百万人目の記念だってさ ー3ー
「最後はヒーロー作戦の世界に入って、戦闘を」
「あの……アンインストールしてもいいですかね?」
ここまでレムリアの好きにされるとやる気がちょっと……。正義の味方になりたかったのに、悪の組織で無所属の戦闘員しか選択肢がなかったし。しかも、装備出来るのも限られてるのなら詰んでるだろ?
「駄目に決まってるでしょ! 百万人目に選ばれて、チュートリアルで辞めるのなんてありえないから。咲哉は何が不満なんだよ」
「色々あるけど、お前かな? パートナーを解消して欲しいぐらいだ」
「私! こんな可憐でヒーロー作戦のアイドルの私が……酷いわ。咲哉のパートナーを解消されたら、私は消滅するしかないのに」
レムリアは俺の言葉に衝撃を受けたようで泣き出してしまった。そういう風に作られたのかもしれないけど、AIのくせに妙に人間っぽい。男だったら、女の子が泣く姿を見るのが苦手だと思う。本当にパートナーを解消した場合、消滅するのであれば後味が悪いし、可哀想かも。
「えっと……言い過ぎ」
「そんな事になったら……私を産み出してくれた沢山の企業から咲哉にクレームが来るわね。弁償する事になって総額一億円を払わされるかも。ヒーロー作戦を辞めるのも一億稼いでからじゃないと……プププ」
「最悪だ! 新手の悪徳商法かよ」
泣いてたと思ったら、それは演技で最後にレムリアは笑っていた。今の状況で、どちらが上なのか分かってるんだ。
レムリアが言った話が嘘か真実のどちらか分からない以上、一億円の借金なんて怖すぎる。
けど、こっちには別の方法がある。アンインストールしなくても、レムリアのパートナーを解消しなくても問題ないのが一つ。
「ちなみに放置プレーもなしだからね。そんな事したらどうなるかはお楽しみに」
「レムリア……お前って悪のトップでもおかしくないよ」
先手を打たれてしまった。俺が無所属なのも、戦闘員って立場だけじゃなく、レムリアが多くの企業に関係があるからか。放置したせいで、買い物を拒否されたりするかもしれない。
「何言ってるの。それを目指すのは咲哉の役目なんだから。頑張って一億は稼いでもらわないと。話を戻すわよ。最後にヒーロー作戦の世界に入って、戦闘を経験してみよう!」
レムリアは『張り切って行ってみよう』ってな感じで片手を上に掲げると、瞬間移動したみたいに俺の似た部屋から街に移動した。