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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 8

「死ねやぁ!」

「商人、邪魔だ!下がってろ!」


 戦闘は開始の合図もなく始まった。


 賊達が背中から抜きざまに振るってきた剣を弾く。強化を外骨格のように纏った一撃を捌く。

 正面からは受け止めず流していく、不思議と澄んだ音が響き渡る。


――ああ、思い出した。


こいつ今朝方ギルドで難癖付けてきて返り討ちにした奴らだ。確か名前はスーガだったか……?

 冒険者ギルドを追い出されて行く場所も無くて賊に落ちたのか。行きつく先がそこしかないとは安直と言うか。


「……冒険者から盗賊に鞍替えしたのか?」


 薙ぐように振るった剣を追うように間合いを詰めていく。

 しかし、そんな鞍替えした奴らにその日のうちに合うとか、俺も相当運が無いな。


「元はと言えばてめえのせいだろうが!」

「責任転嫁もはなはだしいな、そんなんだからギルドを追い出されるんだろうに」

「っなろ、しゃらくせえ」


 二人分の剣を掻い潜りながら周囲を把握する。商人はちゃんと逃げ出した様だ。

 この周りは森から草原へ変わるところで一面低い草生い茂っている。伏兵の心配はない、正面の二人以外は考えなくても良いな。


「それで他のお仲間はどうしたんだ?もっと居ただろう」

「あ゛?今は関係ないだろうが」


 これは愛想をつかされたか?まあカリスマがありそうな奴ではないからな。


 力任せに振るわれた剣が風を切る音が聞こえるほどギリギリで避け。そのまま後ろのもう一人にぶつけようとする。


 ニ対一の基本は片方の攻撃の間合いにもう一人を紛れ込ませる事だ。魔力での強化込みの両手剣の破壊力は周囲を巻き込んで余りある。


「っ危ねえだろうが!」

「すまねえボス」


 仲間を巻き込まないように出来た一瞬の隙をついて掻い潜る。そして避けながら振り切った腕を斬りつける。


「なんだ?虫が刺したようなもんだな」

「ッチ……」


 強化が乗ってない剣じゃ流石に無理か。俺の攻撃が通らないと知るとさらに激しく振るってくる。

 当たらないようにギリギリで躱しているがどうしてもジリ貧だ。


――何もない限りは……な?


 耳元を唸る剣がうるさいが意識から外して詠唱を始める。


「我は望む、純然たる無垢なる力よ……」


 変換をしている暇はない。引き出した剥き出しの魔力を強引に操っていく。


「魔法の詠唱だ!止めろ!」


 大きく薙いでくる剣をほぼ無意識にかがんで避ける。次いでそれを追うように振り下ろされた剣を手元で弾く。


「全てを辿たどり、たぐり……」


 呟くような詠唱はそのまま。切り返してくる剣と跳ね上げて来る剣を立ち位置で操ってぶつけさせる。


「それは見飽きたぜっ!」


 スーガがすでに慣れた様子で立て直す。


――しまっ。


 理想よりだいぶ早い。不完全な格好で受けたため勢いを流せず取り落とす。


「死ねやあああ!」


 そのまま剣を振り上げ切りかかってくる。避けるのには間に合わな――。


「……バインド·ストリングス!」


 完成した詠唱を元に溜めていた魔力が溢れ出す。立ち回りながら草の影にばらまいたロープが魔力を食らって生き物のように動き始める。


「何だ……こりゃ……」


 スーガの振り下ろした剣は、俺の頭の数センチ上で無数のロープに絡め取られていた。その後も次々と現れたロープがスーガの手足を森に結びつけていく。


「こんな紐ごときすぐ千切って、ぐぐぐ……」

「クハハッ……」


 空中に貼り付けにされた賊たちがもがく。引っ張ったところで切れるはずがない。身体強化と同じだけの精度で練り上げられた魔力の縄は、すべてのアラミド繊維の中で一番強いケプラー49よりも強い強度を持っている。


 この魔法の威力が乗らない俺が考え出した。大量のロープを魔力で編み出して戦場を支配する魔法だ。

 身体強化が魔力を使った外骨格なら。これは人との違いを考えず全てを外骨格で操る魔法と言えよう。


 俺の知識の中にしかないケプラー繊維の生成式に詠唱の大部分を使ってしまっているため。少々詠唱に時間がかかってしまうのが難点だが発動してしまえばこの通り一方的に相手を拘束できる。


「ボ、ボス!」

「こ、コケ脅しだ!こんな大規模な拘束魔法長く持つはずがねえ!あいつの攻撃は大したことねえから魔力を巡らせて守るんだ」


 空中で捕まった状態でスーガが喚く。……意外と鋭いじゃないか。


「確かにな、もって十分が今の俺の限界だ」

「やっぱりなっ流石俺……」

「だから手早く終わらせよう」


 言うと同時に左手を振り上げる。呼応するようにロープが草の中から剣を掴んだ。


「なっ二重詠唱?いや、どこからそんな数の剣を……」

「あったさ、最初からな」


 草の間から鋭利な刃が首をもたげる。

 ……この剣をそこらじゅうに撒き散らしたのは、お前らじゃないか。


「やめ……」

「……」


 手を振り下ろす。草影から飛び出した剣の山にを身に浴びて。ソレらは息絶えた。


「クハハッ……」


 嗚呼、俺は……今、笑っているだろうか?









 未だ雫の滴る剣を引き抜く。吹き出した飛沫がかかるが今更だ。


「さて馬車の中身はっと……」


 そのうちあの商人は戻ってくるだろう、がその間にスーガ達の漁っていた馬車に近づく。

 ブービートラップがかけられている事も警戒して、剣は抜いたままだ。


――ん!?


 馬車布に手をかけた時中で動いたような気がした。緊張を一気に引き上げると剣を突きつけながら一気にめくり上げる。


「動くな!手を上げろ!」


 馬車の中身は冷たい大きな牢が一つ。中身はまだ子供と言ってもいいくらいの子供――。


「「やめて殺さな……きゃあああああああああああああああああ!」」


 夜の森に首輪を付けられた人間達の悲鳴が響き渡った。


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