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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第三章:ラガーポート Scramble
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ラガーポート Scramble 4

別に交互の視点で行くわけではないのです。

「そこまで!」


 俺が立ち上がろうとした所を転がしていると、そんな言葉が飛んできた。見れば奥から別の男がこちらに来ている。男は見物しているギャラリーをかき分けて来ると、転がってる男と俺をギロリと見て。

 

「何があった?」


「さあな?こいつ曰く本登録の前試験だって話らしいが?」


 威圧を含めてぶっきらぼうに言う男に、俺は顎で倒れてる男を指してそう返す。


「またお前かスーガ!お前この間も問題を起こして、その時に次やったらギルドを辞めさせるって言ったよな?」

「マスター違うんだ!こいつが……」


 猛烈な勢いで怒り出した。マスターと言われているからここのトップだろうか。


「こいつが、如何したって?遠目に見てたがお前から話しかけてたじゃねえか」

「あがっ……」

「それに本登録の試験はギルドの立会いの下にやるんだ、お前が勝手にやっていい事じゃあ無い」

「むぐ……」


 もう大勢は決しただろう、まばらに散り始めたギャラリーに交じってヤミたちの方に戻る。


「大丈夫か?」

「おかげさまで、ですがもう良いんですか?彼、有る事無い事言ってそうですけど」

「仮にもギルドマスターだ、目撃者も多いし大丈夫だろう」


 そう言っている間にも周りと話して裏を取っている。この分なら変な事にはならないだろう。


「それにしてもクレナイさん、最後何をやってたんですか?なぜか勝手に転んでいましたが」

「ああ、あれか?説明するのは難しいんだが……」


 立ち上がろうとした時の力の動きを見きって後はその方向をずらしてやる。口で言うのは簡単だがなかなか難しい。


「たとえばそうだな、レルカちょっと手を出してくれ」

「はい……?きゃっ!」


 出された手を取り一瞬強く握ると同時に自分の方に引っ張る。反射的にレルカが手を引こうとした所で押し込むと、彼女は倒れそうになる。


「――まあ、こんな感じだ」

「なっな……」


 持っている腕を引き上げて腰のあたりを持って支えてやる。倒れそうになったのを引き上げた時、半ば抱き寄せるような形になったのはご愛嬌だろう。顔が真っ赤になったレルカを立たせてやる。


「なーに、イチャついてるんですか?」

「い、イチャ……」

「そんなんじゃねえよ」


 一部始終を見ていたヤミが冷たく言い放る。まあ、見てればそうも見えるか。


「お前ら、ちょっと良いか?」

「……ん?」


 見れば先ほどのギルドマスターがこちらに来ていた。あの喧嘩を売ってきた男はもう居ないようだ。


「あいつはもう良いのか?」

「ギルドカードを無効化したからは仮からやり直しだな、っと自己紹介が遅れた。ダインだ、ここでギルドマスターをやっている」

「クレナイだ、ここには本登録と金稼ぎをしに来た、ヤミとレルカの二人は仮からだな」

「なるほどな、そうすると……」


 ダインが申し訳なさそうな顔をして掲示板の方を見る、釣られて見るが確かにもう依頼が数個しか残っていない。

 俺はウェルナンからの依頼書を取りだした。

 

「その点は大丈夫だ、懇意にしている宿から仕事を貰っててな」

「ならよかった、どうやら物が判ってそうな冒険者で助かるよ」


 ダインはそう言うと迷惑料とか言って、ちょうど休憩に入ろうとしていた受付にねじ込ませてもらった。そのまま奥の部屋に帰ろうとしたダインは、思い出したように止まって苦笑しながら首だけこちらを向けた。


「ああそうだ、スーガ……あの男から伝言だ」

「?」


 伝言だと?


「覚えていろよ、だそうだ」


 その言葉に俺も苦笑するしかなかった。













「そう言えばどうしてギルドを経由するんです?あの宿屋で受けてしまえば、こんな面倒事もなかったのでは?」


 休もうと思った寸前に仕事を入れられた哀れな受付に仮登録用の書類を渡された。

 まだ完璧に字の書けないヤミの代筆をしてると、そんな疑問を投げかけられる。


 まあその疑問は最もだ、確かにギルドを経由せずに仕事受ければ中抜きされ無いですむ。


「理由の一つはあの店がギルドとの提携をしてるからだな。懇意にしてればギルドの受付で紹介して貰えるだろう」

「なるほど広告料ということですか」


 常日頃からギルドと連携を密にしていれば、あの宿のメインの顧客である宿無しの冒険者に紹介してもらえる。ついでにギルド側は街中の仕事を得られてウィンウィンと言うわけだ。


「名前はヤミ、種族は……ヒトで良いのか?」

「それが一番無難ですかね……理由の一つと言いましたが、まだあるんです?」

「出身は空欄で……もう一つは俺達、冒険者側の理由だな。根無し草の俺達みたいなやつでも今までどこでどんな仕事をしてきたかをギルド側で管理してくれるんだ。得意武器は……『銃』とは書くわけにはいかんぞ?」

「短剣と……槍で。なるほど信用の保証って事ですか」


 そうだな色々なところを行ったり来たりする冒険者向けに、その身分の保証をしてくれるという意味では、信用というのが一番近いな。社会体制が中世くらいのこの世界では、信用の保証が大変だからな。そういう意味ではあのスーガと言う冒険者は大変だ、いや元からあまり評判はよろしくなさそうだが。


 しかし少々意外だが槍か、いい武器だな。


 やはり空欄が多めになるが書ける項目だけ書いて受付の譲さんに渡す。すぐ後にレルカも自分で書いた紙を渡していた。横目に見ただけだがやはり記入欄が多く埋まっている。

 このあたりの空欄の多さも信用に影響あるんだよな……流石に出身地に『地球 日本』なんて書いてもしょうがないが。

 ちなみに記憶がないのに出身が日本だと判明したのは。その地域の知識が異常に多い事からの予想だ。まあ日本だろうと亜米利加(アメリカ)だろうとこの世界には無いから意味は無いんだが。

 そう思っているとあっという間に確認されて判子が押され。二人に紙が返される。このあたりは一度受けたが流れ作業だな。

 

 さて次は俺の番だ、バッグから仮登録の紙を出して受付に渡す。


「さて、話は聞いてると思うが、こいつを本登録にしてくれよ」


「少し聞いてましたがクレナイさんでしたか?そこまで判ってるなら受付なりませんか?」


 紙を受け取りつつ言われたのは、冗談交じりの受付への勧誘だった。確かに魅力的な話だが魔人が向かって来てると言うのに一所に居る気はない。


「素敵な話だが、まだ腰を落ち着ける気はないかな」

「そうですか。ええっと推薦人はアラン?……これ本当ですか?」

「なんだ、知り合いか?」


 なんだ、こんな若い子に知り合いがいるのか?あのおっさんも妻一筋に見えて案外隅に置けないな。


「いえ、ですが剣を使うのなら貴方も聞いたことがあるでしょう?特Aランク冒険者の剣聖アランを」

「は?特Aランク?」


 剣聖?特Aランク?確かにAランクとは言ってたが特?


「ええ、実力としては伝説のSへ行ってもおかしくなかったのですが、平民出身のために特Aランクと言うランクが特設されたのです」


「はあ……」


「何か反応が薄いですね良いですか……」


 それからあのおっさんの自慢話が始まった。どうやら彼のギークか何かだったらしい。


 受付嬢の聞きに回る。どうせ俺は街の外に行くから時間は良いが、ヤミ達にはもうウェルナンに戻るように言う。


 ちなみに本来は有る戦闘能力の試験はアランが先にやっているからしなくて良くなったらしい。


「……その時彼は何を言ったかと思いますか!?……」


 ……何故だか、それ以上の時間がとられているような気がするんだが。

お読み頂いてありがとうございます。

ご感想お待ちしております。

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