VSシャイ婆戦 ー8ー
「あかん! これは駄目なやつだ」
音が聴こえて、すぐにしゃがんだはずなんだけど、途中で頭の上を通り過ぎて、前にいたサラリーマンNPCが倒れた。倒れた勢いでカツラが落ち、それを拾うと俺のアイテムに追加されたわけなんだけど。
「店長が簡単そうに言ったけど、全然だぞ。連続で撃たれないのが救いだわ」
遠く離れた相手を集中して狙うのもスタミナが必要となる。人混みの中を狙うとなれば尚更だろう。そのために連射は難しいわけだ。
『戦闘員が何度も攻撃を避けるのもどうかと思うから』
それを言ったら終わりだぞ。店長も俺が戦闘員だと知らずに教えたわけだし。
『まぁ……少しは時間稼ぎが出来るんじゃない。エリア移動も簡単そうだし』
禿げたサラリーマンが倒れた事で、周囲のNPC達は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。俺はしゃがんだ事で、ワンテンポ遅れてしまった。
そのせいで、俺を守る盾は無し。狙う放題のはずが何も起きない。振り向いてみると、シャイ婆さんは呆然としてるように見える。
『変身してもないのに避けたからじゃないの? 』
俺としては戦闘員のタイツを着たからって、能力は変わらないから。けど、変身前に避けたのは相手からしたら動揺するかも。
「それなら、今のうちに」
俺は一直線にエリア移動出来る位置まで進む事を選択。路地に入るのは一番危険。ロックされてるなら場所は把握されるし、狭い場所での跳弾を避けるのなんて本当に無理。
「よし! エリア移動完了。人は……逃げ出さないんだな」
隣のエリア移動。隣で起きた事は反映されないのか、NPC達は何事もなかったように歩いている。シャイ婆が来ると状況は変わるかもしれないけど。
『シャイ婆がこのエリアに来る前に、別エリアに移動出来れば楽になるわね』
ここからは三つのエリアに移動可能。シャイ婆がいる場所を含めると四つ。2Dで確認出来るのは自身がいるエリアだけだから。
けど、能力的にはシャイ婆が上。スタミナが多ければ、走れる時間も増える。走り続けた結果、いずれかは追い付かれる事になる。
「NPCが倒れたのは大きいかもしれないな」
俺が避けたせいでNPCは倒されたわけなんだけど、これは事件の一つに入るかも。それも狙いの一つではあったんだよな。
シャイ婆は東雲が無くなった事で無所属になった。正義なのは変わらないようだけど、NPCに危害を加えたわけだ。この場合、北映区のヒーローが来る可能性も。それだけじゃなく、あそこには他プレイヤーがいたわけだから。
「俺はそのままの姿なわけだし、対決してるとは思わないだろうし」
他人を使って勝負を制する。卑怯だと言われても勝てばいい。最初はヒーローになりたかったんだけど、悪に染まってきた感じ。いや、生意気な後輩に灸を据えるのが目的だから、悪ではないのかな?




