばらく貴方のものですよ。」
フレーメンは少し笑いながら答えたので、ため息を吐きながら一気に祝杯を飲み干す。
この世界に留まっている間は欲が生まれることがなく食事をしていなかったので、久しぶりに味があるものを口にして不覚にもおいしいと感じてしまった。
そして、体の内から力がふつふつと沸きだつような感覚があり、体の底から熱くなる。
「祝杯を受けたので神の力を分け与えています。まだまだ見習い神様なのでその力をうまく扱うことができませんが、人の力と比べると天と地ほどの差がありますので悪用しないように神様としての自覚を持ってください。」
フレーメンは小言で何かを唱えると、体から沸きだつ熱さがふっと大人しくなる。
「あなたの力を人が持てる限界まで抑えました。今は力を抑えて使い方に慣れてもらうため、私が管理している世界で修行してもらいます。」
「神力……そうですね。あなたがいた世界では魔法というべきですか、魔法が常識としてあり使われている世界【ダースレン】で生活して力の使い方をマスターしてもらい、またここに帰ってきたときには神様の器にふさわしい魂となってください。」
急に足元に魔法陣ができると魔法陣が光り輝き、これから新しい世界に飛ばされるんだと理解した。
異世界転生系の小説を読んだ知識からこれから体験するであろう事を考えるとなぜだろうか不安よりも好奇心が勝ち、湧き上がる気持ちを抑えて冷静になろうとしていた。
「神様の器か……漠然としていて先が見えない目標ですね。」
「神と人は天と地ほどの差がありますから、日々何をするにしても修行と考えて魂を強く決意をもって過ごしてくださいね。」
フレーメンは指パッチンをすると、足元の光は強くなり世界を真っ白にする。
……公園最強の武術者の様に過ごすのか。