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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 21

「ロジェ商会ね……」

「クレナイさん、何か知ってますか?」

「んー……3番通りの交差にある景気のよさそうな店……だったかな?」


 ブリッジ商会、そこ会長のネストから仕事を受けるようになってから一週間ほどたったある日。

 俺は寝床にしているウェルナンの酒場で、レルカ達といつものように話をしていた。


「そうだな、レルカが少し気になるってんなら知り合いに聞いてみるさ」


「……えっ?」


 ヤミの疑問に答えつつ彼女の鋭さに舌を巻く。彼女たちには、普段は俺は外に居て街の事を知らないと言う体を取っている。

 それで疑問に思われたか?ヤミには話しても問題ないだろうが。レルカにはネストから受けている掃除屋の仕事のことは言えないしな。


「おいおいヤミ、その『知り合いなんているの?』みたいな視線を投げるなよ、少し傷つくぞ」


「外にいる筈なのに知り合いなんてできるんですか?」


「そりゃ行きかえりは街に居るし、別にラガーポートを出たら農家だっている。即、無人の荒野ってわけじゃないんだぜ?」


 ヤミの瞳が視界の端に不自然に動く、視界映像で地図でも見ているのか?こういう人間的な動きは文明が進化して行っても変わらないらしいな。


 彼女たちと話しながらレルカ、彼女の今後についてついて考える。まあこのウェルナンで働いている限りは安全だろう。働くのも楽しそうだ。


 この調子でレルカが腰を落ち着けてくれると、俺も面倒を見ないですむんだがな。


 自惚れではないが彼女が俺を好いているのは判っている。だからといって記憶もないし、両手どころか頭から爪先まで血に塗れた俺に着いて来ても何かに巻き込まれるだけだろうが……。


 まして彼女は俺みたいに選ぶ選択肢がないわけでもあるまいし。エルフの賢者であるイリアさんの孫娘という立場を生かして、いっそどっかの騎士……いやそれこそさっき言っていたのロジェとか言う商人の内縁にでも入ってしまえば、幸せに暮らせるだろうに。


 何で俺についてきて冒険者なんて選ぶかね。


 まあ一時の気の迷いだろう、そう結論付ける。 


 そういえば冒険者で思い出したが彼女たちは今誘拐事件が起きていることは知っているのか?ウェルナンに来る冒険者辺りから噂で聞いていそうだが。


 俺は冗談めかして貼り付けていた笑いを解くと、少しまじめな調子で言った。


「そういえば昨日、冒険者ギルドに行ったときに聞いたんだが、どうも仮登録をした人の中で何人か失踪してるやつがいるらしい――」


 まあ俺は彼女が独り立ちできるまでイリアさんの代わりに。そして巻き込んでしまった親の代わりをやってやるだけなんだろうがな。

 話しながら頭の隅ではそんなことを考えていた。



 









 レルカたちがロジェ商会に行く時間になったところで別れ、裏通りをゆっくり歩きながらブリッジ商会にやってきた


「ようっ」

「おう、クレナイか。随分噂になっている様じゃないか、」


 その執務室に顔を出すなり、ネストから新聞のような紙を投げ渡される。その一面には「市場で仮面の男が辻斬り」の文字が躍っている。


 ざっと見れば一昨日市場でローブ姿の男が切れ味の良いサーベルを振り回したと言う内容が書かれていた。

 このラガーポートの衛兵長が「我々が守るから問題ない」とコメントしているが、殆ど日雇いの冒険者の団体がなにを守れるんだか。


 まあ、中世レベルの報道なら、この位なのだろう。ざっと目を通した新聞を置いてネストに向き合う。


「衛兵達にはがんばってもらいたいね、それで?今日は俺は誰を斬ってくればいいんだ?」


「その新聞を見て抱く感情がそれか?……今日は、というかしばらくは居ないぜ……休みだ休み」


「休み……?」


「まさか一か月分を、一週間でやってくるとは思わないだろうが!張り切りすぎだ!」


 ネストはあきれた様子でそう言ってきた。

 言われてみれば確かに少し張り切りすぎたのかもしれない。理由は……初回だからと言うことと、この刀の切れ味が良過ぎたせいにしておこう。


「どこの組織にも鼻摘み者は居るって言ってたよな?」


「その鼻摘み者を一週間で3人。それも全員、人通りの多いところで斬ってくる奴がどこに居る」


「そりゃここに」


 俺がわざと白々しく言えばネストは本格的に頭を抱えだす。まあネストは頭を抱えるのが仕事みたいなものだからほうっておこう。


 その様子を横目に見ながらソファーに座りつつ刀を抜く。休みということで道具の手入れでもしておくか。


 窓から入ってくる光にすかすと、すらりとした印象を出す刀身を映し出した。

 俺が一心刀と呼んでいる刀。ネストに紹介されたドワーフの鍛冶屋に造らせた品だ。


 ドワーフの鍛冶屋、まあイメージどおりといえばイメージどおりの職人気質で。俺がおやっさんと呼んでいる彼にこれを作ってもらった時も、ひと悶着あったのだが。まあ、その話は今は思い出さなくて良いだろう。


 マジックバックから手入れ用の布と油を取り出すと整備をしつつ様子を見る。


――おやっさんも良い仕事をしているものだ。


 昨日まで連戦で使っていたが刃こぼれ一つもない。


 知識の中にある刀は数人切ったら刃こぼれを起こす物だと思っていたが。耐久力は魔力で強化をして使っているから知識のものより頑丈になっているのだろう。


 それに輪をかけて特異なのは切れ味だ。俺の剣術に合っている刀という獲物だということも有るのだろうが。鎧ごと、剣ごとたたっき切れるとはまったく思ってもいないものだった。


「まあ十分には報酬をもらってる。それを使って少し遊んで……おい待てクレナイ、なんで同じ剣が2本あるんだ?」


「……?この一心刀は数打ち品だから当たり前だろう?吸って良いか?」


「ああっ……新聞じゃあ、よっぽどの名剣だろうと言ってたが、これで数打ちかよ……」


 俺の知識にあった作り方を元におやっさんに作ってもらった刀は、どうも数本ないと安心できない俺の性分で4振りほど作ってもらっている。


 彼からは両手、両足で持つのかとか笑われたが、最悪投げるといったらどんなに怒るんだろうか。


 その4本目の刀に油を馴染ませる。後は時間を少し置けば良いだろう。

 確かに最近は忙しすぎた、たまにはゆっくり過ごすのも良いかもしれないな――。


「まあそこはおやっさんの腕が良かったってことだろうな」


「そうか?使いこなしているお前もよっぽどだろう――?」


 バッグからキセルを取り出す、数度たたいて古い葉を叩き落すと詰め替えて火を――。


「――そういえばクレナイ、数日前に誘拐がどうとか言ってたが、あの犯人が大よそ掴めたぞ」


「そうなのか?誰だったんだ?」


「ユベール・ロジェ、あの貿易商、帝国の方の奴隷売買許可証を持って居るらしくてな――」


「なっ!?なんて言った!?」


 思わぬ名前に思わずキセルを落としそうになる。キセル自体は落とさなかったが零れ落ちた葉が近づけていた火に飲まれ、辺りに硝煙に似た匂いが立ち込める。


「だからユベール・ロジェ。やつが別館に冒険者を集めていたって聞いたんで調べさせたらな」


「本当か?」


「ああ、なんだ?知り合いか?お前が驚いたところを始めて見た気がするな」


「俺の連れが今日、そいつから仕事を受ける予定と聞いていている」


「何だと!っておい窓から出る気か?ここ3階だぞ」


 馴染ませていた刀を回収して窓から飛び出る。ロープを紐にかけて隣の屋根に飛び移る。

 休めるなんてとんでもない。まったくなんて日だ!


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