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冒険者ギルド

 炎の遊体・メネアスとの邂逅の翌日。私はフィーアスの街で初めて使う施設を訪れていた。


「冒険者ギルドへようこそ! 本日の用件は……その証は!?」


「あはは……」


 ある程度知識のある一般NPCとの会話が久しぶりなせいで、この反応も新鮮な気がする。職業登録所以来の職員系NPCとの会話だし、当然と言えば当然か。

 私が常に首からぶら下げている名持ち単独討伐者の証は、ほとんど所持者がいないらしいアイテムであり、NPCからすればネームドをソロで倒した証でもあるから、強さの証明としてこれ以上のものはないという。

 ただ、今の所これがソロネームドからしか手に入らないものなのか、普通のネームド……つまりパーティネームドからもソロ討伐で手に入るものなのかは分からない。

 現時点で討伐されたネームドは6体だけだし、昨日出会ったメネアスのようにどれもレベルに見合わない圧倒的な強さがあるから、そう簡単にソロで討伐できる相手じゃないのだ。

 とはいえそろそろフリーズを解いてもらわないと話が進まない。私は固まってしまった職員の女性に声をかけることにした。


「あのー……」


「はっ! 失礼しました、本日はご登録でよろしいでしょうか?」


「そうです」


 冒険者ギルド。それはプレイヤー達が作る《クラン》を総括する組織の名前であり、一般人、貴族、時には国からも様々な仕事、つまりプレイヤーにとってのクエストを請け負う斡旋所である。

 琥珀や、この間出会ってしまったメルティなどもこの組織の所属であり、戦闘面において優秀なNPCの大半は一応ここに属している。《破城》のような二つ名を正式に定めているのも冒険者ギルドだ。


 ここに所属することによる利点はいくつかあるらしいけど、私が調べた範囲では二つの大きな利点がある。

 ひとつ目はクランについて。クランを作成及びクランに参加したい場合は、冒険者ギルドへの加入が必須になる。

 最初に言った通り、クランというのは冒険者ギルドの直轄であり、冒険者ギルドに所属する冒険者たちの互助組織という扱いだからだ。


 もうひとつは、いつでもクエストを受けに来られる事。

 クエストの中には街中で自然発生するようなクエストもあれば、同じNPCから誰もが受けられるもの、そして私が受けているように特殊条件のエクストラクエストなどいくつかの種類がある。

 ギルドで受けられるのは恒常クエストというタイプのもので、例えばモンスターの一定数討伐やアイテムの採集などが挙げられる。

 普段のプレイをしているとついでに報酬が入ると考えれば、単純に得と言えるだろう。

 それに、クエストを沢山こなしていると冒険者としてのランクのようなものも上がるらしく、それが高いとNPCの好感度も高くなるようだ。


 とまあ、私がギルドについて知っている情報はこんなものだ。

 クランに入るわけでもクエストを受けたいわけでもなかったからこれまで放置してたんだけど、しばらくはレベリングメインだし登録に時間がかかる訳でもないらしいので、せっかくだから登録しに来たのだ。


 メニューカードを渡して、登録処理を行ってもらう。意外と時間がかかって暇だなーとか、やっぱり受付は美人の女の人の方がいいのかなーとか思いながら見ていると、5分程で処理が終わったのかメニューカードを返してもらえた。


「メニューカードに刻まれている戦歴を確認致しました。犯罪歴などはありませんでしたので、無事に登録は完了しております。今後、ギルドの直営店でのお買い物の際には割引などもされますので、ぜひご活用ください」


「ふむふむ」


「冒険者にノルマはありませんが、基本的にクエストをこなさなければランクは上がりません。受注の際には掲示板の前でメニューカードを使用するか、受付においでください」


「分かりました」


「冒険者ギルドの使い方についてはメニューのヘルプ欄に記載されています。分からないことがありましたら、職員にお聞きいただいても構いません。以上で登録時の説明は終了となりますが、何か分からない点はございますか?」


「今の所はないです」


「それではスクナさん。我々ギルドは貴方のご活躍を期待しております。……早速ですが、クエストを受注されますか?」


「お願いしまーす」


 職業登録所に比べると結構事務的な手続きなんだなと思いつつ、ステータスの一部に冒険者の文字が刻まれるのを確認した私は、とりあえずクエストを受けてみることにした。

 《ゴリラの毛皮を10個納品》《兎肉30個の納品、品質問わず》《中位ポーション10本の納品》《キラビット10体の討伐》。ざっくりと眺めてみても、やはり討伐や納品系のクエストが多い。恒常クエストと言われるのも納得のいく内容だ。

 ポーションの納品なんかも冒険者ギルドの管轄なんだなぁ。なるほどなるほど。


「おっ、これなんかよさそう」


 手に取った依頼は《ミステリア・ラビの毛皮が欲しい》というもの。数は多ければ多い程よいとのこと。他の依頼に比べて貰えるランク評価も高く、報酬も豪華だ。

 依頼の期限は10日。それ以上を過ぎると失敗とみなされ、ランク評価も下がるようだ。


「《ミステリア・ラビの毛皮が欲しい》ですか……証持ちのスクナさんの実力を疑う訳ではないのですが、かなり難しいクエストになりますよ? 探すのも倒すのも、10日あっても足りないかもしれません」


「大丈夫です。何匹か狩ったことあるので」


 私が差し出した依頼を見て、ギルド職員のお姉さんは心配そうな表情でそう言った。心配してくれるのはありがたいけど、このモンスターは私と相性がいい。

 今日はゆったりとフィーアス周辺を散策しようと思ってたので、問題なく受けることにした。


「それでしたら、ついでにラビット系のクエストを受けていかれるといいかと思います。現在のスクナさんなら、3つまでなら同時にクエストを受けられますので」


「あ、じゃあそうしようかな……このキラビットっていうのもラビットの仲間なんですか?」


「そうですね。街の外側でたまに見かける真っ黒なラビットがそうです。街道沿いにはあまり出現しないのですが、草の深い場所に隠れ潜んでいることが多いですね」


 黒いラビット……見かけてはいたけど倒してはいなかったか。アレがキラビットなんだね。


「じゃあこれともうひとつ……兎肉の納品クエストで!」


「かしこまりました。……はい、手続きが終わりました。報告はこの街でなくても、冒険者ギルドであればどこでも可能になります。ご武運をお祈りしていますね」


 こうして私は恒常クエストに挑むのだった。





「ふんふんふふふん」


 心地よい風に吹かれながら、遠目に見えた虹色の影に向かって鉄球と投げナイフを放り投げる。

 一投目から投げナイフを入れようとするとどうしても針の穴に糸を通すような繊細な投擲になるんだけど、鉄球なら反射を考慮するだけで裏を突けるから便利だ。

 一度当ててしまえばナイフを当てるのも全然難しくないので、私的にオススメのムーブである。


 1時間ほど草原を周りながら既にミステリア・ラビを3体屠った私は、キラビットを探していた。

 黒いラビットで草の深いところにいるみたいだけど、これがなかなか見つからない。

 5体ほどは倒したけど、これがなかなか倒しづらい相手でもあった。


 一般的な兎と違い、ラビットというのは全体的に二回りくらい大きめな兎のモンスターだ。

 たまに《デカラビット》のような大きなラビットがいたりもするけど、ラビット系のモンスターはだいたい同じサイズであると言える。

 それがこのキラビットは、単純に小さくて攻撃が当てづらいのだ。

 具体的には普通の兎の半分くらいのサイズ。とても小さい、ネズミくらいのサイズと言えるかもしれない。

 そのくせ攻撃力が非常に高く、試しに食らってみたところクリーンヒットで一割は削られた。

 倒せなくはないんだけど、まず見つけづらいのもあって、なかなか苦戦する相手だった。


「でもまあ慣れた」


 パンッ! と軽快な音を立ててキラビットを弾き飛ばす。

 キラビットは確かに小さくて攻撃を当てづらい相手だけど、それでもあちらから攻撃してくれてる時点でチャンスはいくらでもある。

 少しでも体が浮くタイミングを見計らって速度重視でカウンター気味に金棒を振り抜けば、回避できない一撃の完成だ。

 ラビットは全体的にHPが低いので、基本的に私の筋力で殴って倒せないことはない。


 結局見つける方に苦労して、キラビットを10体倒す間にミステリア・ラビを5体も倒すことになった。やったね。

クランのメンバーにはNPCも加えることができたり。

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