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ログアウトして情報共有

現実世界でのお話です。

後書きにステータス推移を記載しておきますので、興味のある方は確認してみてください。

「んん〜っ」


 数時間程度とはいえ寝転がっていたことで固まった体を伸ばして、私はVRマシンから降りた。


 ついさっきまでかつてないほどの集中力を発揮していたせいか、久しぶりに頭がぼんやりする。

 狂ったように働いていた頃も、ここまで疲れたことはないと思う。

 土方仕事はまた別だけど、普通の接客業なんてピーク以外は案外楽だったりするものなのだ。


 

 しっかりと体を解してからぺたぺたと足音を立てて居間に向かうと、美味しそうな匂いが漂ってくるのがわかった。


「リンちゃーん、何作ってるの〜?」


「ナナ。落ちてたのね。早めの昼ごはん、いや遅めの朝ごはんかしら」


「わー、ビーフシチューだ。どれくらいで出来る?」


「あと10分くらいよ」


「じゃあ食器の準備しちゃうね」


 エプロンをして鍋を掻き混ぜているリンちゃん。

 きっと私がログアウトしてくることを見越してご飯を作ってくれていたのだろう。


 2人分置いてある食器を棚から出して、テーブルに並べていく。

 私はビーフシチューにはパン派なのでコッペパンも用意して、リンちゃんはシリアルを食べるので忘れずに牛乳を出した。



「いただきます」


 2人の声が重なって、少し遅めの朝ごはんを食べ始めた。

 リンちゃんはビーフシチューの他にもグラタンを作ってくれていたようで、全体的に洋風な食卓になっている。

 私は和洋中なんでも好きだけど、カロリーが高いので洋食をよく食べる。

 だから好きな物は洋食に偏ってるし、それを知っているリンちゃんの料理のレパートリーも自然と洋食に偏っているのだ。

 


「とりあえず、ネームドボスモンスター討伐おめでとう。配信は見てたわ。やっぱり貴女を誘ってよかった」


 微笑みを浮かべて、リンちゃんはそう言った。

 あの幸せな戦いの時間を得られたのは、間違いなくリンちゃんが私をこのゲームに誘ってくれたおかげだった。


「リンちゃん、ありがとね。ずっと気にかけてくれて」


「お礼を言われるような事じゃないわ。私が貴方から貰ってきたものに比べれば、本当に些細なことよ」


 せっかくのお祝いの言葉だったのに、なんだか湿っぽい空気になってしまった。

 それを察したのか、リンちゃんはすぐさま話を切りかえてくれた。


「それで、アリアのリザルトはどうだったの?」


「スクショ撮ったから……えっと、これか。見てみて」


 差し出した端末には、ゲーム内のスクリーンショットを転送してある。

 リンちゃんは興味深そうな顔でそれを一通り眺めてから、納得したように頷いて端末を下ろした。


「それで、何か聞きたいことはあるかしら?」


「流石リンちゃん、話が早い。リンちゃんはネームドアイテムって知ってる?」


「ええ、もちろん。私自身は持ってないけど、フレンドが持ってるわよ」


 やはり、私が予想した通りネームドアイテムを入手しているプレイヤーはいるようだ。


「レア度:ネームドって、公式のページには書いてなかったよね。あれは何?」


「それも含めて、ネームドについて説明するわ。貴方が戦った《アリア》を含めたネームドボスモンスター――通称ネームドは、公式では情報が伏せられた各フィールドのボスモンスターのことよ。伏せられていると言ってもゲームをやってれば簡単に知ることが出来るんだけどね。ネームドには種類があって、検証によると大まかに3種類に分けられるわ」


 リンちゃん曰く、ネームドボスモンスターには《ソロ》《パーティ》《レイド》という3種類の区分があるそうだ。


 まず、彼らと出会った時点で、「逃走と乱入」という選択肢がシステム的に封じられる。その通称が《結界》である。

 私は気付かなかったけど、赤狼アリア戦でもその《結界》は発動していたらしい。

 その《結界》の内側には決められた人数まで存在できるようになっていて、その区分けが先程リンちゃんが挙げた3種類になる。


 例えば孤高の赤狼・アリアはソロ限定の《結界》を持つモンスター。それ故に逃走不可の一騎打ちを強いられる。

 仮に逃げるとしても、あの敏捷と無限スタミナ相手に逃げられる気はしないけど……。


 《パーティ》区分ならば同一パーティ内の6人まで。同様に《レイド》なら5パーティ30人まで。

 ネームドボスモンスターの《結界》に関しては、現状このルールで間違いないとのことだった。


 つまり《結界》というのは、フィールド上にボス部屋を作り出すようなイメージと捉えてもらえばいい。

 加勢が期待できない代わりに横槍も入らない。

 もし仮に赤狼との戦いで最後の最後に横槍が入ったりしたら……と考えると、納得のいくシステムではあった。


「で、そのネームドなんだけど、ゲーム内で初討伐された時に必ず《魂》っていうアイテムを落とすの。これが初討伐ボーナスね。これのせいで白熱したラストアタック戦争が……っと、これはまあいいわね。とりあえず、《レア度:ネームド》っていうのはその《魂》そのものと、それを使った武具にしか付かないわけ。公式は隠してるから公式サイトじゃわからないし、上位プレイヤーも詳細を秘匿してるから攻略情報まとめを見てもわからないかもね」


「ふーん……つまり超絶レアアイテムってことだね」


「ふふっ、まあそうね。間違ってないわよ」


 考えるのを放棄した私を見て、リンちゃんは案の定と言った顔をしている。

 武具に使えるレアアイテム。上位プレイヤーでもほとんど手に入れられてなくて、初回討伐者に確定でドロップする。

 それだけわかってれば十分だろう。



「あ、そうだリンちゃん。さっきのスクショに書いてあったと思うけど、討伐した時点でステータスのボーナスポイントも入ったんだよ」


「そう言えばそうだったわね。いくつ?」


「30だと思う。6レベル分だね」


「30……そう、ソロのネームドでもポイントは入るのね。これまで討伐されたネームドはパーティ規模のが2種類だけなんだけど、その時参加していたメンバーも全員がナナと同じだけのボーナスを獲得してるわ。ただし、初回限定でね」


「1回きりのボーナス……まあ当然かぁ」


 倒す度にステータスポイントを貰えてたら、最強プレイヤー待ったなしだもんね。


「同一モンスターからはもちろんのこと、2種類倒しても初回以降はなかったらしいわね。ただ、もしかしたら区分の違うネームドなら貰えたりするのかも。この辺は考察クランに情報を投げておくわ」


「そこら辺は任せるよ。んー、ビーフシチュー美味ひい」


「当然よ。私の料理だもの」


 最低限、どうしても聞いておきたかった事は聞けたので、熱々の内にビーフシチューをほお張る。

 私はビーフシチューが好きだ。もちろん普通のシチューも。

 煮込み系の料理は全般好きだけれど、とりわけこの2つに関しては譲れないものがある。


「ああ、ネームドの報酬だけど、《魂》以外に関しては別に晒してもいいから。そもそもワローは配信をウリにしてるから、あまり情報を隠しても意味ないのよね。もちろん隠してもいいけれど」


「突然の事とはいえ、私も派手に放送しちゃってたからね。最初100人くらいだったのに、1万人超えてたもん。ところでワローって何?」


「WLOの雑な略称。配信者の間で流行ってそのまま定着したの」


 WLO、ワロー。私は英語に詳しくないので正確な発音とか分からないし、要はフィーリングだ。それっぽく読めてればいいのだろう。


「ああそうだ、赤狼素材なんだけどね。多分早ければ午後にでも生産プレイヤーの接触があると思うわ」


「ふぇ? なんで?」


「だって倒されたことの無いモンスターの素材よ? しかもネームドのだから質が高くて、それもソロ討伐だから纏まった量もある。扱ったことのない素材で作ってみたいって言うのは生産者のサガよ」


 グルメ家が美味しいものを求めるのと同じよ、なんてリンちゃんは言っている。

 申し訳ないけどその例えはわかりやすいようで分かりにくい。


「そっかぁ……どうしたらいいかな」


「自分で選んだプレイヤーに託してもいいと思うわ。ネームド素材を扱えるプレイヤーとなると、現時点では前線級のハイレベルプレイヤーに限られるけどね」


 生産レベルが足りていないと、強いモンスターの素材は使えない。

 ありがちだけど納得のいく理由だった。


「わかった。自分で決めてみることにする。何でもかんでもおんぶにだっこじゃダメだと思うし」


「私は大歓迎よ?」


「あはは、知ってるよ」


 歓迎を表すように手を広げるリンちゃんに笑みを返すと、リンちゃんもまたウインクを返してきた。


 


「ああそうだ、デスペナが6時間ってことは、レベル21になったのよね。実は始まりの街で……」


「へぇ! じゃあさ……」



 WLOの話題一色に染まった会話だったけど、私たちは昼の配信までゆったりとした時間を楽しんだ。



 12時にリンちゃんが放送をするためにログインして行ったのを見届けて、食器の片付けと洗濯物の取り込みをする。


 大凡の雑事を終わらせて、1時ちょっと前に私もWLOに再ログインするのだった。

本編中からのステータス推移です。

「新装備と新スキル」時点から「赤狼戦の報酬」時点での推移になります。


PN:スクナ

Lv:13

種族:《鬼人族》

職業:

所持金:17820イリス

ステータス

HP:195

MP:15

SP:104

筋力:45+15

頑丈:28 +20

器用:58+2

敏捷:51+2

知力:3

魔防:3

幸運:34

残りステータスポイント:0

装備

武器:金棒

頭:鉄板の鉢金

胴:鎖帷子

腕:鉄板の篭手

脚:ベルト付きの革ズボン

靴:鉄板のグリーブ

スキル

※スキルの選択が可能です

《打撃武器》熟練度:35

《投擲》熟練度:20

《探知》熟練度:0

《片手用メイス》熟練度:0


PN:スクナ

Lv:21

種族:《鬼人族》

職業:

所持金:48690イリス

ステータス

HP:299

MP:25

SP:156

筋力:56

頑丈:39+20

器用:74+2

敏捷:62 +2

知力:5

魔防:5

幸運:50

残りステータスポイント:65

装備

武器:

頭:鉄板の鉢金

胴:鎖帷子

腕:鉄板の篭手

脚:ベルト付きの革ズボン

靴:鉄板のグリーブ

スキル

《打撃武器》熟練度:55

《投擲》熟練度:40

《探知》熟練度:10

《片手用メイス》熟練度:5

《餓狼》

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― 新着の感想 ―
「武器: 」が泣かせるぜw
[一言] MPは何に使うんだろう…勿論先を読めば分かるんだろうけど、それは無粋ってやつだし。
[良い点] 面白い
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