レムリアを探せ! って無駄なんですけど ー19ー
「勿論スカウトの方に決まってる」
「ちょい!」
俺よりも先に会長が答えた。俺よりもレムリアの服が大事だというわけか! 協力してる人の扱いではないでしょ。
「すみません! 意見の食い違いがあるみたいなんで、離れて話をさせてもらいますね」
「お好きにどうぞ」とフローラは認めてくれたので、会長を連れてトイレ側に移動した。
「ここはレムリアの服を賭けるべきだって! 説明だけでは、どんなゲームか理解出来てないんだから」
「別に死ぬわけじゃないでしょ。スカウトされるなら、負けても得でしょ。嫌だったら、途中で脱退も出来るんじゃないの?」
確かに死ぬわけじゃないと思うし、スカウトされはのは良い事かもしれない。それが怪人だった場合だけど、俺は戦闘員だし、所属に入ると色々ある気がするんだよ。運営から違約金を払わされる事になったら……。
それと『私にとってその方が都合がいいのよ』と会長は小さな声で呟いた。それを俺に聞こえたとは思ってないみたいだけど。
会長は東雲区を襲うのはスカウトされたいから? それなら最初から無所属じゃなく、東雲の所属になれば良かったのに。
『勝てばいいのよ、勝てば。こういうの電子コミックで見た事あるから、私の手に掛かれば問題ないわ。イカサマはバレなければイカサマじゃないのよ』
レムリアは何故かやる気満々なのはいいけど、イカサマって。それに電子コミックって何で読めるんだよ。
まぁ、漫画にありそうな賭け事は大概イカサマを使ったり、盲点をつく戦いだったりするんだよね。悪の組織なら当然あるでしょ。
「いや……やる気なのはいいけど、当初の目的を忘れてないか? ここの金庫を狙ってるんだよな」
「それも別に……田中君が阿弥陀ゲームで注目されてる間に私が行けばいいんでしょ」
「それも別に」とか言いませんでしたか? それに会長が侵入するって事は裸タイツを着るはめになるんだぞ。多分、変身後は無理だからその前。顔の部分は会長本人の顔になるんだけど。
「その代わり、田中君はスカウトを条件に受けて、時間稼ぎをしなさいよ」
会長が恥ずかしい姿をさらすつもりなら、俺もスカウトを条件に受けよう。なんだかんだでレムリアが勝たせてくれそうだし。
こうして、俺とフローラの阿弥陀ゲームがはじまる事になった。




