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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 7

「セイッ!」


 ラガーポートから数時間の所にある森の近く。はぐれた様な一匹の狼を見つけ強化をかけつつ強襲する。

 一太刀目は避けられた。腰につけてた縄を操ってその場に残して下がると口の中で詠唱を開始する。


「ヴォウ!」


 唸り声を上げつつこちらに向かおうとする狼に縄をけしかけて足を止めさせる。

 上方に飛んで逃げようとするがそれは織り込み済みだ。


「アクアアロー!」


銃の形にした指から放たれた水の弾丸がまっすぐ飛ぶ。空中で狼の頭に当たると少しそれをよろめかせる。


「これで七!」


よろめいた時に見せた隙に狼の首を叩き切る。

胴体と頭がわかれドサリと頭の無い体が崩れる。俺は周囲の安全を手早く確認すると剣をしまった。


「魔法を使った戦闘は慣れてきたが……やっぱり俺の魔法は威力不足だな」


 水に濡れただけの狼の頭を見てそう呟く。

 だがあんな威力じゃ水鉄砲と変わらない。魔力の操作で生活魔法などは慣れてきたと思ったが、どうしても威力が上がって来ていない。


 前に見せてもらったレルカのウィンドアローなどは当たった瞬間に弾けて拳銃並みの威力を持っていた。もしかしたら俺の魔法は何かが間違っているのか?レルカに聞いたら分かるだろうか。


 そもそも魔法は前衛が固めた後ろから、しっかり詠唱して強力なもの放つ分業性が主流で。俺みたいに前衛として戦闘中の合間に詠唱する魔法剣士のような戦い方をするものでは無いらしいが。

 レルカも弓を引きながら詠唱するのが手一杯だと言っていた。その辺りの器用さは俺の魔法の有用さだろうが。


「でも身体強化を使えばアローの魔法程度なら弾けるんだよな」


 アロー系列よりもっと強い魔法もあるし、それらをまとめて弾ける障壁もある。そう考えると威力不足だ。

 ん?拳銃並の威力が軽く弾ける?もしかしたらこの世界で銃はあまりその力を発揮出来ないかもしれないな。


 俺は頭から討伐した証である牙を切り取ると体を切り開いて心臓を探す。見つけだした魔物の心臓の付近から、小さなクリスタルのような石を取り出す。


「この魔石は……ちょっと大きいか?運がいい」


 この石のような物は魔石と呼ばれている。魔力が含まれていて魔導灯のような人から離れても動く魔導具を動かすのに使う。

 大きければ大きいほど値段が高くなり、握りこぶし大の物は銀貨数枚にもなる。

 これを取ってくるのも冒険者の主な仕事だ。色々な物に使うから大きさの割に換金率が高い。

 このサイズなら大鉄貨くらい行くかな。


「もう日暮れてきたな、急がないと」


 俺は残りの売り物になる部位も剝いで死体を処理すると、俺は血だらけになった手を洗って今日の寝床を探し始めた。













 狩っていた狼の肉を焼いただけの夕食を食うと、適当な木を見繕うと登って枝に縄で体を縛る。寝袋なんて気の利いたものはないのでマントを使って暖を取って寝る事にする。一日位ならこれで十分だろう。


「何だかエルフの森に居た時を思い出すな」


 こうして獣から隠れつつ眠ろうとすると森の中で獣から逃げながら生活していた時を思い出す。つい1ヶ月くらい前だと言うのにずいぶん懐かしい気分だ。

 ただあの時と違うのは道具も充実しているし、文明人らしい生活が出来ているって事か。


「こうしてルノを見上げる余裕も持てたしな」


 枝の影から見えるルノは今、8の月15の面をこちらに向けている。あのルノは約30日で面が一周する。それがこの世界での月と日付の定義になっているんだから、どうも妙なめぐりあわせだ。


 ヤミはいつか宇宙に戻ると言っていた、たぶんその事を聞いた俺も付き合うことになるのだろうか。

 そういえばヤミはあのルノに剣が刺さってるとか言ってたか?今宇宙がどうなってるかわからないがそのあたりがヒントになるのかもな。


 しかし俺は元の世界に戻れるのだろうか?どうだろう?


「……もし戻れるとしても記憶が戻らないとどうにもならないかな」


 その世界で生きた記憶が無かったらどうしようもない。俺はそう結論付けて目をつぶって考えるのを辞め――。


 キーン……。

「!?」


 遠くで何か金属同士をカチ合わせたような鼓膜を震わせ沈みかけた意識が急上昇する。


「……戦闘音か?」


 断続的に複数種類聞こえてくる金属音に人どうしの戦いだと断定する。俺は結びつけていた縄をほどき、腰のあたりに魔力で巻きつけ枝から落ちる。


「俺は関係ないが……偵察だけはしないと」


 こんな夜更けに戦闘を始めるような奴らだ少なくとも片方はまともな奴では無さそうだが。


 そう思いつつ方向を耳で探す、段々とカチ合う音が減ってきている。

 どうやら大勢は決してきたらしい、その音の方向に草と木で身を隠しつつ向かう。


「……あった」


 移動する事数分、森の街道沿いに止まった二台の馬車が見えてきた。

 その周囲はやけに明るく数人が動いているような音が聞こえる。


 隠れている木陰から覗き見る、無駄に明るくてらした馬車の周りで数人が戦闘で死んでいるのがよく見える。馬車は御者と軸が切られていて、すぐには動けなかったようだ。

 残っているのは馬車側は商人然とした男が一人だけ。それに盗賊側3人、商人を一人に任せてボスと思わしき大男が馬車の中身を確認している。


 縛られている気の強そうな商人と目が合う。商人は俺と目が合うハッとしてと口だけで「たすけてくれ」と言ってくる。


 大声で叫ばなかったのは怯えているからか、それともまだ理性が残っているからだろうか。


「……凄えぞ、やっぱり俺は出来るやつなんだ」

「そうッスよボスは最高ッス」


 馬車に夢中なボスたちは置いて、商人を見張ってる男の背中に狙いを定めて剣を抜く。気が逸れてくれればいいが、構えたところで商人と目があって――。


「おい!積み荷の中身は俺じゃないと売りさばけないんだぞ」


「あ゛?今更命乞いか?お前は荷物を確認したら用済みだっ、ムグ――」

「……動くな」


 良い掩護だ。素早く近寄って男の首の裏に剣を食い込ませる。黙った男に口に布を噛せて喋れなくしたところで首を絞めて気絶させる。


「良いタイミングだった」

「商人たるものタイミングは逃せねえからな、そっちもかなりいい腕だ」


 商人を縛っていた縄を切って助け出す。怯えてるのかと思ったがそうではなさそうだ。どうやらかなり豪胆らしい。

 俺が賊を縛っている間に、彼は落ちていた剣を拾うと盗賊のいる馬車に向かおうとしている。


「おいおい荷物が気になるのは分かるが待て、逃げるぞ」


 静かに言い聞かせるように声をかけながら、腕を掴んで引き止める。構えを見てもわかるがどう見ても戦えるようなやつじゃないだろう。


「そういう訳には行かねえんだよ、俺の大事な商品たち何だから」


「……は?商品たち?まさか自分の売り物に情でも移ってるのか?」


「ちげえよ!そんなんでやってけるはず無いだろうがでも……」


 ん?いまいち噛み合わないな?

 こんなことやってる間にもいつ盗賊が馬車から出てくるか――。


「よし後は男は殺して女は……って、なんで商人の縄が解けてるんだよ見張りはどうし――」


 どうやら遅かったらしい、馬車から出てきたのは何処かで見たことのある両手剣を背中に持った大男が二人……。

 その片方が俺を確認すると指を指して叫んだ。


「お前は今朝の!」


 ん?……えーっと、誰だ? 

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