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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 20

 目が覚めるとすでに時間は昼過ぎだった。睡眠薬のせいか夢見も無く、結構長く寝たので体調は万全だ。

 いつも見ていた悪夢を見なかったことだけは、あの睡眠薬に少しだけ感謝をしておいたほうがいいかもしれない。


 俺は昨日の夜回収したものを思い出してギルドに向かう。程なくしてついたギルドは朝とは違って商人のような格好をした姿が多い。

 どうやら、明日の分の仕事を依頼しにきて受付に並んでいるようだ。一方、併設している酒場には昼まっから飲んで……もとい前日のうちから仕事を掠め取ろうと目を凝らしている冒険者が数人いた。


 全体的に朝よりは喧騒とはしていない。時間が変われば印象も変わってくるものかね。そう思いながら一番短い列に並んでいると程なくして自分の番が来た。


「はい次の人……おや?君は昨日スーガとやりあってた……」


「クレナイだ、覚えていたのか。昨日は恥ずかしいところを見せてしまったな」


 受付の彼が魔導具を使いカードを読み取っている間に世間話をする。どうやら昨日の事は少しだけ話題になっていたらしい。

 おそらく初めての顔が珍しかっただけだろうと言えば――。


「いやいや、僕にもあいつは何者だって話が来ててね……それで、何の用かな?」


「借金の返済と、それに……"落とし物"を拾ったんだが、ギルドマスターにでも渡せばいいのかなと思って」


「落とし物?それならマスターに渡さないでも僕に言ってくれれば……ってこれは!」


 言いかけていた受付君は俺の並べたギルドカードを確認しマスターを呼びに行く。しばらくしてギルドマスターであるダインが来た。


「おう呼んだか?ってクレナイじゃないか――」

「マスター、これを」


受付君が俺の出したカードを見せる。昨日の森で襲われたときに拾った物。


「ん?なんだその血の付いたギルドーカード……ってこいつはスーガの、お前まさか……」


「ラガーポートを出て半日ほどの森の前で"拾った"んだ。ほかの物も拾ったが、これ位はギルドに出しておくべきだと思ってな」


「拾っただと?持ち主はどうなった?」


「持ち主は俺が拾ったときには、そちらの想像通りやられててな。魔物にやられたか……それとも」


「……それとも?」


 俺はダインの問いに一呼吸おいて――。


「狩ろうとした相手に牙をむかれたか……な?」


 含みをこめて言い切るとダインは言いたいことを理解したのか頭を抱える。

 まあこれくらいで良いだろうか。


「……判った、なんと言うかすまなかったな」


「すまなかった?俺は拾っただけだけだが」


「そうだったな。判った、これはこっちで処理しておく」


「ああ、助かるよ」


 どちらにしろ昨日ネストも含めて襲われたのは明らかだからな。

 ダインが割りと話のわかる人でよかったと思うべきか。


 ダインが受け取ったのを確認して踵を返す。解体所に魔石と討伐証を売ったら、ギルドですることはもう無い。

 依頼も今は殆ど無いか明日のものだ、ならば受ける必要もないだろう。


「そうだクレナイ、仮登録の冒険者相手に人攫いが流行ってるから彼女らに言っておいてくれ」


「なんだ?物騒だな……わかった、彼女らには言っておくさ」


 帰りがけ言われたことは、以外に意味を持ったのだが。










「来たって事は受けてくれるのか?」


「そう言うことだ」


 俺はギルドを出たその足でネストのところへよっていた。途中市場に寄り道もしたが、まだ日が落ちるには時間がある。

 ブリッジ商会に入るとすぐにネストの執務室に上げられた。どうやら受付に言ってくれていたらしい。


「嬉しいよ、仕事は探しておくから、また明日着てくれ」


「判ったよ、そういえばさっきギルドで聞いたんだが誘拐事件が起きているそうだ」


 俺はネスト以外の同室者を気にかけつつも。壁にかけられた大きな王室許可の奴隷商売の許可証がを見つつ話す。

 ほかにあるのは商談用の机とソファー、彼の仕事用の事務机くらいだろうか実用的な部屋だ。


「誘拐?」


「らしいな、ネストは何か聞いてないか?」


「さあな、俺は冒険者じゃあないからな」


「そうか……まあ知らないならその程度って事なのかね」


「もしくは仮登録の冒険者、そういうあまり消えても問題の無い奴だけをさらっているかだな」


 なるほど、確かにそういう面も考えられるのか。しかし、商会をやっていていろいろ詳しそうなネストが知らないとはね。

 そう思っているとこの部屋に居るもう一人が小さく声をあげた。


「一つ、なぜその人攫いは人を攫うのかのう……?」


「……ネスト、聞きたかったんだが、なぜジェイがここに居るんだ?」


「今日中にお前が来るって言ったら、ここに居座ったんだ。本人から聞いてくれ」


 ネストがやれやれと首を振って書類に向き合い始める。彼はどうやらジェイには何もいう気は無いらしい。

 俺は商談用の机に何かしらの魔導具をばら撒いて。居座って何か書き物をしているジェイに向き合う。


「俺に何か用か?」


「そなた、クレナイとか言ったか?……一つ、体に異常は無いか?」


「あんたのくれた毒のおかげですっきり眠れた以外は無いな」


「……興味深いのう……一つ、あの錬金薬は大男ですら一杯で仮死状態付近まで持っていくものなのじゃが。まだ改良の余地はあるようじゃの」


「――!?……また首が絞められたいらしいな?」


「ああ、待て待てクレナイ。もうおぬしには不意打ちでは薬をやらんよ」


 ジェイがその小柄な体全身を使って首元を隠す。ずいぶんとあの酒場の一件がトラウマになっているらしい。


 しかしあの薬が錬金薬だったのか、確か体の傷をすぐに治すポーションなど即効性がある薬がそのカテゴリーだったと思うが。

 確かにあの後ジェイに飲ませたときは一瞬で死んだのかと思うくらい深い眠りに落ちていた。


「返り討ちにあったのかよ。だから、酒場で薬を試すのを止めろって言ってるんだ」


「じゃがのうネスト。一つ、臨床をするにも人は居るんじゃぞ。さすがに死ぬような毒は試しておらんしの」


「持っては居るんだな……」


「もちろんじゃよ、見てのとおりか弱い少女なのでな」


 メモを取りながら、しれっと言うジェイ。確かに見た目はレルカよりさらに幼い少女だ。

 だが、この女を見た目どおりの少女だと思う気は無い。印象からしてやけに老練そうだ。


「冗談は見た目だけにしておけ」


「おぬしは手厳しいのう、で?不調は無いなら良いのじゃが」


「ないな」


「そうか、わしの毒で効き目以外の変な異常があったらいけないからのう」


 言葉の途中で取ってるメモをのぞき見る。どうやらカルテのようだ。

 言動はあれだが医者なのか?確かに、毒も薬も紙一重だが……。


 そういえば人攫いの会話からこうなったんだったか?さっきの会話で何か言ってたような――。


「そういえばさっき人攫いについて何か言っていたか?」


「ああ、何で人攫いは人を攫うんじゃろうなと思っての。一つ言えば、人はいろいろとかかるからの。ネストなら判るじゃろ?」


「ああ、成る程、そういうことな、確かにそうだわ……」


 ネストは納得したようにうなづいているがどういう事だ?

 人攫いが人を攫う理由?それに大量に……。


 少し考えているとネストが手元の書類を指しながら言った。


「物と違って人は食うし飲むからな。それこそ俺の所なんかは結構な量を売れるまでなこんな風に」


「……ああ、なるほど、そういうことか」


 確かにネストの言うとおり、人は物と違って攫ってからもかなりコストがかかる。

 そうすると攫うためには結構な理由と言うものが必要になるわけか。


「自然の行いであれ人の行いであれ、特に注目しなければいけないのは意図じゃからのう」


 ジェイがしたり顔で言う。


 なるほど"意図"か、俺がこの異世界に居るのは何か意図があるのだろうか。

 もしかしたら、その点から少し調べてみるのも良いかもしれないな……。


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