ラガーポート Scramble 3
ウェルナンのある一本入った通りを出ると、レンガ建ての建物が立ち並ぶラガーポートの大通りにでる。馬車が数台悠々と行き来できる通りは、昨日来た時も思ったが相変わらず人が多い。探せば無い物などないと言われる街だ、こんな通りが数本通っていると言うんだから驚きだ。
ポツポツと立っている魔導灯がやはりここが大都市なのだと訴えてくる。そう言えばこの魔導灯に夕方になると魔力をこめてつけて回る。いわゆる点灯夫の様な仕事も有るんだったか?エルフで魔力が人より多いレルカにはピッタリな仕事だと思うが。
安全そうな仕事を考えながらギルドに向かう道中で、レルカから話しかけられた。
「そう言えばクレナイさん、道幅がだんだん広くなってませんか?」
「……ん?ああ確かにな」
確かに道幅がだんだんと広くなっているようだ。昨日の観光を思い出して納得する、どうやら異世界なりに考えられた街づくりをしているらしい。
「やはり壁があると言っても魔物がいるからな、魔法とかを使いやすいように広く取っているんだろう。逆に街の内側は人を迎撃しやすいように狭く作っていただろう?」
「そう言えば広場の先、貴族たちの居るところは結構狭そうでしたね」
「ああなってると軍隊的な行動はとり辛いからな」
魔物相手には集団戦を当て、人相手には出来るだけ相手が行動し辛くする。
言ってる事はほぼ憶測だが。まあ、当たらずも遠からずと言ったところだろうか。
感心しているレルカを横目にヤミが続ける。
「あなた、もしかしたら防衛建築で一席ぶてるんじゃないですか?」
「そうか?その場所に沿った防衛論が有るだろうから、横からいう物じゃないだろうと思うが」
「……もしくは詐欺の話で」
「……実は喧嘩売ってるな?」
彼女は相変わらずあの重たいライフルを背負っている。
街の中の仕事を探すと言っていたと言うのに、まあ難儀な奴だ。きっと武器を持ってないと落ち着けない性質なんだろう。
「あなたも武器がないと落ち着かないたちでは?」
「待て待て、そんなことは……」
そんな事有るのか?そう思って思い出してみる。しかしいつの場面を思い出しても、すぐ手元に持って来れる位置に武器を持っていた気がするな。
いや、森で暮らしてた時は武器を持ってなかったぞ……ってそれは武器が無かった時の話じゃないか。
「……まあ良いか、取りあえずそれは置いておこう」
「「逃げましたか(ね?)」」
「お前たちの仲がよさそうで俺はうれしいよ……」
レルカは相変わらずだれとでも仲良くなれる性質だ。その分だけ悪い奴につかまらないかは心配になるのだが。
その当たりは、ヤミさんに任せても大丈夫かね?彼女はそういう交渉事に関しては十分やり手だろう。
「しかしヤミさん、お前はその服しか持って無いのか?」
「そういえば見たことない服ですね、なんて言うんですか?」
「『メイド服』ですよ。それで、何か問題がありますか?」
彼女が来ているのは、ロングの黒いエプロンドレスに白いカチューシャ、まあ所轄メイド服と言われる服装だ。着なれた様子で靡かせているから普段から着ているんだと思うが。
と言うか、やっぱり名前はメイド服なのな……ホント近しい文明なんだろうが。
「私はこれしか持っていませんので」
「……実はお前の世界では一般的な服だったりするのか?」
「いいえ?私の趣味ですが」
「趣味なのかよ!」
ヤミは乙女の戦闘服とか言ってる。確かに膝の動きを悟らせないような袴のような働きはするのだろうが。レルカにそんな常識を吹き込まないでほしい。
「……レルカ、あまり真に受けるなよ?」
そうこう話している内にその場所に着いた。大通りを外壁の方に向かって歩いた場所にあるラガーポートのギルド本部だ。
周り数件分の床面積を持って作られた強固なレンガ建ての建物で、朝早い今でさえ結構な人が出入りしているのが見える。
中に入ると依頼を張ってある掲示板の周りに人が集まっていた。恐らく依頼の取り合いでもやっているのだろう
その騒ぎを横目にヤミとレルカを連れて受付に向かおうとすると、体験を背負った大男に立ちふさがれた。
知ってる顔ではないが……なんだ?
「おう、兄ちゃん入る店間違えたんじゃねえのか?ここはギルドだぜ?」
「……」
「なんか言ったらどうだ?」
よく見ると視界の端で何人か仲間らしき奴らが取り囲もうとしている?何が用なのかわからんが無難に回答しておこうか。
「いや合ってるよ、案内ありがとうな」
「兄ちゃんみたいな、女連れで来るようなところじゃねえって言ってるんだよ」
「よー嬢ちゃん、こんなやわっちい奴じゃなくて俺らとこねえか?」
目的はナンパかよ……なんだろうな、この脱力感は。おいヤミ、後ろで小声で笑うなよ。
取りあえず何と返すかね……?
「ナンパなんて他所でやってくれ、俺は本登録しに来たんだ」
「!ほぅ……おめえみたいなやわっちいのが?」
後ろでナンパしていた連中が下がっていく、同時にギルド内の視線がこちらに集まった。
なんだ?本登録と聞いた瞬間にギルド内の空気が変わった?
男がファイティングポーズをとる、どうやら素手同士でやろうと言う事らしい。
「なら前試験だ、試してやるよっ!」
合わせるように斜めに構えると、男が殴り掛かってくる。顔に向かって一直線に突き出された拳。それに合わせて体全体を滑らせる。
「どうした、そんな拳じゃ蝿が止まるぞ?」
「なろ……」
鼻先に突き出された拳、その拳に息を吹きかけながら挑発的に言ってみる。
男は引いて釈然としない顔で自分の拳を見る。その理由を周りはいまいち理解していないみたいだが、まあその方が良い。
「ヤミさん何をしたんです?ただ後ろに避けただけですよね?」
「上半身を動かさずに真っすぐ後ろに滑ったんですよ、あの男からしたら間合いが狂った様に感じるでしょうね」
ってヤミ解説するなよ! こういう技術は、一種の手品みたいなもので。タネがわかるとそんなに脅威じゃなさそうに見えるんだから。
「なんだそう言う事かよ、よくわかんねえ技使いやがって」
「誉め言葉として受け取っておくさ」
そう返すと男は今度はもっと深く打ち込んでくる。 その拳を今度は僅かに手甲に掠らせつつ避けた。
ほら力量差がわからない馬鹿が真に受けたじゃないか。
先ほどの応酬で間合いは分かっている。例えば剣をただ振り回しているだけなら、剣と一歩の外に絶対に届かないように。間合いが正確に判っている攻撃は脅威ではない。
掠るように躱しつつギルドを見れば、その事がわかっているのは3割ほどか。もちろんヤミは分かっている側の人間だし、レルカは恐らく分かっていない。
「クレナイさん!」
「女に心配させて。避けるばっかりじゃなくて、ちっとは良いかっこ見せてみろよ」
こいつも判ってない側だな。そう判断すると、殴りかかってきた腕を捌いた。
「なら遠慮なく」
捌くと同時に足を引っかける。男は自分の勢いのまま後ろにすっ飛んで仰向けになる。
「……だから大丈夫だって言ったんですよ」
「何をされ……うわっ」
混乱した顔になりつつも立ち上がろうとする男の手を取って再び転がす。あとは力を入れようとした場所を見極めれば勝手に転がってく寸法だ。
「……まだだ!」
「まだやるのか?」
仰向けになった顔のすぐ横に足を振り下ろす。周りの仲間に手を出させない事は評価するが、これはいつ終わんだ?
「そこまで!」
そんな事を思っていると、男の声がギルドの奥から聞こえてきた。
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