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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 17

お待たせいたしました。

PCが壊れた当で遅くなりました。

「誰かは知りませんが、これで……!」


 リボルバーのトリガーを引き絞る。臨界点を超えた撃鉄が弾丸を打ち付ける。


『マリオネット……!』

――!?


 共通語ではない言葉とともにローブの姿が横に'ズレ'る。正確に狙った弾丸は、そのままズレただけ狙いがそれ。被っていたローブに小さな穴を開ける。


「動かないで!次は外しません」


 とっさに下がって銃を頭に突きつける。無手のローブはどうしようもないと悟ったのか両手を頭の上にあげて降参の意思を示した。


「フードと仮面を取りなさい!左手だけで!ゆっくりと!」

「……」


 言葉に合わせてローブがゆっくりとフードをつまんで取っていく。中から出てきたのは黒い髪――。


「黒い髪……!?」

「そう言うことだ、黙秘権は認めてくれるかい?婦警殿?」


 出てきたのはいつものように軽口をいうあの男だった――。








「行かせてください、私は約束したんです!」

「雇い主を守るのが君の仕事だろう!」


 ロジェ商館の別館その館が見えてくるであろう角の前、男女が言い争うような声が聞こえてきた。

 男女ともに聞き覚えがあるその声の方向に行けば。貴族街の中のレンガ造りの3階建ての前で案の定ロジェさんとレルカさんが幾人かの護衛に囲まれて言い争っていた。


「そうですが今も戦っているかもしれないんですよ。さっきだって魔法の破裂する音が聞こえたじゃないですか!」

「だがあんな音今まで聞いたことがない、きっと通り魔の隠してた何かで今頃ヤミ君は……」


 護衛達はレルカさんとロジェさんを緩く囲っていて近くにいる私には気がついていないようですね。


<<では何かあるまで私は見てますよ。気をつけてくださいね>>

<<あの男に言われた事が気に掛かってるんですか?あれはおそらく彼の被害妄想でしょう>>

<<だとしても、気をつけてくださいね>>


 まったくアイリスは意外と心配性なんですから……まあいいでしょう。

 視界の端に継続して青い花が咲いているのを確認しつつ別館の前にいるレルカさん達に声をかけた。


「私が……どうしたんですか?」


「ヤミさん!」

「ヤミ君!?」


 声で私を見つけた緩い包囲を抜け出てレルカさんが抱き着いてくる。それを受け止めていると苦々しい顔をしたロジェさんも追って出てきた。


「あー、さっきのは言葉のあやというかだね……」

「いえいえお気になさらず、誰だって命の危機には余裕なくなりますから」

「あー、そうだな、本当にその通りだ……」


 私が助け舟をだすと彼は本当にその通りだという風にうなづいた。まるで本当にそんな危機をよく見ているかのよう――。


「それで!あの通り魔は!?」

「それなら……」

「おおっとそれは私から話そうか」


 私の後ろから同行していた彼女の声がする。

 彼女はそのまま前に出て――。


「アリッサさん?」

「そうよ、アリッサさんよ。あっそうだレルカちゃん今度お茶でも――」

「……アリッサ」

「あーあーガノン分ってるわよ、あのローブの通り魔は私たちが着たとたん尻尾を巻いて逃げていったわ」


 そうあの後銃声を聞きつけて衛兵の仕事をしていた彼女たちが駆け付けてくれた。あの男はそれを見るやそのまま逃げだしていったと言う訳です。

 一足で屋根を飛び超えて逃げていく様、何という逃げ足の速さだと一瞬感心しそうになるレベルでしたが。


「じゃあまだ捕まっていないのか!?まだ危ないってことじゃないか」

「それは大丈夫だと思うよ。ね?ヤミさんアレを」

「そうですね」


 背中にライフルと一緒に背負っていた片腕くらいの長さの布を巻いたそれを取り出す。


「ヤミさん、それって!」


 布を解く、中から出てきたのは深く反りの入った70cmほどの抜き身の剣。真っ直ぐ波の入っていない刃紋を持つそれはあの男が置いて行ったサーベル……では無いですね刀です。


「あの通り魔の持ってた刀ですよ、逃げる時に回収し忘れていたので貰って来ました」

「すごいわよね。まあこんな業物何本もないでしょうから、しばらくは身をひそめるんじゃないかしら」

「そ、そうか」


 それを聞いてようやくホッとした表情を見せるロジェさん。身の危険がなくなったのが分かったからなのか、それとも商人の性なのか改めて刀を眺め始めた。


「それにしてもカタナとか言ったか?凄い切れ味のいいサーベルのようだな」

「どこの国のものかご存知で?」

「いや、いろいろなところを見ている私でもどこの国のものかはわからない、だがこれは良い水夫には売れそうだ」

「ロジェさんでもわからないんですか……」


 あの男はもしかしたら海を渡っている商人なら知っているかもしれないとか言ってましたが。ロジェさんが知らないとなるとさてはあの男、異世界の技術を持ち込みましたね?

 これは後で問い詰めないといけないですかね。


「ああ見たこともないね……ちょうどいい時間だ、続きは中でしよう、食事を用意させているよ。よかったらアリッサ君達もどうだい?」

「本当?昼も夜もロジェ商会で食べれるなんて運がいいわ今日は」

「私は運がよくないんだけどね……」


 私たちは入っていくアリッサさん達についていく。中は大きなロビーになっている。

 別館とはいえやはり貴族街、普段泊まって居るウェルナンとは比べ物にならないくらい豪華ですね。


 入ると使用人のような恰好をした男が武器を預かると言ってきた。


「武器の類は彼に渡してくれるかい?」

「先ほど襲われたばかりなのにやけに悠長ですね?」

「あのローブはヤミ君が追い払ってくれたのだろう?」


 もっともらしいことを言う。アリッサさん達も剣を外している様子を見つつ、商会で借りていた槍を預けた。


「背中の物もな」

「これは……」


 ライフルも預けないと入れてもらえないらしい。しょうがなく預けると受け取った男はその重さに驚いたのか少し驚いていた。


「ずいぶん重たいんだな」

「特注品ですから」


 何とか持ち直した男がライフルを持っていく。これで今持っているのはリボルバー一丁とその弾薬が少しですか。


 完全に武装解除をしなかったのは、先ほどあの男にかけられた言葉が引きづっているからでしょうか。


――だとしても見極めないと……。


 ライフルの重さがない違和感を感じつつ、食堂に通される。

 長テーブルにつくと赤く透き通った液体の注がれたグラスが運ばれてきた。


「地下の蔵の中でも上等なワインだぜひ楽しんでいってほしい」

「ラッキーじゃさっそ」

「……アリッサ」

「はーい、まったく細かいんだから」

「アリッサ君はもう待ちきれないかな?」


 アリッサさんをたしなめる様子を見て笑う、ロジェさんにつられて皆が笑う。

 そして和やかな雰囲気になったところで彼がグラスを持ち上げた。


「それじゃ、今日生き延びたことに感謝して――乾杯!」


「乾杯――」


 ワイン一口含む、宇宙ではめったにない総天然物の果実の香りが広がっ――。


<<バイタルエラー!ヤミさん大丈夫ですか!?>>


 隣のレルカさんからガシャンと何かが割れる音がする。急激に意識が遠のいて行くのをテーブルを支えにする。


<<ヤミさん!聞こえていますか!?>>

「ほう……耐えたか?いや……」


 コツコツという足音が響く。足音の主はこの屋敷の主ロジェ……。


「計り……ましたね……」

「計るなんて人聞きの悪い――なっ」


 近づいてきた彼に乱暴に押される。何故か体を支えられず転げ落ちる。手足がしびれて動かない。


「さてとではさっさと出荷の準備しないとな……」


 私が薄れゆく意識の中で最後に見たのは、初めて出会ったときと同じように。


 まるで商品を選別するような目で私達を見る彼の姿だった。


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