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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 22


 仕事用のローブと表情を隠す無地の仮面をつけ、ラガーポートの屋根の上を貴族街へ向け駆けていく。

 もしネストの言っていたことが本当になら戦闘になるだろうか?高低差のある屋根の上を速度を落とさず飛び移りつつ武装を確認する。


「武装確認、一心刀4振り、投擲用短剣数本、ケプラーロープ……」


 一振りだけ腰に携えて後はバッグの中に放り込む。遠距離武装が少ないが今はこれで満足するしかないだろう。いつだって満足行く装備が整うわけではない……。


 雑多とした中央広場の上から貴族街に入る。少し離れた家々の間にロープを伝わせ一足飛びにかけていく。確か初日に観光したときに別館は見かけていたはずだが――。


「ん?あの一団は?」


 揺れ動く視界の端に銀色のものを見かけ目を凝らす。流れるような銀髪にぼろをまとわせた杖上のもの……ヤミだ!


 即座に軌道を変えつつ彼らの上に陣取る。彼女達は貴族街の狭い道に入って前から両手剣を持った大男、剣を携えた優男、レルカ、ヤミ……ヤミは恐らく警戒中、歩きながらレルカと話している優男がロジェか?


「……それでロジェさん……」


 レルカの声が風に乗って聞こえてきた……当たりだ、にやりと上がる口角を抑えつつ。彼らが貴族街の奥に行くのを尾行する。


 この貴族街の道はある程度細い道幅で迷路のようになっている。もともと人通りもあまり多くないその性質上、どうしても人目に付きにくい場所ができてしまう。


 俺はフードを目深に被ると、その一つに差し掛かったところで刀とロープを這わせつつ襲い掛かる。


「――Mr.ロジェ、歓談中失礼する」

「ん?私に何か――」


 音を立てずに屋根から下りつつ上段からの突き――。


「危ない!」


 そのままであればロジェの首を撥ねていた一撃はヤミの気転によって避けられた。


「てめえ、若になにをして――」


 隊列の先からすっ飛んできた大男が剣を上段に振りかぶる。丸わかりの剣の軌道に切れ味を強化した刀を押し当てる。


「――る……っあ?」


 刀はまるでバターを切るように両手剣を切断しそのまま持っていた大男の肩を切る。これで一人無効化。後はロジェを切って逃げるだ――。


「レルカさんロジェさんを連れて別館へ退避!」

「ヤミさんは!?」

「足止めします!」

「……っ!すぐ戻りますから!」


 ロジェとレルカが離れていく。先ほどからこちらが考えているよりヤミの動きが数段早いな。

 こちらに槍を向けて突っ込んでくるヤミに防壁を張るように刀を振る。


――避けられるか!


 避けられると同時に槍を地面に押し当て急旋回。ロジェが逃げていった方向に立たれる。槍を下段に構えて通せんぼをする形だ。


「彼に何の用ですか!」

「……」


 何か言おうかと一瞬迷ったがとてもここで説明できる内容ではない。返答代わりに引かせるように切り込んでいく。


 先ほどの剣を見たからか打ち合おうとは思われずひたすら避けられ続ける。ロングスカートで手足もとの動きがわからないからやり辛いとこの上ない、何か決定的な隙を晒してくれない物か――。


 壁際に押し込んで当たらないようなギリギリを凪ぐ。甘かったのか立ち居地を入れ替えられお返しとばかりに振り回してくる槍を裏拳ではじいてさらに隙を作るために切り込んでいく。


――これじゃ千日手だぞ。


 数度やりあって判ったがヤミと俺との実力はほぼ互角後は不確定要素だけ――。


「これでも」

「……!?」


 ヤミが少し後ろに下がったかと思えば付近に転がっていた先ほどの剣の先をまるでボールか何かのように蹴りこんで来る。


――避け……いや切り払うべきだったか!? 


 咄嗟に避け他瞬間に悪手だったと悟る。そこを見逃すようなヤミではなく――。


「その時間は命取りですよ!」

「……――ッ!?」


 避けた先を刈り取る様に突き出された槍が刀を弾く。そのまま蹴られて体勢が崩れる。


「誰かは知りませんが、これで……!」


 崩れた体勢の中視界の端でヤミがこちらをまっすぐ視線で射抜き何かを取り出したのを見る。


――まずい、銃だ!


 ヤミが取り出したのはシリンダーの詰まった原始的な形のリボルバー、その銃口が視線と会うのが見えた。


『……マリオネット!』


 俺から地面に這わせていたロープの一本を後先考えず思いっきり魔力で巻き取る。


 力任せに巻き取ったロープは体を千切りそうな力で無理やり体を横にずらす。と同時に鋭利なドリルのような音を立て耳元を弾丸が通り過ぎた。


――何とか避けれたか……。


「動かないで!次は外しません」


 体勢を立て直したときにはもうヤミは後ろに下がっていた。俺の防御力の無い強化では、銃相手に今更どうこうできる距離ではない。


――潮時か……。


 俺は両手を頭の上にあげて降参の意思を示す。この世界の降参の意思表示とは違うが意味は通じたようだ。


「フードと仮面を取りなさい!左手だけで!ゆっくりと!」

「……」


 言われたとおりにフードを開ける。ヤミは中から出てきた髪を見て僅かに驚いた顔を見せた。


「黒い髪……!?」

「そう言うことだ、黙秘権は認めてくれるかい?婦警殿?」









「ロジェさんが奴隷商?彼は貿易商のはずですが」


「それが表の顔で、その裏では冒険者を使った奴隷貿易をしていたってことだな」


「そうは見えませんでしたが……」


 銃を突きつけ何故と聞いてきたヤミに、事の真相を教えては見るが。彼女は懐疑的な様子で言葉を返してきた。

 

 確かに彼女はこれまで彼の表の顔ばかり見ていた。それなのに「はい、そうですか」と直ぐに納得してくれないのは当たり前だろう。


「それに……聞いた限りだとあなたも決定的な情報は持っていない様子ですが?」


「ああ、そうだな」


 痛いところを突かれた、確かに俺自身が確認しているわけではない。ネストが騙す筈も無いと思うが、冤罪だということも十分ありえる話だ。


 交渉は決裂か……ならば即座にここを離れてレルカを回収しに行かなければ……。

 話しながら強化用と離脱する為の魔力を引き出す。後は発動用の単語を言うだけとなったところでヤミがこちらに向けていた銃を返してグリップを向けてきた。


「……?どういうつもりだ!」


「どちらにしろですが、事実確認という意味では私とあなたの意見は一致しています、ならば貴方にはいざという時のバックアップを頼みたいです。銃の使い方は判りますね?」


「残念ながらSFの世界には行った事が無くてね?」


「安心と信頼の"枯れた技術"製ですよ」


 枯れた技術、十分に発展しきってそれ以上開発する余地の無い安定した技術の事だ。確かにそれなら俺の知識で十分に使えるはずだ。


「それは良いな」


「でしょう……?さあ早く!」


 ご自由にと言いたげな顔で、こちらに銃とそれに付随した弾帯差し出すヤミ。

 受け取ろうと手をかけたところで、細道に通していたロープを伝ってこちらに向かう複数の足音を感知した。


「待て、誰か来る!」

「こちらも上空から影を確認しました!数は2、衛兵のようです」


 上空から?まさか偵察機でも飛ばしているのか?――っと考える時間は無い。


「――おい!さっきの音は――ってヤミさん!?大丈夫」

「私は大丈夫ですが……」

「待ちなさい!」


 俺は無理やり取ったように見せかけるために少し乱暴に銃を取ると。そのまま近くの建物の屋根に上るのだった。

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