最初のミッションは一万円稼ぎます ー1ー
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「なぁなぁ! ヒーロー作戦の機材が届いたんだろ。どうだった? 勿論正義のヒーローを選んだんだろ?」
ここは比呂高校の三年A組の教室。つまり、田中咲哉は高校三年生ってわけ。それで俺に話しかけてるのは親友の佐藤阿久真。俺と同じヒーロー作戦好きの親友。名前の通り、俺とは違って悪役になりたがってる。けど、見た目は眼鏡ガリガリの坊っちゃんタイプだ。
「それがヒーロー作戦じゃなくて、ブービー作戦のパチもんの機材だったんだよ」
正義のヒーローになりたかったのに悪になったなんて、しかも戦闘員だなんて言えるわけがない。
ちなみに昨日はヒーロー作戦はチュートリアルを終えた時点で止めた。ゲームは一日一時間。高三は受験生でもあるからだ。レムリアは慌てる姿に気分が少し晴れた気がした。
「そうなのか? 本当に入手困難だよな。俺もやりたいけど、加えて親が許してくれないんだよ。そういえば、今週の『作戦本部』を買ってきたんだけど、百万人に達成したらしいぞ。表紙も謎の美少女の絵が気になる。似た感じのチビキャラはいたけど」
阿久真が買った『作戦本部』はヒーロー作戦の情報雑誌。毎週月曜日に発売だ。その表紙はトップのヒーローや悪の組織の幹部などが載るんだけど、今回は百万人になった事を記念する大事な表紙。
「レム……」
思わず名前を言いそうになった。表紙を飾ってるのはパートナーのレムリア。自身でアイドルとか口にしてたけど、嘘じゃないって事か。
「眠いのか? 深夜アニメは見るのが多いからな。それよりもこの子は結構良くないか? 魔法少女の服装も似合ってるし、小悪魔って感じが魅力的だな」
「悪魔ってのには同意するけど、そんなに良いか? 写真映りがいいだけで、実際は会ってみると残念、ガッカリするのが落ちだって」
阿久真がレムって言葉を眠むって聞こえた事には助かったけど、レムリアに対する誉め言葉を思わず否定してしまった。
そんな時、突然スマホが鳴り出した。
「マナーモードにしておくのは常識でしょ。それが出来ないのであれば電源を消しておきなさい。それと貴方達は声が大きいわ。勉強している人達もいるのだから、廊下で話すべきね」
そんな辛辣な言葉を投げてきたのは生徒会長の黒崎雪月。一年生の時から三年連続当選している学校の有名人。比呂高校の美人ランキングベスト5に入る。切れ長の目に、漆黒の腰にまで届く長い髪。背も高く、スタイルも良い。運動神経も抜群。ただ……
「ごめん! マナーモードにしてたはずなんだけど」
俺は会長と阿久真に頭を下げ、電話に出るために廊下を出た。通知されたのは電話帳に登録されてない番号。だけど、何処かで見た事がある番号でもある。