Heroes who is not returned. 12
予約投稿の時間を少し変更してみるテスト。
いつも0時に投稿してるけれど、ストックとかは無いです。
<<アイリスです、地上から重力波が出ていますが大丈夫ですか?>>
<<今のところ見つかっていませんが、おそらく私の直上に居ます>>
アイリスとの通信が復旧する。私は木々の中に隠れながら湖に向かっていた。
おそらくあの輸送船、D-エスペランサの向かう先はそこでしょう。周囲のマップを確認してもそのあたりくらいしか開けた場所はない。
湖に近づけば近づくほど僅かずつだが重力が軽くなる。フィフスドライブの重力変動が周囲にまで漏れているようだ。
――周囲にお構いなしですか!?
確かに極限まで荷物を落とした輸送船でフィフスドライブを最大限で稼働させれば。理論上では惑星の重力からの干渉を打ち勝って移動もできる。
しかし周囲に漏れ出た重力波が惑星の重力と干渉してその場所に重力異常が生まれてしまう。
たとえ極小でも惑星の重力のバランスを崩す重大な違法行為だ。
――これ以上重力異常をまき散らす前に落とす……いや無理ですかね。
レーザーはその通り光だからクロークデバイス作動中の輸送艦にはすり抜けてしまって効果がないでしょう。
どうしても、手元の武器では火力不足だ。どうするか……。
<<視界、共有してもらっても良いですか?>>
<<どうぞ>>
視界の端、邪魔にならないような位置に青い花のアイコンが現れる、アイリスが接続した証だ。
洞窟のある方とは反対側の湖畔に着く。木の陰に隠れながらバイボットを立てて、すっかり真っ暗の対岸を暗視モードにしたスコープで覘く。
――恐らく輸送機の目標は……居た!
洞窟の近くに居る、西洋甲冑にも似た生体装甲を発見する。どうやら男が入って行った洞窟の周囲を調べているようだ。
背を向けてる生体装甲に気が付かれないようにスコープの中心に合わせる。
<<レーザーの最大出力で致命傷を与えられますかね?>>
<<理論上可能……の筈ですが、フィールドを張られる前にコアを直接狙う必要がありますね。その型は胸元です>>
相手は近接型だ、右手についている筈の重力偏光フィールドを起動させられたらどうしようもなくなる。
当たる直前に強力な重力場を出して物理攻撃も光学光学もそらすフィールドだ、近接型はこれを張りつつ接近していく設計になっている……。
洞窟の入り口に居た装甲が湖の方に動く。湖畔まで来てルノを見て……いやその前に居る輸送艦を見ている。
――そのまま……そのまま……
安全装置を解除して暗視スコープ越しに標準を合わせる。
狙いは胸のど真ん中コアの位置。スコープ精度が不安だがフィールドを張る前に仕留め――
<<待ってください、重力波に異常です>>
<<偏光フィールドですか?>>
気が付かれたか?位置を変えるために腰を上げかける。その行動はアイリスの通信で止めることになった。
<<……どうやら違うようです、恐らく暗号文ですね>>
<<重力波を使って操作しているって事ですか?>>
<<おそらくは>>
こちらは見つかっていないみたいですね、ひとまず安心して再びスコープを覗く。
残念ながら、その間に洞窟の方を向いてしまった。
<<何をしているんですかね?>>
<<さあ?でも次こちらを向いた時が最後です>>
<<そうですね……洞窟から誰か出てきたようですよ?>>
洞窟から一人で黒髪の男が出てくるのをスコープの端に収める。
無事のようですが……大丈夫な感じではないですね?洞窟に入って行ったときより、どこかやつれているようですが……。
しかし、生体装甲は彼を待っていた?いったいどんなつながりが?
そう思っていると何かを話し始めた、現地の仲間?といった様子ではないですが。
しかしどうにも、こちらを向かなそうな雰囲気だ
<<すみません男の方を拡大してもらますか?>>
<<……?どうかしました>>
倍率を上げて男の方にスコープの中心を合わせる。
男の顔は洞窟を出た時よりも悪くなっている。まるでこの世の終わりの様な顔だ……。
だがそれだけだ、何かこちらに危害を与えられる物を持っているわけではない。
<<彼がどうしましたか?>>
――いったい何を話しているかは気になりますけど……。
彼は何かを叫んでいるが、流石にまだ読唇術ができるまではこの世界の言葉を使いこなせてはいない。
そう思っていると通信先のアイリスから漏れ出たようなおかしな声が聞こえた。
<<そんな、まさか……>>
<<何を言っているんですか?>>
<<そんなことはありえ……いや、ごくわずかな可能性が?再計算を……>>
<<……アイリス?>>
<<…………>>
アイリスからの反応が無くなった、視界の端にロゴは出ているから映像は見ているんでしょうが。
――まさか彼の顔に見覚えがあったのでしょうか?
冷静に考えればアイリスが知っている筈は無い。ここは新しく発見されたコクーンで私たちとあの輸送機以外誰ひとり来たことが無い星の筈だ。
輸送機に居た人物も全員調べ上げているはずですから、その可能性も無い。そもそも彼は現地人にしか見えないですし。
そう思っているうちに対岸に動きが有った。
何か核心的な事を言われたのか、男はどこか気の抜けた半笑いのような顔をして、生体装甲のすぐ傍を通り抜けて湖を覗きこむ。
それに伴って生体装甲がこちらを向いた。
――チャンスですね。
思ってもみないチャンスに照準を装甲のコアに合わせる。
装甲のそのまま彼に左手を差し出し、男はそのままその手を取ろうとする。
男の手が触れる前に私は引き金を引いていた。
銃口から音もなく光の筋が伸び、コアのある胸部に直撃する。しかし最大出力のレーザーが直撃したというのに生体装甲は傷一つついていない。
――大気の減衰率?いや、気が付かれていた!?
右腕の偏光フィールドを使いコアを守る動きをした生体装甲。
もう致命傷は与えられない、そう判断して節約のために出力をセーフティまで落とす。
完全に切らなかったのはいつでも撃てるという脅しの為だ。
視線が光の筋をたどるように動きスコープ越しにかち合う。
――さてどうなります、正直来られると太刀打ちしようが無いんですが……
視線が合ったのは一瞬だった、生体装甲は一目だけ男の方を確認すると崖を超え森の中に消え去った。
完全に位置が分からなくなったのを見て、レーザーを切って木の陰に入った。
<<……終わりましたよ?アイリス>>
<<…………>>
アイリスからの返事は相変わらずない。
漏れていた重力変動ももう感じない、完全にどこかに行ったようだ。
幹に寄りかかり上を向く、もしかしたら船が見えるかと思ったが大きなルノしか見えなかった。
「……一体何が……起こってるんですかね?」
その質問の答えも、やはり返ってこなかった。
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