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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第一章:同一性
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同一性 3

 思いっきり常識的な事を聞いて半分あきれられながらも、二人は話に付き合ってくれた。


 どうやらこの世界は"ロアリル"と言うらしい、神が作り上げた世界らしく"魔力"と言う力に満ちている。

 神が存在するのかと聞いてみたがどうやら本当に存在をしているらしく、修行を積んだものはその身に神を下すのだとか。


 次に種族、彼らのような耳の長い種族はエルフと言うらしい、非常に長寿で長生きなものは森と共に300年は生きると言うから驚きだ。


 ちなみにその区分で言うと俺はヒト族と言うらしい、他には獣の様な身体的特徴を持つ亜人達や背の小さい鍛冶が得意なドワーフ達そして魔法の得意な魔族など多種多様な種族が住んでると。


 また、意思疎通のできる種族をまとめて"人間"と呼ぶようだ。


 魔物について、魔物とは魔力を持った"人間"以外の動物の総称の事らしい。魔力と言う言葉が良く判らないのだが、通常の動物たちより力が強く、そして魔力を持ったものを襲う性質を持つらしい。


 体内に魔石と呼ばれる石を持ち、この石が色々な事に使えるため買取の対象になっている、また冒険者と呼ばれる職業の人の一般的な稼ぎ方だとか。


――冒険者いるんだな……


 言葉や文字どうなのかと聞いてみたところ、現在話している共通語と呼ばれる言葉でだいたい意思疎通が取れるとか。他にも古代エルフ語などもあるが共通語さえ離せれば対外話せるとのこと、元の世界で言うと英語とかだろうか。


 貨幣もほぼ統一されているらしく。銅貨に始まり、鉄貨、銀貨と続き金貨まで、各100枚で上の貨幣と同価値で取引される様だ。10枚ごとに銅なら大銅貨、鉄なら大鉄貨と言った具合に10枚分の価値を持った中間貨幣が存在する。


 ただあまり価値の高い物は、釣り銭の問題が出てくるので鉄貨あたりまでが使い勝手がいいらしいが。


――まぁこれくらい知ってれば生きるのに苦労はしないだろう」


「ありがとうございます」


「それで、どうするのかね君は?」


「と言うと?」


「これからの事だ、どこで住むとか色々あるだろう」


 そういえば現状の把握ばかりで先の事を考えていなかった。

 ここを出てどうするか、せっかく人に会えたものだから文明的な生活をしたい。

 

 まず必要なのはやはりお金だろうか、簡単な仕事の紹介所とかあればいいのだが。

 冒険者とかになるのだろうか?


 そうしばらく悩んでいるとイリヤさんが続けた。


「もし行く当てがないなら、この家で暮らさないか?」


「……っえ?」


 思ってもみない提案に目を落としてすこし考える。

 確かにその方がいいのだろう、あえてサバイバル生活に戻ることもない、そうだここが拠点にできればもっと簡単な話ではないか?


 しかしどこか引っかかりを覚えて、俺はすぐに首を縦には降れなかった。


「……いいのですか?」


「良いも悪いも、レルカを救った恩人を追い出すような恩知らずにして欲しくはないのだが。レルカもそう思うだろ?」


「はい、クレナイさんが迷惑でないなら」


 レルカさんもそう続ける、確かに彼らに恥をかかせるのは良くないだろうか? いやしかし……。


「でも、俺みたいなどこの誰かも判らない人間なんて……危なくないですか?」


「それを見極められなかったらこんなこと言わないさ」


「でも……」


「なにか、理由があるんですか?」


 不安そうにレルカに言われてハッとする、なんで色々と文句を言っているのか。まるで断る理由を探しているみたいじゃないか。


 考えても断る理由は無い……はず、そう無い筈だ。

 だが矛盾する様に断ろうとしていたのは何故か……しばらく考えてもまったく理由は思い浮かばなかった。忘れてしまった記憶の残滓か何かかだろうか――?


「もしかして――何か言えない理由でもあるのか?」


 心配そうに聞いてくるイリヤさんに大きくかぶりを振る。

 忘れてしまっているなら思い出さなければいいだけだ。


「いえ……お世話に、なってもいいですか?」


「ああ、これからよろしくクレナイ君」

「お願いしますね、クレナイさん」


「ええ、よろしくお願いします」


 どことなく不安そうだった二人が笑みを浮かべる、その様子を見てもこの選択は間違っていないはずだ。そう……自分に思い込ませた。





 枕が変わると寝られないという話があるだろう。そのようにか――それともずっと固い場所で寝ていたせいで藁に布を張っただけとはいえベットの上で寝るのに慣れていないだけだろうか。俺は眠れずにいた


 まあ、枕が変わると寝られないと言うのは、周囲に気を張って警戒しているという点が強いのだが、そう考えると眠れないのは普通なことかもしれない。

 そんなどこで知ったかも覚えていない知識を思いつつ、俺は居候の自分に割り当てられた部屋――昨日目覚めた部屋から里を覗く。


「そういえば、今日も満月か」


 太陽から役割を引きついた月、いや"ルノ"は今日も欠けることなく森を優しい光に包みこんでいる。


 あの月が欠けているところを見たことが無い、月は1ヶ月で満ち欠けするものそういう知識はあるにはあるが。

 あの石から教えられた共通語には"三日月"などと言う概念はなかった。

 

 星座も一つも判らない、自分の知識と現状の違いは今に始まった事では無いが、なぜ今まで気が付かなかったのか……


 いいや、今まで考える余裕がなかっただけか。


「本当に異世界なんだな」


 こうなると本格的に自分の知っている世界とは違う世界なのだろう。異世界――知識だけはある世界とはまた違う世界。


「問題はどうして来たか、だけど――」


 心当たりは――有ると言えば有るし、無いと言えば無い。

 毎晩のように見る悪夢のような夢、もしそれが自分の最後の記憶だとしたら。

 どうしてそうなったのか、どうすればそうなるのか、その記憶は全くないのだが。


「神様……か」


 登っていく"ルノ"を見上げて呟く。

 神なんて実際に居るのかも判らないし、強大な力を持ったモノが何を思うなんてわからないが。

 もし一言言えるのならば文句の一つでも言っても、バチは当たらないだろう。

 まあ死にゆく自分を救ってくれたなら、ありがたいと思うし、第二の人生なら記憶はいらないのかもしれないが――


「少なくとも、サバイバル生活は……ごめんだな」


お読み頂いてありがとうございます。

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