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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 9

「おいっ!大丈夫……うわっ何だこりゃ、まるでハリネズミじゃねえか……」


 悲鳴を聞きつけたのか慌てた様子で商人が来ているのが聞こえる。

 俺は一部気絶したり怯えた表情で見てくる檻の子供達を一瞥する。馬車の外に出た。


「何をし……って、うおっ」

「よう戻ってきたのか」

「って兄さんか、血だらけだけど大丈夫なのか?一瞬わからなかったぜ?」

「ああ、ただの返り血だ。傷一つないよ」

「二人相手に無傷とかあんた一体何者だよ……」

「さあな、今はただの冒険者だ」


 それだけ言うと言う気が無いと思われたのか肩をすくめられた。誤魔化したと思われたか?どうもこういう誤魔化され方になれているようだ。それにしても――


「そう言う商人、お前は……奴隷商だったんだな」


 奴隷……税を収められなかったり、犯罪を犯したりすると落とされる。制度としてあるのは話に聞いていた。ラガーポートの周りにも小作農のようにいたのも見ている。


 だからあの時商品たちと言ったのか、確かにコレはそう言うしかない。


「まあな、ちゃんと許可証もあるからな?」

「一応後で見せてくれ」


 奴隷商の許可証……俺には少々違和感がある話だ。だがこの世界ではそういう制度がちゃんとある。

 だから、たとえ訴えても、異世界の人間である俺の感覚の方がおかしいと言われるだろう。


「それにしても、俺はなぜか怖がらせてしまったらしくてな」

「それはもしかしてギャグで言ってるのか?」


 どういうことだ?


「髪の色さえわからないほど血だらけの人間が来たらそりゃ怯えるだろうよ」

「ああ……」


 あきれたように言われて今の自分の格好を思い出した。

 森の近くと言う事で軽く施したフェイスペイントに狩りと時に臭いを誤魔化すための毛皮を模したフード。そして全身の返り血と血みどろの剣……。これは確かに子供なら泣くな。


 フードを取る見れば確かに血だらけだ。これはもうダメかもしれないな……。


「……理解した、冒険者のクレナイだ、握手は今手が汚れてるから勘弁してくれ」

「あっああ……ネストだ、ネスト・ブリッジ。お前さんその髪……」


 髪?ああ、そうかいつも間違われるからな。


「違うよ、俺は勇者じゃないさ……」


 俺は断じて英雄なんて器じゃないだろうさ。












「ゆうしゃさまー、そろそろお肉焼けるよー」

「よし、みんなを集めてくれ、夜食食ったら馬車を直して移動するぞ」

「わーい」

「ほら、これ先にやるよ」


 狩っていた獣の肉を一緒に焼いてくれた首輪のついた少女に渡してやる。喜びながら集めるために去っていくのを見ているとネストが荷馬車のほうから戻ってきた。焼いている串から一本渡してやる。


 あの後、俺は彼らがラガーポートへ行くまでの間護衛する契約をした。俺は何かしらで稼がなくちゃならなかったし、彼らも護衛に雇っていた冒険者が急な盗賊でやられてしまったためだ。

 報酬は大鉄貨幣二枚で良いと言ったらそれは少なすぎると逆にごねられたが。


「すっかり勇者様やってるじゃねえかよ」 

「この年で勇者様はよしてくれ……」

「良いじゃねえかよ、そもそもその髪色と目で言われねえのがおかしいんだ」


 誤算と言えばすっかりあの奴隷たちの中で、俺は盗賊から救いに来た勇者になっていることだろうか。

 勇者と言えば若者と言う印象がある、俺からしたらどうしても違和感しか感じないのだが……。


 違和感と言えば奴隷もか……どうしても俺には首輪に暴力的な印象しか浮かばなかった。


「にしても奴隷……ねぇ」

「どうだ?お前にもよく懐いている、冒険者で奴隷を持ってるってのも少なくはないだろ」

「その営業努力は買うが俺には買う金がないからな……」

「そいつは残念だ、今回の報酬っていうにはあいつ等の額は高すぎるからな」


 価値を聞いたが、だいたい金貨1枚からだそうだ。確かに護衛の報酬には多すぎる。まあ貰っても他の命なんてものは確実に持て余すだけだろう。特に俺なんかは別世界の常識が邪魔する……。


 ネストの指示で荷馬車の修理をしている子供たちを見やる。子供と言っても魔力があるからやはり俺の知っている子供よりも力がある。

 俺のアイディアで荷馬車の使える部品を合わせてニコイチしていたがもうそろそろ終わるようだ。


「ずいぶん、保護してやってるんだな」

「そりゃそうだ、俺はあいつらの命を親から預かってるからな」

「命か……」


「そうだ、あいつ等の親は税を払えなかったが為に、他の家族を守るためにあいつ等を売り払った。そしてあいつ等は物は分からねえが馬鹿じゃねえから、その事がわかっている。だから一生懸命働くんだよ……」


 あの子たちは馬車が使えないと判った時にはどうするか唖然としていたが、指示をだしてやればできない事は無かった。

 物を教わる環境が無かっただけで……断じて何もわからないわけじゃは無い。


「俺はそんな思いを守る為にあいつ等を信頼できるところに売る、それしか俺は出来ねえんだよ」

「……」

「まあ俺は異端さ。もちろん物扱いみたいな、ひどい扱いするやつも同業者には多いが、俺はそこまで落ちたくないね」


 ネストはそう語るとせっせと働いている子供たちを親のような目で見る。奴隷商には奴隷商の考えって物があるんだろう。

 全員がネストのような考えとは思わない方が良いんだろうが。


 子供たちが来るまではもう少し時間はあるだろうか、荷物から煙草を取り出すと煙管に詰める。

 気が付いたネストが火をつけようとしてくれるが、それより前に子供たちがやってきた。


「ありがとう、火はもう良い」

「良いのか?」

「子供の前じゃ吸わねえんだ」


 貰ってから吸えたことがないがと言うのは付け足さないで置いた。


「ゆうしゃさま、ばしゃなおったって」

「よし、食べたら移動するぞ!」

「「おー」」


 子供達が食べている間に、ネストと2頭立ての荷馬車の確認をする。現地で修理した割にはゆがみなどは軽く見た限りはない。

 まあ、こんな物だろうか。全速力を出さなければ十分大丈夫だろう。


「上出来じゃないか?」

「まあな使える部品を取り出すなんてな、お前の頭が柔らかくて助かったよ」


 そんなにか?まさかニコイチなんて概念がなかったなんて事は無いよな……?

 まあ緊急時って事で何とかなるだろうかと考えその疑念を振るうと馬に向かう。


 賊があとで使うつもりだったのだろうか、暴れて傷ついた1頭を除いて馬は3頭残っていた。もちろん馬車用なので鞍などはないが。


「一頭余るな、馬車につなげておくか?」

「ああ、それは俺が乗る。空きはないしその方が早いだろ?」

「乗るって言っても乗る鞍がないぞ?」


 心配するネストを制して繋がっていない一頭に近づく。慌てないように撫でながら、荷馬車用の轡に縄を通して手綱にすると。高さを図って先ほどのケプラーロープで足を置くあぶみを作り上げる。


 この生成した紐はきちんと実態を持っていた。そう思えばこれも不思議なものだな無から有を生み出しているような気がするが。まあ水属性の魔法や生活魔法の水も無から作り出しているようなものだから魔法とはそういうものなのだろう。


 後は重量が一転に集中しないように魔力で操って編み上げてやる。紐が勝手に動いて数十分で即興の乗り台は出来上がった。


「修理しようと言った時も思ってたがクレナイ、お前やけに器用だな」

「冒険者なんて、いろいろ出来ないと生きてけないだろ?」


 引っ張って強度を確認する。今は魔力をかけて補強していないが十分に丈夫そうだ。


「そ、そうか……? ところで馬の扱いに慣れているようだから聞かなかったが、馬に乗れるのか?」

「ん?ああ……どうだろう?」


 たぶん知識にはあるから乗れるのだろうが。どうだろうか?


「おいおい……」


 ネストの呆れ声には多分大丈夫だろと楽観的に答えておいた。

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