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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 14

「ロジェ商会ね……」

「クレナイさん、何か知ってますか?」

「んー……3番通りの交差にある景気のよさそうな店……だったかな?」


 レルカさんがあの身なりのいい男の商会について聞いている。と言っても約一週間待ちの外に居たという彼に聞いてもあまり知っている気はしませんが。


 ちなみに聞かれている男は今日もおかわりした固い黒パンを腹に詰め込んでいる。恐らく昼を抜く気でしょう。相変わらず変に貧乏くさいというか。


「そうだな、レルカが少し気になるってんなら知り合いに聞いてみるさ」

「……えっ?」


 知り合い?街の外に居て私たち以外の話題が今まで出た事ないのに?


「おいおいヤミ、その『知り合いなんているの?』みたいな視線を投げるなよ、少し傷つくぞ」

「外にいる筈なのに知り合いなんてできるんですか?」

「そりゃ行きかえりは街に居るし、別にラガーポートを出たら農家だっている。即、無人の荒野ってわけじゃないんだぜ?」


 そう言って肩をすくめる。言われて視界内にアイリスからもらった衛星画像を立ち上げる。

 確かに街の回り平原になっている場所には畑が点在していた。


「それは、失礼しました。まさかあなたみたいな無礼な人に知り合いができるとは」

「本気で傷つくぞ?」

「そんな感じには見えませんが」

「傷の治りが早いだけだ……ところで」


 冗談めかして言うと笑いながら返される。と思えばすっと真面目な顔になった。


「そういえば昨日、冒険者ギルドに行ったときに聞いたんだが、どうも仮登録をした人の中で何人か失踪してるやつがいるらしい」

「冒険者ですし別の町に行ったとかじゃないんです?」

「荷物を置いてか?」

「それは……少しおかしいですね」


 荷物を置いてほかの町に行くなんて事は無いでしょう。何かの事件か何かですかね?


「気をつけて置くには越したことはないって事だ」

「ギルドは何か対策を?」

「ああ、対策はしているらしいぞ?」


 顔が皮肉気に笑う、何となくわかってきたがこれは碌な考えをしてなさそうだ。


「……例えば?」

「周知……とかな?」

「何当たり前――」


 当たり前の事を言っているんですか、と言おうとして言いたいことに気が付く。当たり前のことだけをして対策と言い張っていると言う事は、ギルドは何もする気が無いと言う事でしょう。


「……何もしてないと一緒じゃないですか」

「そもそも冒険者なんて何人失踪しようが関与しない、それもまだ正式な登録さえしていない仮ならなおさらさ」


 そう言ってくっくっくと小さく笑う。……その顔はどう見ても教育上よくなさそうなのは分かってるんでしょうかね?








「お待ちしておりました、ヤミ様とレルカ様ですね」


 その商会の待っていたのは、小間使いと思われる少年だった。 


 大通りの交差する広場そこの一角、レンガ造りの大きな建物。看板には確かにロジェ商会と書かれている。この大通りにこれだけの店を出せると言う事は確かに景気は良さそうだった。


「ええ、そうですがどうして私達だと?」

「絹のような銀髪の美女とエルフの二人組と聞いてましたから」

「そうですか、一応ありがとうと言っておきますかね」


 少年はあっけらかんと言う。まあ確かにレルカさんは可愛らしいですし目立ちますかね?

 ん?今何か違和感が……。


「ヤミさん、褒められてるんですよ?君もどうもありがとうね」

「あはは……では訓練場にお連れします、こっちです!」


 何の違和感か分からないまま、張り切っている少年の案内で中に入る。依頼では警備と一緒に身の守り方を習うと言う事になっていた筈だ。


 置かれている商品を横目に見るとどうやらロジェ商会と言うのは、海の向こうから輸入した商品を置いている店らしい。別の大陸の文化も少しは気にはなる。そういう商品に混じってごく当たり前のように剣などが置かれているのはこの世界ではしょうがないのでしょうが。


「そういえばヤミ様は魔導士様か何かでしょうか」

「魔導士?」

「はい、どうやら杖のような物をお持ちのようなので」


 ああ、ライフルを見て杖だと勘違いしましたか。どう言いましょうかね――。


「実はこれは杖では無いんですよ、ええっと……」

「なるほど魔道具でしたか!それならうちでも少し取り扱ってますよ」

「そいうですか、後で時間があれば見させてもらいましょうかね」


 彼の中で魔道具使い、そう言う事になったらしい。

 魔導具、確か魔法を使った道具の事でしたよね。その文化も調査しないといけませんね。


 少年の中で納得したのか次はレルカさんの方を向く。少年の視線が胸に一瞬吸い込まれているのは、まあ言うのは野暮ですね。


 彼女は大小大きさの違う弓と長短の二種類の矢を持っている。故郷から持ってきた使い慣れている物だとか言ってましたが。

 

「レルカ様はその二張りの弓からして弓使い様ですよね」

「ええ、そうですよ」

「どうして二張りなんですか?」

「エルフの伝統的な弓術なんですよ」


 そう言うと小さい方の弓を取り出してつがえずに地面と平行に構える。ずいぶんと独特な構え方ですね。


「独特な構え方ですね」

「近距離用に置くように弓を置くんです、森の中は射線が通らないことも多いですから」

「なるほど」

「……となると、長い方は狙撃用ですかね」

「説明してないのに良く判りましたね?ヤミさん」

「何となくです」


 まあこれでも本職はスナイパーなので、とは言わないでおく。どことなく彼女に隠しているようで悪いですがね。

 要するに相対する距離によって使い分けるのでしょう。


「説明しないと判りにくい物です?」

「ええ、大抵わかりませんよ?……クレナイさんは何故か説明しないでも見ただけで判ってましたけど」

「やっぱりあの男元軍人じゃないでしょうかね……」

「そうなんですか?」

「私の勘ですがね?」

「エルフの弓術ですかー」


 そうやって話している間に商会を抜け裏手に回るドアに着いたらしい。向こうはどうやら試し切り用のちょっとしたスペースのようだ。


「おっと訓練場に着くので続きは中でお願いします」


――――――――――――――――――――

 システムログ:宇宙歴3000年6月15日


 現地時刻 13:45


 システム最終チェックシーケンス


 現地温度……28度

 培養槽内……36度

 万能細胞TK Type-M……変異率正常値内


 ハイパーキチン製骨格フレーム……強度正常

 人工筋繊維……配置正常

 バイオコンピュータ……正常

 メモリーユニットチェック……正常

 疑似神経回路……正常

 システムブート……完了

 カメラアイ……接続正常

 収音マイク……感度正常

 四肢マニピュレーター……正常


 六次元通信回路……ローカルネットワークへ接続

 疑似人格モデル:アイリス……転送完了


 全システム正常


 意識が浮上する……初めに捉えたのは薄い緑の液に満たされた培養槽だった。

 液の中で手が正常に動くのを確認すると、少女のようなそれを使い内側にあるハンドルを回す。


 少女の力には重いハンドルを回し切って押し開け、培養槽から這い出た。


「かはっ……ゲホッ……」


 肺に入り込んだ培養液を培養槽の入っていたコンテナの中にぶちまける。疑似肺が動き出しマテリアルボディに酸素を回らせる。

 視界を暗視へ切り替えて、明りの灯らないコンテナの出口を目指す。


 人工筋肉がまだ固まり切っていないようで、壁伝いに足を踏みしめる。

 しばらくしてたどり着いた出口を軋みを上げながら外に出る。


「そこに居るのは誰だ、それは友たちの荷物だ!どうやってそこへ入った!」


 出た瞬間にこの世界の言葉で声をかけられる。

 声を発した男を見る、眼帯をした右目からドランと言う名のドラゴンだと認識する。


 先日送られてきた言語プロトコルを起動した。


「この姿ではお初にお目にかかります。アイリスと申します」

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