ラガーポート Scramble 11
「おはようございますヤミさん」
「ええ、おはようございます」
「結局クレナイさん帰ってこなかったですね」
「街の外に行くとか言ってましたっけ?」
結局あの男は昨日帰ってこなかった。まあ昨日の森に行くと言伝を残して出ていきましたからね。
まさか、どっかでのたれ死んでるって事は……いまいち想像しにくいですね。エルフの森の奥で一人で生きてたって言ってましたし。
「まあ大丈夫ですよ――って話してたら帰ってきましたね」
「えっ? ああっクレナイさん!」
噂をすれば何とやらでしょうかね、見れば宿の入り口にあの男が……ん?なんか辛そうな顔でふら付いてますけど。そう思っているとそのままふら付いてレルカに抱きついた。
「うわっ!?」
「すまん昨日は徹夜でな……ちょっと眠らせてくれ……」
自分が何をしているのか気が付いたのか、そのまま離れてフラフラと階段を上っていった。
と言いますか二日連続で徹夜したんですか?あの人、見た目細いのにかなりタフですね。
まあ若干、酒臭かったですが――
「あわわ……」
「レルカさん、あれくらいで驚いていたら持ちませんよ」
レルカさんに水を飲ませてやると、それで少し落ち着いた。
あの男、もし酔って無意識にやっているんだとしたら一発ぶん殴った方が良いんでしょうか……?
「ふぅ……落ち着きました」
「どうにもお酒くさいかったですね、まさか私たちが働いている間に自分は稼いだ分を酒に使ってたんです?」
「飲まされたとかじゃないですか?クレナイさんお酒は飲みますけどそんな酔うほど飲みませんよ?」
レルカさんが言うならそうなんでしょうが。と言う事は飲まされた?
「……まさか盗まれてないですよねぇ」
「……?どういう事ですか」
「飲まされてそのまま、置き引きにあったんじゃないかって話です」
「まさか……」
二人で二階につながる階段を見る。と言うかあれだけフラフラで無事につけたんでしょうかね?上から悲鳴とかが上がっていないから大丈夫なんでしょうけど。
「まあ起きたら聞くとしましょうか」
「そうですね」
二人でため息をこぼす。あの男はいったい何をしていたんでしょうかね。
さて、残念ながらと言うべきなのかは迷うところですが。あの男の回復を待っているほど余裕が有る訳では無いのですよね。今日もギルドに行って仕事を探しますか。
それにしても私仕事持ち過ぎじゃないですか?ちょっと整理してみましょうか。
先ずはネヴァーサンセットの輸送船の調査ですよね。次にヴィルヘルムへの物資の援助先の捜索。あの男からの子守の依頼にこれから探すギルドの依頼。……ちょっと勤勉すぎませんかね私、過労死待ったなしな気がしますよ?
「ほら、朝食持ってきたにゃー……ってなんかお酒臭くないかにゃ?」
「どっかの酔っぱらいが人が働いている間に酒を飲んでいたらしくてですね……」
朝食を持ってきたマリオンさんが鼻を少し抑えながら言う。見た目は猫っぽいですが、どうも鼻が利くようですね。
「でもこのお酒と混じってる匂いは……クレナイかにゃ何か言ってたかにゃ?」
「いえ、寝るとだけ。何かあるんですかこのお酒?」
「にゃーこの匂いはあの店主の不憫な店かにゃ……」
「えっ?」
「なんでもないにゃ、徹夜かにゃ?美容には悪そうにゃ」
そのままにゃははと笑ってごまかされた。彼の行った店が匂いだけで判るんですかこの人は……。ひょうひょうとしていて、どうもこの人だけは掴めないんですよね。
何となく苦手意識を感じていると朝食と一緒にもってきていた2枚の紙を取り出した。
「それと依頼書、今日もいるかにゃ?」
「はい、マリオンさん助かります」
「良いって良いって、ヤミちゃんとレルカちゃんは昨日人気だったからにゃ。良かったら冒険者やめてうちで働かないかにゃ?」
「あ、ありがたいんですが、クレナイさんが居るので……」
「レルカちゃんなら男一人くらいは養えるにゃーよ」
「それなら……」
「……あの男は養われるのは断りそうですね」
無駄に異世界の常識持ってますし普通に断りそうですが。いや私も異星人で異世界人みたいなものですが。
「あ、それもそうですね」
「にゃー……なかなか上手くいかないにゃー」
予想していたのか毛ほども残念そうな様子の無いマリオンさん。ダメで元々だったんでしょうけど、こうも露骨だと何も言う気起きませんね。
「まあ、有難いですよ根無し草の私達にとっては……あれ?」
置かれた紙を手に取る。内容は昨日と同じ宿屋ウェルナンのアルバイト。主に内容はウェイトレスでチップは懐に入れ込んで良いという約束でしたが……。
「期間間違ってませんか?六日と書かれてるんですが」
「あってるにゃーよ?一日ごとは更新めんどくさいし二人とも人気だったから問題にゃーよ」
「これじゃ先ほどの話を受けまいがどっちにしろ変わらないのですが……」
「ちなみに私からはそれしか出さないからにゃー、自由意思で決めるにゃーよ」
くるくると笑ってカウンターに戻っていくマリオンさん。これを蹴っても昨日の様子だとギルドには既に他に依頼はないでしょう……まんまと一杯食わされた、そんな所でしょうか。
「どうしますかね?」
「受けるしかないでしょうね……」
幸い仕事としては良い方なのが幸いですが、どうにも強引な感じを受けるのだった。




