最初のミッションは一万円稼ぎます ー16ー
会長はそれを破く事はせず、律儀に読み始めた。そうしながらも俺の方へ視線を向けた。シャイ婆のラブレターを読むのは、俺が逃げるための時間を稼いでくれてるんだ。
『ちょっと……何処行こうとしてるのよ。退却の仕方が分からないわけ? ヒーローと接触したら、そのエリアから出ないと駄目。本屋から出れば、部屋に帰ってこれるのよ』
『知ってる。伊達に『作戦本部』を愛読してないわけじゃないから』
俺は本屋の出入口とは反対方向に走った。
『もしかして……シャイ婆を見つけようとしてるわけ? 無駄だって。どうせ一撃で倒されるんだし、倒す方法もないんだよ。一矢報いる事も無理なんだから。悪らしく見捨てるべきよ』
シャイ婆は遠距離攻撃を仕掛けくるわけだから、俺が接近する前に倒しに掛かる。見つけたとしても倒す方法がないし、会長が勝てるとも思えない。
2Dマップにしてもシャイ婆らしき姿がない。目視しないと発見出来ないよう、ステルス機能が付いてると考えるべきか。
『そんなの分かってる。けど、会長にレアキャラの戦闘員だったと思わせたいんだ』
幸い、野次馬達は俺の存在に興味を無くし、会長の返事がどうなのかに注目している。店員達もシャイ婆を立てて、俺を追ってくる様子もない。
『よし! これで俺の役目は終わった』
『……やりたかったのって……咲哉が良いなら何も言わないけどさ』
俺は最初からシャイ婆を見つける気なんてさらさらなかった。
「断る! 姿を見せない相手など興味がない」
会長はシャイ婆に大声で返事した。この言葉にシャイ婆は会長の前に姿を現すのか?
俺はその結果を見ないまま、本屋から離脱した。




