黒髪の彼女 ー2ー
「ヒクヒク?……ヒクヒク」(俺の事? 物陰に隠れてどうしたんだ?)
って気持ちを込めて言ってみたけど、戦闘員は首を傾げていた。戦闘員同士なのに、分かり合えないらしい。取り敢えず、プレイヤーじゃないのだから、言う通りにしてみる。
「ヒクヒク!」
戦闘員は俺の手を引っ張った後、口を塞ぐように抱き締めてきた。猿を魔物にしていたプレイヤーの戦闘員か! そこまで教育が行き届くなんて。
「あれ? 白タイツが見えた気がしたんだけど……酒酒区は2Dで戦闘員の場所が確認出来ないのが厄介だよな」
変身前のプレイヤー達が戦闘員を捜してる? 酒酒区のヒーローじゃないよな。戦闘員は俺を襲おうとしたわけじゃなく、助けてくれたらしい。
「放出は感謝だけど、連絡がランダムなのは嫌だよな。ドロップ率も一%もないだろ?」
「酒好きのコレクターには欲しい物だからな。普通では手に入らないし」
「酒好きじゃなくても、物好きは多いって。不良に憧れる奴とか。着る事が出来ないのは残念だけど」
プレイヤーがもう一人増えた。酒酒区の戦闘員は、イベント時に何かドロップする? それも酒好きのコレクターだけじゃなく、不良も憧れる物。
「白タイツは初めて見るし、新作だろ? 一番に手に入れたいな」
決定だ。酒酒区のタイツはドロップ対象になる。しかも、俺が着てるタイツは新作らしい。見つかった場合、服を剥ぎ取られ、全裸にされてしまう。
(……会長達の騒ぎは違うんだよな)
悪の組織が戦闘員タイツを放出して、プレイヤー達を集めるのに理由がある? いや、酒酒区は戦闘とは無関係なイベントをしてた。集客して、他の商品も売るつもりなのかも。
「ヒク! ヒクヒク」
戦闘員は『ついて来い』という動作をしてる。赤いタイツに白の丸がマークとして付いてる。この戦闘員は逃走ルートを知ってるんだろうか?
(あぁ……姿は見せて、一体も倒させないようにしてるのか)
プレイヤー達を集めるためにタイツ収集の情報を流して、実は渡すつもりはない。移動短縮は出来ても、脱出ポイントは用意されてる。時間制限もあるだろうし。




