園内放送(ウワサ1)
「ここが目的地、裏野ドリームランドだよ!」
駅で待ち合わせ、そこから一時間ほど移動したあと、バスに揺られること三十分ほどで姿を現した裏野ドリームランド。
裏野ドリームランドは開園して程なくして閉園した。その理由の大部分を占めるのは行方不明者の数である。その後何度か警察が立ち入りをしたが、結局解決には至らなかった。
それにも拘わらず、現在裏野ドリームランドには多くの人が集まっている。
「やあ。よく来てくれたね、みんな。待っていたよ」
話しかけてきたのは、青とピンクのストライプのズボンを履き、左の耳を垂らしたウサギであった。
「あっ、ウサギリさん! みんな、この人が招待してくれた人だよ。今日は招待してくださりありがとうございます」
「ううん。こちらこそ来てくれてありがとう。楽しんでいってよ」
「そういえば他にも人がいるみたいですが……?」
「ああ、ごめんね? 貸し切り状態のつもりだったんだけど他にも今日が良いって人たちが沢山いてね」
市ヶ谷がウサギリと話している一方で、来栖はクラス委員長である美作麗雅に話しかけられていた。
「来栖君。皆で話し合って、人数を分けて別行動することになったんだけど、誰かと一緒が良いっていうリクエストある?」
「……ない」
「じゃあ、私や市ヶ谷君と同じグループね」
「マジでか……」
美作の言葉に来栖は絶句した。自分とは正反対の存在と同じグループになるとはどんな嫌がらせだ、と内心で毒づきながら美作を盗み見た。
美作麗雅はアイドルでも通用する見目麗しい容姿をしている。買い物に出かければ高い確率でスカウトを受けるほどだ。特に右の目元にある泣き黒子がチャームポイントであり、彼女の人気の一役を買っている。
また面倒見もよく、男女問わずに人望がある。それ故に彼女がクラス委員長になったのは必然であったといえよう。
クラスで話す相手がいない来栖にとって、彼女は唯一話したことのあるクラスメイトであった。
「そろそろ俺たちも行こうか」
「そうしよう!」
「だな」
ウサギリと名乗った着ぐるみと話が終わった市ヶ谷がそう言って歩を進めた。それに呼応するようにグループごとに分かれて遊園地内に散らばっていく。
来栖は市ヶ谷を追っていった他のグループのメンバーの最後尾に付き、辺りを見回す。
その時であった、来栖は何かを聞いた気がした。
『…………』
足を止めて耳を澄ましたが、聞き取ることはできない。首を傾げていると、美作が話しかけてきた。
「どうしたの?」
「……何か聞こえないか?」
「え? ……何も聞こえないけど……」
そうか、と口の中で小さく呟き、何でもないと返した。開いた距離を詰めるために軽く走った。
モスキート音。
特定の年齢、特に若者にしか聞こえない高周波音のことだが、その高周波音にもHzによって幾つかの年齢を分けることが出来る。
来栖が聞いたのはこの高周波音であった。
『ピンポンパンポーン。迷子のお知らせだよー。○○からお越しの翔太君。みんな待ってるから急いでドリームキャッスルまで来てねー。分からなかったら近くにいる縞々のズボンを履いているお兄さんお姉さんに聞いてね』
どのような技術を用いているのかは不明だが、高周波音での館内放送をしていたのである。
高周波音での館内放送を聞くことが出来るのは、その多くが子供であることが多い。そのため、放送の口調も子供に対して話すようにしている。
問題はなぜ子供にしか聞こえないようにしているのかということだった。
『ピンポンパンポーン。迷子のお知らせだよー。○○からお越しの麻衣ちゃん。みんな待ってるから急いでドリームキャッスルまで来てねー。分からなかったら近くにいる縞々のズボンを履いているお兄さんお姉さんに聞いてね』
そしてまた子供が居なくなる。




