表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
40/56

ラガーポート Scramble 6

「では最後に血をここに」

「血か?」


 俺はなんとか受付嬢の語る剣聖アランの英雄譚を途中で止めて登録を進めさせている。

 今のアランを知ってると笑えて来るな。今度あのおっさんに合うときはこのネタで弄ってやるとしようかな。


「はい、血にはその人個人の魔力が幾らか含まれてるのでそれをカードに登録させるんです」

「なるほどね」


 どうやら魔力には個人ごとに独自の特徴があり、特殊な魔導具で調べる事が出来るのだとか。

 要するに指紋の様な物なのかね?受付嬢の取り出した針を受け取りながらそんな事を漠然と思う。


 しかし同じ針の使いまわしとか感染症が怖いなこれ、キチンと消毒しているんだろうか?


 このあたりの衛生の概念もあまり発達していないんだよなこの世界は。と言っても俺自身も応急処置レベルの知識しかないんだが。


 昨日ヤミと話したように異世界の知識はあまり持ち込まない方が良いんだろうか?

 正直付け焼刃な知識で"知識チート"だなんてやってもいつか足元をすくわれる気がしてならないからな。


「どうしました?」

「この針、いつもそのまま使いまわしているのか?」

「はい、そうですが?」

「そういう風に何人もさしていると針を通して"悪い気"が移ると聞いた事があってな、一応度数の高いアルコールを含ませた布で拭けば大丈夫らしいが」

「そうなんですか?ちょっとマスターに提案してみます」

「あと定期的に研ぎなおした方が良いだろうな」


 このあたりのアドバイスが限度だろうか、採用するかは彼ら次第だ。


 一応万能用に持っていた酒を使って消毒すると、針で指先を刺し差し出された魔導具に血をにじませる。しばらくたつと魔導具が動作してランプが緑に変わった。どうやらカードへの登録はこれだけで良いらしい。


「回復いりますか?」

「ん?ああ、こんな物つばつけとけば治るだろ」


 指先を舐めてやればすぐに血は止る。これ位の傷で回復魔法なんて大仰な。

 そう聞けば、気になる人も居るから一応聞いているんだそうな。そんなものだろうか。


 そう思っていれば受付嬢が冒険者心得と書かれた冊子を出してくる。


「それでは完了までこれでも読んでいてください、文字は読めますよね?」

「まあ一応はな……それでこいつはなんだ?」

「冒険者の心得を書いた冊子です、汚したら鉄貨10枚の罰金がありますので綺麗に読んでくださいね」


 文字が読めないなら読むのに別料金らしい。まったく何事にも金はかかるな。

 受付のカウンターに寄りかかったまま 中身を流し読みする。


 まず人様に迷惑をかけるなと言う事が長々と書いてあった。まあ当たり前だな、先ほどのスーガとかいう男の様な事をしなければいいと言う事だ。彼は結局どうなったんだろうか。

 もう会う事のないであろう彼は置いて置いて次だ。再発行についてだな、カードを無くした際は再発行に鉄貨30枚かかると。結構高いな、おい。


 最後にこのあたりによく出る出る魔物……ここは重要だな。

 最後の魔物の部分だけはきっちり読み込んでおく。


 良く居る角兎等は置いて置くとして、他にはそこそこな強さの狼の様な魔物が出るようだ。


 上手く解体すれば一匹当たり大鉄貨2枚相当。これは結構美味しいかもしれない。ラガーポートの近く、と言っても出る場所が少し離れているのが厄介だが。


「はい、終わりましたよ?」


 各魔物の弱点と価値のある部位を出来るだけ頭に入れていると声がかかる、どうやら終わったらしい。

 こちらに向かって差し出されたカードを摘まむ。

 

「ありがとさ――なんだ?」


 摘まんでも受付嬢はカードをもった手を離そうとしない。どうした――。


「登録料、鉄貨20枚になります」

「金……取んのかよ」


 登録料……だと?

 しまった、この世界だとほとんどサービス料金は先払いだから、考えから抜けていた。


「もちろんですよ」


 声を弾ませた弾ませた彼女は、これまでで一番の笑顔でそう返して来たのだった。












「またのご利用をお待ちしていますー」


 無駄に良い笑顔の受付嬢に見送られて建物を出る。時間は既に昼を過ぎている。


 結局あの後、冒険者用の1週無利子の借り入れをさせられた。


 利子が無利子なのはギルドの良心です。と言っていたが完全に嘘だ。

 契約書の下に小さく1週間を超えた際の法外な利子が書いてあったのを見逃してはいない。

 超えたら非常にまずいだろう。


「はぁ……」

 

 仕事を探しに来て借金作るとかどこのとんちの話何だか……まああくせくと働くとしよう。


 時間は昼だが腹の具合はまだ大丈夫だ。朝お代わりできると言うのでパンを詰め込んでいて助かったか。


「しっかし如何するかな」


 目下の問題はだまし討ちの様に払わされた登録料だ。1週間以内に大鉄貨2枚。


 金銭価値は、大鉄貨1枚で1日暮らせると言われている。その額を稼ぎながらさらに2枚ね……

 正直ギリギリな額だ。


「こうなったらマリオンにでも頭を下げ……いや止めておくか」


 さすがに昨日、知り合ったやつに金を借りるほど落ちぶれたくはない。

 いや最悪頭を下げるとしたら一週間も昨日も変わらないかもしれないが。


 幸いにも登録したおかげで外で魔物を狩った分は換金できるようになった。だがどこで狩るか。

 街の近くの魔物をちょこちょこと狩った所で稼ぎはたかが知れているだろう。


 脳内で先ほどの本と街の周囲を思い出す。ラガーポートの周囲は広い平原だ、危険な魔物は少ない。

 手っ取り早く稼ぐなら少し遠出をするしかないか。


 そうすると1日では戻ってこれない距離になるな……。


 俺は一回ウェルナンへ戻り、今日は戻れないと伝言を頼むとラガーポートから逃げるように出発した。

 目標は狼を10匹と言ったところだろう。

お読み頂いてありがとうございます。

ご感想お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ