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戦闘員Aですが何か?   作者: マネージャー
第一章 東雲編
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百万人目の記念だってさ ー4ー



「おおっ! 本で何度か見たけど、本当に現実にいるみたいだ……って、俺の家付近に似てるんだけど」



 外に出たのは良いけど、どういうわけか本当に家から出た感じ。コンビニが見えたり、一軒家の表札が同じだったり、無駄に吠える犬でさえも再現されてる。



「ん? レムリアがいない。俺のために自ら消えてくれたのか。そうか! あれは一時的なバグだったんだな。きっと運営からお詫びの何かが貰えるぞ」



 周囲を確認してみるけど、レムリアの姿がない。一緒に付いてくるタイプだと思ったんだけど、質の悪いバグなら納得だ。運営が解決してくれたんだろう。



「馬鹿なの? 私をバグと間違えるなんて馬鹿なの? 大事な事だから二度言ってみたわ。咲哉は馬鹿だって」



 姿は見えないのに強烈な罵倒の声だけが聞こえてくる。近くにいたら叩きたい気分だ。



『私はナビだから遠くからでも話せるのよ。一緒に行動も出来るけど、私はヒーロー作戦のアイドルですから、一緒にいると咲哉は他の人達のやっかみに合うからね』



 何でそんなに自信満々なんだろう。見た目は良いかもしれないけど、中身は最悪だぞ。



「ああ……NPCに言わせるのか」



 ヒーロー作戦にいる人達は登録者だけじゃない。多くの企業と提携していて、ネットで買い物をする人達もこの世界に入る事が出来たりする。悪の組織に捕まえられたり、正義の味方に助けられるという体験も可能だ。



 その他にいるのがNPC。ゲーム世界だけの住人。買い物客達はショッピング街にいるもので、俺の家付近を歩いてるのはNPCか、参加者。チュートリアルなのを考えると、NPCだろう。



『違うわよ! 咲哉って結構言うタイプなのね。その話は置いといて、咲哉が動きやすいように家付近に設定しておいたから、色々歩いてみなさいよ』



 レムリアの指示に従うのは癪だけど、チュートリアルだから仕方がない。スキップ機能もないようだし。



「家付近に設定されても、真新しさもないからゲームをやってる感じがしないんだけど」



「きゃああああ!」



 突如として女性の叫び声が。これは悪の組織が登場したと思ってもいいはず。



「事件発生ね。急いで駆けつけなさい。場所は咲哉が小学生の時、初めて女の子に告白して振られた公園よ」




「何でそんな事知ってるんだ。ほろ苦い思い出だよ!」



 俺はレムリアがいる場所に行くのを我慢して、黒歴史が埋まる地へ。



 その公園には正義のヒーローと悪の怪人との戦闘を観戦したいのか、多くの人達が集まっていた。まぁ、チュートリアルだからNPCなんだろうけど、こういう状況もあるって事だ。



「キー!」


「キー!」


「キー!」



 黒タイツの戦闘員の掛け声が聞こえてくる。俺もあの中に入れって事なのか。



「レムリア! 良い感じのタイミングで変身を」



 ヒーロー作戦の醍醐味の一つ。それは変身だ。一瞬で着替える事になるんだろうけど、呪文やポーズを考え、それを披露した後に変身。このためにどれだけの時間を費やしたか。



「何言ってるの? 戦闘員が変身するわけないじゃない。電柱の陰とか、路地裏。公衆トイレでタイツに着替えるのよ。コンビニのトイレは駄目よ。強盗と間違えられるから」



 俺の手に黒タイツが出現した。物陰で着替えるなんて、コンビニ強盗と同じみたいに変質者と勘違いされるだろ。



「変身シーンは一番重要なのに」



「こんな事言う奴ほど、後々になると変身ポーズとか面倒でスキップとかするのよね」



 レムリアのツッコミを無視して、渋々公園にあるトイレで着替えを済ました。



「はぁ……黒タイツのピチピチ感が……もっこりまで再現しなくても。あの……そこを通してくれませんか」



 観客達を押し退けて、戦場に行くと戦闘員達は全滅。ヒーローと怪人の戦いに突入していた。こんな状況で戦闘員である俺が参加? 『空気を読めよ!』って、NPCでも冷たい視線を出せるみたいだ。この時点で戦意喪失だ。

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