また来てね
入口をじっと見ている市ヶ谷に来栖は恐る恐る声を掛けた。
「お、おい……市ヶ谷……?」
声に反応してゆっくりと顔を来栖に向ける。焦点の合わない目をしていた。
「……」
小さく何かを言っている。来栖は耳を澄ませた。
「……」
「…………」
「……ぁ…………ぃ」
「お…………ぁ……わ…………い」
「おれはわるくない」
「おれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくないおれはわるくない……おれは……わるくない……」
市ヶ谷は崩れ落ちた。
それを呆然と眺めていると、後ろから声を掛けられる。
「やあ。楽しんでもらえたかい?」
そこにはウサギリと呼ばれていたウサギの着ぐるみが立っていた。
「……どういう、ことだ」
「聞いてもしょうがないことだよ」
「いいから、答えろ!!」
怒鳴り声が響いた。いつの間にか周りには誰もいない。居るのは怒りを露にしている来栖と泣きじゃくる市ヶ谷、そして飄々としているウサギリであった。
「しょうがないなぁ。じゃあ全てを話すよ。市ヶ谷北斗君はおよそ一年前にここ、裏野ドリームランドに遊びに来たんだ。そして彼だけが残った。だから、僕は彼の心を操り、より多くの人を連れてここに戻ってくるように細工したんだ。そして彼は僕の思惑通りに君たちを連れてきてくれた。そして今、彼と君だけが残った」
「君には彼のようにここに沢山の生贄を連れて来て欲しいんだ」
来栖は虚ろな目で地面を見ていた。フラフラと体を揺らしながら振り向き、出口に向かってゆっくりと歩いていく。
「じゃあ、また来てね」




