黒髪の彼女 ー1ー
酒酒区の戦闘員用タイツ。そういえば、一時的に特集が組まれてたのを思い出した。戦闘員自体が宣伝で、酒の文字や絵、ロゴをタイツに転写した形だ。だから、酒酒区だけで戦闘員のタイツ何十種類とある。
部屋のタンスに戦闘員タイツはあり、酒酒区の戦闘員タイツはすぐに分かった。折り畳んだ形で見ると、暴走族が着る特効服みたいだ。まぁ……着たら、格好良さは正反対になりそうだけど。
「……格好良いのには憧れるけど、所詮はタイツなんだよな」
鳳凰とか龍の絵柄、漢字自体が何か生物の形になってる物、桜吹雪で背中にあるのも。そんな中で、俺が選んだのは白タイツに『酒』の一文字とシンプルなの。ここまでなると、タイツを着る事に抵抗はないんだよな。
レムリアがいないと、普通に着替えないといけない。酒酒区の場合、酔った状態になるから先に着替えておくべきだろう。移動短縮はレムリアがいなくても問題ないから、酒酒区へ……
「って! 会長とシャイ婆も酔った状態だったら」
すっかり忘れてた。酒酒区は慣れないうちはフラフラの状態になる。上手く逃げ切れる確率の方が低い……
「と思ったら、二十二時過ぎてる! あれ?」
二十歳未満は二十二時以降、酒酒区に入る事が出来ない。会長や才波は強制退去、もしくは敵と会った状態でも移動短縮が可能な状態なら、すでに別の場所にいるのかもしれない。少し安心したけど、俺が酒酒区に入れた事だ。移動短縮なら改札や門番を掻い潜れるけど、時間に関しては無理なはず。
「戦闘員だからか!タイツ半端ねぇな……」
悪の組織の侵入、開発局での改造、他に年齢査証にも役に立つなんて、最弱職でも馬鹿にならないな。
(さて……これからだな)
戦闘員だから下手に声を出す事は出来ない。酒酒区の戦闘員の掛け声は『くぅー』だったか! 仕事終わりのビールを飲んだのをイメージしてるらしい。他には『ヒク』と『ヒック』か。これは酔った状態だな。
普通には話せないけど、戦闘員と話す事は出来るか? 開発局なら声が聞けたし、レムリアがいない時でも大丈夫なら。会長とシャイ婆が酒酒区からいなくなったのを知ったとなれば、悪の組織は引き下がるかもしれないけど。
「ヒク……ヒク……ヒック!」
近くに酔っ払いがいるのか? ヒクヒクヒクヒク五月蝿いな……と思ったら、戦闘員の一人が俺に手招きしていた。どうやら、戦闘員の通訳機能は駄目みたいだ。




